第24話

★ツカサ

「来ると思っていたよ、二人とも」

会長は僕たちがやって来ることを予感していたのだろう。


「わかってるんなら話は早い。そっちも準備できてるんだろ」

「ああ、そうだ。なら、会場に向かおうか」

そう言った会長は立ち上がると部屋にいる人間に魔法を使い転移した。

「うん?ここは」

「…闘技場か?」

僕たちは気が付かない間に転移の魔法を使用されていた。フレイは今いる場所は闘技場だとすぐにわかった。

「準備が出来ているってこういうこと」

僕も周りを見るとこの学園の生徒たちが集まっていた。僕たちはこのことを何も知らなかった。確かに僕たちはあまり人とかかわらないようにして生活していたので情報を制限するのは簡単だっただろう。

「ふっ、どうするフレイ。このままやる?」

「当たり前だろう。どんな時でもやる準備は出来ているんだ」

僕たちは覚悟を決めると

「そっちもやる気は十分みたいだね。こっちは副会長からやるが君たちはどうする?」

その言葉でどちらからやるか相談していた僕たちは僕が先に試合をすること決まった。僕たちはあらかじめに僕が副会長とフレイが会長とやることを決めていた。そのため、副会長が出るということは自然的に僕が行くことになる。

「それじゃあ、僕から行きますね」

体を少し動かしながらそう言った。急に体を動かすことは出来ないからこうやって準備体操をやるのを戦いの前の日課?みたいにしている。僕が前に出ると会長とフレイは舞台の上から出ていった。いつ闘いが始まってもおかしくない雰囲気が漂ってきていた。

「私からですね。よろしくねツカサ君」

副会長は握手を求めるように僕の前に出てきた。

「よろしくお願いします」

そう言いながら僕は副会長と握手をした。

「初めから全力でお願いします。そうじゃないと面白くないですから」

僕は握手しながら副会長にしか聞こえないように小さな声で話しかけた。

「それは面白い冗談ですね。でも、その挑発に乗って差し上げましょう」

そう言うと副会長は舞台の端にまで移動し魔法を展開した。あれは、フレイを倒した時の鎧の魔法だろう。言葉通りに全力でやってくれるみたいだ。それが少しうれしく笑みがこぼれてきた。だが、寂しくもある。この戦いは一瞬でけりがついてしまうからだ。僕は自信過剰な人間ではない。ただ客観的に自分の力と相手の力を比べた時僕の方が圧倒的に強いということを知っているだけだ。


 僕は副会長が鎧を纏い、構えたのを確認すると歩いて距離を詰めた。僕の戦い方は近接戦だ。相手も防御で固める戦い方ならどうやって近付いても同じことだ。だから僕は歩いて近付いた。だがそれが副会長には舐めていると思ったのだろう少し怒気をはらんでいる様子だ。副会長の構えがわずかに変わったことを瞬時に見て判断できた。この構えはフレイを倒した時のカウンターの構えだろう。それならそれを利用させてもらおうと考えた。僕は目の前にまで近づくと左手で殴ろうとした。その時にカウンターを合わせるように副会長は動き出したので僕の左手を瞬時に下げ右手で副会長のカウンターをガードした。この瞬間に僕は勝ちを確信した。なぜなら、僕の右手には拡散の魔力を付与してあるからだ。それに触れた魔力に由来するものは魔力に変換され空気中に魔力が拡散される。それが僕の『拡散』の力だ。この『拡散』によって触れた副会長の左手の鎧は魔力に変換され消えていた。

「そんなっ!」

副会長は驚愕の顔になっていた。それはそうだろう。自分の意思とは反して勝手に魔法が部分的に解除されたのだ。僕は攻撃に移ることにした。僕は下げた左手に『収束』の魔力を付与した。それにより『拡散』で霧散した魔力を集めることで副会長の鎧を再現した。


 魔力というのは直前に使用した魔法を記憶する性質を持っている。それを応用して霧散した魔力で型を作ることで自動的に副会長の魔法を再現するという方法を取った。これのいいところは僕の魔力は『収束』の魔力だけで他の魔法を使用することが出来るということだ。


 副会長は僕の左手に自分と同じものをあるのを確認すると

「そんな!これを再現したのですか」

一度の戦闘で驚愕することが二度もあったので呆然とするのは何もおかしなことではない。

「ちゃんと防御してくださいよ。この攻撃は甘くないので」

僕はやさしさで攻撃することを宣言した。さすがにこの攻撃で人を殺すというのはかわいそうだからだ。僕の言葉に反応すると防御を急いで固めた。副会長の左手も修復下みたいで万全の姿勢での防御態勢だ。それでもお構いなしに僕は左手で副会長を殴りつけた。その攻撃は『収束』の力で周囲に存在する魔力を際限なく一点に集め進んでいく。

「くそっ。止まらない。それどころか威力が増している」

副会長の鎧に盾や鎧が砕け魔力に変換されると同時に魔力が吸収されさらに強力な一撃となっている。これは僕が繰り出すまさしく必殺の一撃だ。僕はこのまま攻撃すると副会長の腹を貫通してしまう威力になると考えたので当たる直前に『拡散』の魔力で自身の左手の魔力を霧散させ威力を減らした。このおかげで

「グッ…」

副会長は気絶で済んだ。

この戦いを見ていた会長は拍手をしながら僕に近づいてきた。

「さすがだね。まさか一撃で決着をつけるとは想像していなかったよ」

こうして、僕は無事に副会長との戦いに勝利した。


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