第30話

★ツカサ

「久しぶりに行くよ『ブースト』」

この呪文を唱えることで僕は加速空間に入ることができる。この空間では何百分の一の時間となる。このおかげで敵からの僕の動きは高速で動いているように感じるというのだ。これは便利だが代償が何もないわけではない。これを発動するのに代償はないが効果が代償と言える。この空間は時間を圧縮した空間だ。そこから来るのは寿命が近付くということだ。この空間にいる時間と外の時間の進み方は同じだ。ゆえにこの空間にいる僕は一人だけ時間を早く消費していることになる。


「なぜだ!俺の速さを超える者はいないはずだろ、なんでおまえは」

「相手が悪かったんだよ。諦めてよ」

この状況下では僕が圧倒的に有利だ。スピードという力では僕に対抗するのは不可能に近い。早く諦めてくれないかなぁっと考えたときだった。


「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!『顕現解放第二段階解放』」

僕はこの時に嫌な感覚にとらわれた。あれはやばいどうするか?答えは簡単だ。

「『ブースト』」

僕は急ぎ会長の鎧に右手を触れた。その瞬間に嫌な感覚はなくなった。あれの発動には少しの時間が必要だったのだろう。そのおかげでブーストの発動が間に合い右手で会長の鎧を触れることができた。それによって僕は鎧を形成していた魔力を全て吸収することができた。幾ら強力な強化呪文を唱えても強化するものがなかったら意味をなさないからな。


「な、なに!」

「まだやりますか?」

「それは!なんでお前の手に」

会長は僕の左手に握られている雷切に驚いているようだ。僕の力により会長の鎧の魔力を吸収しその魔力を再形成すると鎧の元になった雷切が現れるといった原理で僕の手元には雷切がある。


「会長、まだやりますか?」

会長は僕が何をしたのか理解したのだろう。このままでは何をしても勝てないということに。

「・・・俺の・・・負けだ」

会長は今まででこんな屈辱を味わったことがないというような顔で負けを宣言した。僕と戦う際には圧倒的に自分が有利と思っていたが結果は大敗北したのだ。無理はないだろう。


「会長、大丈夫ですよ。相手が僕でなければ勝ててましたよ」

僕は思わず煽ってしまった。でも許されるよね。だって、会長の顔がとっても悔しそうな顔で煽りがいのある顔をしていたのだもん。


こうして、会長と副会長は僕の手で倒されたの

だ。これはまだ、これから始まる物語の入り口だとはこのときは誰も気付いていなかった。

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