第6話

「え?夏祭り?」

「うん。そう夏祭り。今夜やるから行ってこいって。」

日葵がウチにバイトしに来た今日、夏祭りがあり、ウチの親も店を出すので花屋は夕方から休みになる。だからその分日葵ちゃんと楽しんでこい!と父親が言ってくれた。僕は思わずガッツポーズして日葵を呑気に誘った。

すると隣から大倉さんが

「日葵ちゃん俺も連れてって〜」

と大倉さんが日葵ちゃんにバラを差し出して言った。すると日葵は

「嫌です。」

とキッパリ断った。日葵なら

「いいですよ〜」

って言うと思ってた。だから僕は驚いた。

「ほな、日葵。17時に神社の前集合な。」

「うん!またね!」

と僕は部屋に戻り、なんともいえない感情を枕にぶつけ、ジタバタした。

ヤバい……嬉しすぎる!

と興奮してたら日が暮れて僕は急いで約束した神社の前に着いた。












すでに人が多くて、近くにある海の音も心地よい。下駄の音も行き交う。僕はしばらく待っていると

「だーれだ!」

「この声!紫苑しおんだな!」

「あったりー!誰か待ってるの?」

僕はいきなり目を隠されて声の主山和 紫苑やまなぎ しおんと当てると紫苑は当てられて笑った。

「僕の好きな人。」

「……へぇ?」

と紫苑は少し間が空いたがニヤつきが止まらず変なことを言い出した。

「その子絶対可愛いだろうなぁ。よし私が横からかっさらってやる!」

「やめろよ!」

と2人でじゃれあっていると

「翔平くん。」

と浴衣に薄紫色の花びらが散りばめられ、髪の毛を上げて簪を差している日葵がいた。その横には榊もいた。

「悪い。日葵のこともあって。一応保護者

……だからな。」

と榊はごめんと顔に書いてあった。しかし邪魔をされるわけでもないから僕は

「ええよ。むしろいっぱいいるほうが楽しいで!」

と言った。4人で神社の中に入ると街頭もいらないほど蛍がたくさんいて明るかった。すごく綺麗で横を見ると蛍を見てうっとりしている日葵がいた。

「俺の家の日記に蛍がたくさん見れる神社があるって書いてあったけどここで間違いない……!」

と榊は興奮気味に言った。日葵が教えてくれたのだが、榊の家はとても古くから存在し、かなり有名の歴史人物もたくさんいて、榊が特に好きな先祖の茶々という人がこの場所で見た蛍は最高だというおすすめが日記に残されていたらしい。

まぁそんなこと置いといて僕達は屋台が出ているところまで着いた。すると日葵は目を輝かし、

「翔平くん!いこいこ!」

と日葵は僕の袖を掴み人混みをかき分けていく。僕は日葵の手を掴み握った。

「これなら離れへんな。」

と僕は繋いだ手を見せ、日葵は顔を赤くした。

ほんとは好きだって伝えたい……だけど日葵がもっと僕のことを知ってもらってから……。

すると花火の音がし、僕と日葵は空を見上げた。

「すごく綺麗……」

「せやな……日葵も綺麗やで。」

「……!」

僕は日葵を近くのベンチに座らせ僕もその隣に座った。そのあとは2人とも何も言わずただ花火を見ていた。日葵が僕の肩にこてんと頭を預けて花火を見た。






こんな幸せなことが起きるのはきっと花火のせいだ。












翔side

「あーもう。ひーちゃんどこいった……。」

「大丈夫だよ。だって翔平いるから……」

「だな……。」

俺はひーちゃんを見失なった。横にはたしか、

「山和 紫苑。私の名前。」

と山和がいた。俺は近くにあったりんごあめの屋台に寄り2つ買うと1つを山和に渡した。

「ほら。」

「ありがとう。榊っていいとこあるんだね。」

とニヤリとして山和は笑った。それがなぜか懐かしい感じがした。俺が記憶喪失っていうなわけでもないのに……だけどなんだか懐かしいな……。パリッと1口りんごあめを噛じるとパリッとしたあめとりんごのシャキシャキが甘く、さっぱりしていて美味しい。

「ねえ、榊。」

「なんだ山和。」

山和はなんだか様子がおかしい。俺は山和のほうを見ると

「私……翔平のこと好きだったけど日葵ちゃんがいるから……私諦める……一目みて2人ともすっごくお似合いだったし……なによりお互いをすごく想いあってた……」

と山和が悲しそうに言った。山和は初めて会った俺でもわかるくらい冨樫のこと好きなのわかったしな……

そういう俺だって日葵のことが好きだ。だけど混乱させると思うし、今の生活ができなくなって日葵が大学に通えなくなる可能性だってある。

冨樫がいなくなればいいのに……っていう悪い考えをしてしまった。

山和は

「ごめん!ごめん!やっぱこの話なしで!多分2人はどこかで一緒に花火を見てるよ。」

「そうだな…… 」








空に打ち上がった花火が儚く見えたのはなぜだろう……。








花火より綺麗に見えたのは花火に照らされた山和の涙だった。

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