第4話
僕は驚いて、しばらくなにも言えなかった。
日葵は
「秘密だよ。」
と言い、持ち場に戻った。
事故で記憶を保持することができない……。もしかして毎回声をかけたときあんなに驚いているのって僕を知らない人だって思っているから……?だけどなんで名前は分かるん……?僕は頭が?でいっぱいだった。
日葵が休憩時間に入り、僕は日葵に
「ちょっと聞きたいことあるけん。ええ?」
と言った。日葵は頷き、僕は日葵を僕の部屋に連れていった。
僕の部屋は正直少し散らかっている。本棚の列にも少し乱れもあるし、床にはバドミントンの雑誌がチラホラあった。壁にはあまりな貼らないが、所々に絵のコンクールで賞をとったものとバドミントンの個人の賞がいくつかある。
日葵は
「翔平くん、これなに?」
と日葵は僕の持っていたスケッチブックの紙の切れ端を引っ張った。すると、僕がさっき描いた日葵の姿のデッサンが床に散らばった。日葵はそれを見て
「私ってこんな感じなんだ……。」
とつぶやいた。もしかして引かれた……?それとも残念だった……?
僕はなんとか弁解しようとすると日葵は
「すごい!!上手!翔平くん、絵描くのほんとに上手いんだね!」
と花が咲いたように喜び笑った。
すると日葵は僕のスケッチブックの紙を1枚ベリっと剥がし鉛筆を持ってなにかを描き始めた。すると10分後
「じゃーん!翔平くんのできあがり!」
そこには僕の絵があった。ものすごく上手で、僕も日葵と同じ感想を持った。
「僕ってこんな感じなんや……」
そしてお互い絵を描きはじめ僕と日葵は言葉のキャッチボールを交わした。
「日葵は何人家族なの?」
「3人!」
「日葵はどんなものが好き?」
「紅茶、上生菓子、あと可愛い柴犬!」
「日葵はどんな花が好きなの?」
「私はクチナシの花!いい匂いで可愛いから!」
など色々と話した。僕は勇気を持って
「日葵は記憶喪失でどこまで記憶を保てるん?」
と言うと日葵は少し考え
「多分1日が限界だと思う。その日にあったことは次の日覚えてることができない。」
と言った。
「でもなんで僕のことはわかるの?」
と聞いたら
「スマホとノートにメモがあるの。」
と言い日葵は絵を描くのをやめ僕を見つめた。
「毎日記載するように、毎日見るようにって書いてあるの。私事故に会ったの大学生になりたてのときなんだって。それで次の日から記憶が保てなくて……。かーくんがいなかったら私、大学やめて、地元に戻ってた。今かーくんと同居してるの。私記憶喪失なら毎日生きてる意味あるのかな……って思うんだよね……ごめんね!こんな暗い話して!」
と言った。僕は日葵のことをもっと知りたいし、もっと寄り添ってあげたい。だから……
「今日の日葵も明日の日葵も僕が彩りを与えてあげる。」
そう日葵と約束した。
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