第20話

★ツカサ

 僕はフレイから魔王が復活していることを聞いてから研究により一層のめりこんでいた。僕は魔力について研究を行っていたが、記憶を取り戻すのと同時に得た知識を元にその知識が正しいか検証を行っていた。その結果、すべての知識が正しく今の魔法学において何千年も先に行くほどの知識が存在していた。これは古代の知識だがそれだけの知識があるということは現代の魔法はどこかで魔法の知識を紛失していることにほかなかった。だが、今はそんなことを気にしている必要はない。いまする米なのは強くなることだ。この知識を元に僕は自分の力の正体を解明して更なる力を手にし、魔王を倒して見せる。そう意気込み僕は今も研究に取り組んでいる。


それから2か月の月日がたった。

「ツカサ、魔法の授業はどうだ?」

「もちろん、全然わからないよ」

僕は決して馬鹿ではないと自負している。だが、魔法の授業で行われるのは呪文の解説や魔法陣の構造についてなどのことを教えてもらえる。今は魔法の基礎固めということで呪文の授業が行われている。これがまたよくわからないのだ。僕は古代魔法の知識が存在するため効率の悪い現代の魔法陣を覚えるのが苦手なのだ。どうして、この無駄なところがあるのかを質問した時には、

「これは魔法陣の心臓部だ。これがないと魔法が発動しないだろうが」

そんなことを言われた覚えがある。だが、古代魔法にはそのような部分は存在しないため現代の魔法はそういうものだと理解して頑張って覚えようとしている。将来必要がないとわかっていても戦いではこの魔法を使うのが現代人だから覚えておいて損はないと考えて頑張っている。


 


「ツカサ、そういえば再来週の魔法の授業の時に教会から祝福を与えられるらしいぞ」


「えっ!もうそんな季節か。時間がすぎるのは早いものだな」

教会からの祝福か。これは僕たち学校の1年生が必ず受けることが義務付けられているものだ。この祝福を受けることで新しい魔法の知識やその人にしか使えない武器を授けられることがあるという。それゆえにこの日に聖剣や神剣の類を手に入れると勇者になれると言われている。ここだけの話だが現在は勇者がこの世にはいないとされている。それだけに魔王が蘇ったと知られる貴族社会では勇者の再来を待たれている。だけど、僕は勇者になりたいかと問われれば否である。魔王の討伐の他にも人類の希望として振る舞わなければならないのが面倒くさい。それに勇者として相応しいのはフレイの方だと考えている。


「フレイはやっぱり聖剣が欲しいの?」

「それはそうだろう。聖剣の聖なる力は俺の魔力と相性がいいからな」

フレイの魔力は少し特殊な性質をしている。再生の力を宿しているのだ。これは回復魔法を常時使うことができるのと同義である。聖剣にも同じような力を宿していると言われている。その力を重複させてより強力なものにしたいと考えているのがフレイだ。なんでも再生の力は人の体には許容量というものがあるらしくそれを超えると体が崩壊するという。今でもフレイはこれを行うことができるがフレイの魔力をほぼすべて使うか許容量に満たせなくて魔力がガス欠になるかのどちらからしい。つまり、この方法で戦うことはできないということだ。だが、これに聖剣があれば魔力の消費を少なく強力な再生の力を使える。それを狙ってフレイは聖剣を欲しがっている。


「そういうお前はどうなんだよ、ツカサ」

「僕は別にいらないかな。体質的に魔法も使えないし聖剣とか手に入れても魔法が使えない僕じゃ宝の持ち腐れだよ。だから、僕は何もいらないかな」


祝福は必ず何かを得られるというものではない。得られないのが普通である。教会はこの祝福は神がその人を見守っている証だと言っている。つまり、神のお気に入りが祝福を得られるのだ。それでは平民に祝福を受けれるものがいるのにそのまま放置するのはどうなのかと言われればそれは少し違う。この祝福を受けるのは何も貴族だけではない。その日に平民も一緒に15歳のものが全員受ける決まりとなっている。この学校では完全実力主義を採用していることにより平民でも入る方法が存在している。それが祝福を得た者という条件だ。この方法で入学するのはごく僅かだ。それに入学するのは祝福を受けてからになるので貴族よりも遅く入学することになる。それゆえに勉強についていけないという平民は多くいたと言われている。

今ではその方法で平民が入学するのはほとんどいない。なぜなら冒険者育成所に通うほうが遥かに裕福な暮らしができると考えられているからだ。祝福を得られるのはそれだけ人生に有利なものを与えるということだ。だから、祝福は全員が欲しがるがごく一部では必要ないと考えると人たちがいる。

「僕は必要ないよ。これ以上手に入れたら破滅しそうだもの」

「ふっ。ツカサらしい考え方だな」


そんなことを話しながら生活をしていると祝福を受ける日となっていた。




 

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