第8話

夜に部活の連絡が入り、日葵に出かける日をLINEするとすぐに返事がポロンときてOKという犬のスタンプが来た。すると日葵は

「どこに出かけるの?」

と連絡が入り、僕は

「秘密。楽しみにしてて。服装はなんでもいいからね。当日10時に僕が車で迎えに行くから家の前で待ってて。」

と言った。僕は日葵を隣町の海が見え、花が綺麗に咲くところに連れて行くつもりだ。

僕は日葵と出かけることをモチベにし、次の日部活で無双したのはいうまでない。





日葵side

「ひーちゃん。おはよう。今日は翔平くんとお出かけだよ?」

とかーくんが知らない人の名前を出す。私は寝ぼけながら

「翔平くんってだれ……?」

と返答する。するとかーくんがあるノートを持ってきてそこには私が記憶喪失なのと翔平くんという人のことが書いてあった。

「翔平くんリスト。翔平くんは優しくて、かっこいい。よく遊びに誘ってくれる人。笑顔が可愛くて、私の似顔絵をよく描いてくれる人。」

と書いていて、そこには翔平くんという人の似顔絵があった。会ってみたいなぁ……と

「かーくん。行ってみてもいい?」

と私はかーくんにいうと

「もちろん。行ってきな。」

とかーくんは微笑んでそう言った。

今日は秋らしく私はミントグリーンの薄めのセーターに白のロングスカートを履き、ノートに書いてある通り家の前で翔平くんという人を待った。

すると10分後男の人が車から顔を出し、私の名前を呼んだ。

「日葵!おはよう!」

「お、おはよう!」

それはノートに描いてある似顔絵とそっくりな翔平くんという人だった。

「乗って!」

と翔平くんは促す。私は車に乗った。すると寒くないように足元に毛布をかけてくれて

「しゅっぱーつ!」

と元気よく翔平くんは言った。

運転中に彼を見るとすごく優しい目をしていて、少し花のいい匂いがした。そのときノートに書いてあったことを思い出した。翔平くんは花屋の息子で私はそこでアルバイトで働いていると……。翔平くんは私の目線に気づいたのか、鼻歌をやめて

「どうしたん?なにかあった?」

と前を見ながら聞いてきて私は戸惑って

「いや!あのー!翔平くんってなんの花が好きなの!?」

ととっさに花の質問をした。すると翔平くんは少し考えてから

「……今はリナリアかな……」

と言った。

「リナリア?私それ知らないや!どんな花なの?」

と興味津々に言った。すると翔平くんが前を見て

「白くて、春に咲くんやで。花言葉は……なんやたっけなぁ。」

と翔平くんは言った。私がスマホで調べようとすると翔平くんは私の手を上から重ねて

「思い出したら教えるけん……。」

と少し苦しそうに言った。なんでそんな顔をするの……?聞こうとしたら

「よし!着いたけん!」

と翔平くんが言って私が外を見るとそこには

「うわー!海が綺麗!!このカフェ外装が可愛い!」

海が綺麗に見えるカフェに着いた。看板には

「Palette」

と書いてあった。私は車を降りて、カランコロンとベルの鳴るカフェの中に入ると

「いらっしゃいませ〜って冨樫じゃん!」

と可愛らしい女の子が接客をしてくれた。この子は翔平くんのことを知っているらしくて私は翔平くんのほうを振り返ると

「初めて会ったよね。紹介するね。僕達と同じ大学に通ってる柊桃菜ひいらぎ ももなだよ。柊の両親はこの店の経営者でよく桃菜も手伝って働いるんだよ。」

と言っていた。柊さんはお店のエプロンとポニーテールに少しでているゆるふわな触角があってまさに看板娘っていう感じだった。柊さんは私達を席まで案内してくれてそこは

「すごい!海が見える!」

2階の窓際の席だった。2階は木製で灯りがオレンジ色で机にはハイビスカスが添えられていた。

私と翔平くんは向かい合わせで座りメニュー表を見ていた。私はベリーパンケーキを頼もうとしていて、柊さんに注文をどうするか聞かれたとき

「「ベリーパンケーキ1つ!」」

なんと翔平くんと注文するものが一緒だった。2人で

「あっ。」

と言い笑いあった。

2人で食べたパンケーキはとても甘くて幸せな味がして美味しかった。













水族館やブレスレット作りの体験、商店街での食べ歩きをして、私達は海に来た。

ちょうど夕日が見える時間で彼の笑顔はとても眩しかった。明日になったら彼のことを忘れてしまう自分が嫌だ。私は彼の服をギュッと掴んだ。すると彼は

「大丈夫だよ。明日になっても僕がまた日葵のこと楽しませてあげる。」

と言い彼は無邪気に笑った。私は今日作ったブレスレットを夕日に当てるように手を上げて見た。

彼は私の手を取りギュッと抱きしめてくれた。私は彼の温かさを知り、泣いてしまった。明日が来るのが怖い。だけど彼がいるなら安心だ。

「日葵。大丈夫。どんなときだって僕が傍にいる。日葵が悲しくなったら僕が抱きしめる。日葵が嬉しい時は僕も一緒に喜ぶ。だから今を全力に楽しんで生きよ?」

と翔平くんは私の手をギュッと握った。






私は帰ってから撮った写真をアルバムに貼った。それと今までの写真がある。私を描いてる時の写真、笑った写真、変顔の写真まで……


きっと大丈夫。私は記憶を失っても本能的に翔平くんを好きになるだろう。明日が来るのが楽しみだ……。

私は安心した気持ちで眠った。




















幸せは気づかぬうちに壊れていく。













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