第16話

★フレイ

「お前たちは何者だ?」

「我々は歴代のフェニックスの使い手だ」

「フェニックスの使い手?それは俺だろ!」

こいつらは不思議なことを言いやがる。フェニックスの使い手は一人しかいないはずだ。それがここには10人以上いやがる。

「我々は歴代の使い手と言っているだろう」

呆れたような声で返事が帰ってきた。歴代?つまり、昔の使い手ということか。それは話がおかしいことになる。フェニックスのような特殊な聖獣は、死ぬまでの契約になるはずだ。しかも、フェニックスの契約主となる存在は拒否権なく契約をさせられる。それを知っての発言か?


「あなたには理解できていないようだが我々はすでに死んでいます。それは理解できますか?」

「死んでいる?ならなんでお前たちと話せるんだ。死んでいたら話せないだろう」

「それには理由があります。あなたは今、生死の境目にいるから話せるのです」

生死の境目?何だそれ。俺は死ぬというのか。まだ、やり残したことがたくさんあるのに。

 あいつらの言葉には不思議な説得力があった。それこそ歴代のフェニックスの使い手という話だってそうだ。俺がこの世界にいるということがその証拠になるんじゃないのか。


「落ち込む必要はありません。あなたをここから現世に送り返すことは可能です」

「本当か!」

俺は戻れると言う言葉に反応した。帰れると言うなら今すぐに帰りたい。そう考えていたが次の言葉で少しこの世界にいることを決断することになった。


「戻ることは簡単です。ですが、我々と会ったのです。我々は今の貴方よりも遥かに強いです。ですから我々はここで貴方を鍛えます。」

「それで俺は強くなるのか?」

「ええ、確実に強くなります。ですが、ここでの出来事は思い出せません。あなたの時間と実力ではここでの出来事を記憶する力がないからです。ですが、その内新しい力を閃くという形で思い出すでしょう」


ここでの出来事は思い出せない。それだけを聞くとここにいる意味はないと思えるが俺の勘がここで鍛えろと言っている。

「わかった。ここは俺の勘に従ってやる。ここで鍛える」

「よろしい。ではまずここの説明をしましょう。この世界約3年滞在してもらいます」


 3年!俺はあまりの長さにびっくりとしてしまった。そんなにここにいると帰った時体が動かせなくなるんじゃないかと疑問に思った。


「3年と言っても現実の時間では一週間です。体のことは問題ありません」

「つまり、ここと現実の世界の流れる時間の速さは違うということか」

「そうです。その通り。ですからあなたは安心してここで修業をしてもらいます。頑張りましょうね」

頑張りましょうねといった女性は笑顔のはずなのにこれから起きる出来事が悲惨なことになるような予感がした。この予感はすぐに的中した。なぜなら次の発言で帰りたいと思ってしまったからだ。


「では、ここには3年と短い時間しかいられませんから寝ずに修行を頑張りましょうね。それで今の魔力量が最低でも5倍になるので死ぬ気でやりましょうね」

その言葉を聞いたであろう周りの歴代フェニックスの使い手は可哀想なやつが生まれるぞという顔で同情してきた。


「ちょっとまて、俺はそこまでは」

言い切る前にあの女性に首根っこを捕まれ俺は連れて行かれた。

「ちょっと、助けてくれえええ」

その光景に可哀想なやつだ。南無と言うようにせめてもの救いとなればと思いこの場に残ったものは祈った。どうか無事でありますようにと。

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