第8話

★ツカサ

 フレイと副会長は闘技場で向き合っている。これからフレイと副会長は戦うことになる。その勝敗は予想が出来ない。どちらが勝ってもおかしくはないだろう。でも、今回の戦いはおそらく副会長が勝ってしまうだろう。そんな予感がする。フレイよりも魔力量を所持しているだろうと予想ができる。そのことはフレイも理解しているからそれなりの作戦を立てて戦うだろう。でも、学園で2番目にまで上り詰めた相手がそう簡単に勝てるとは考えられない。フレイはどう戦うだろう。


★フレイ

 俺は今、副会長と向き合っている。そこで感じるのは副会長が並大抵の実力じゃないということだ。俺とツカサは実家に居たときは魔獣を狩ったり、親父と組手をして修業をしていた。それゆえに人と戦うことは少なかった。それでもわかるほどこの人からは強いという圧力を感じる。これなら俺の全力でやっても大丈夫だろう。


「二人とも準備はいいか」

審判をする先生から確認の言葉が出た。

「俺は何時でも大丈夫だ」

「私も大丈夫ですよ」

俺と副会長がそう返事をした。

「では、はじめ」


その合図で俺は先制攻撃をするために魔法を最速で放とうとした。だが、目の前には副会長の姿があるが気配がなかった。そこで俺はあれは幻影か何かだろうと予測ができた。なので俺は領域を使った。この領域というのは簡単に言うと魔力を広範囲に展開することで目に見えない相手をサーチすることや自分の射程距離いっぱいに展開することで近付いた相手を瞬時に攻撃するというような使い方をされるサーチ型の魔法だ。この魔法の利点は使い続ければ詠唱なしで使えることだ。


 今回相手がどんな戦い方をするか予想ができないため、闘技場ぎりぎりまで領域を展開し、相手がどこにいるかを探した。その結果やはりというか眼の前にいるのは幻影だとわかった。そして、本体に目掛けて俺は魔法を放った。

「そこだ。ファイアーボール」

「流石ですね。アクアボール」

副会長は俺の後ろにいた。そして、俺のファイアーボールはアクアボールに相殺された。その瞬間俺の領域は動きを感知した。幻影と思われている場所から魔法の発動を感知したからだ。攻撃魔法を使い相殺することは俺の魔法発動速度では少し足りないことに気がついたため急いで回避行動を取った。その結果、魔法を回避できたがあれがただの幻影ではないことに気が付かされた。


「これも避けますか。流石に予想外ですね。貴方がこれ程実力があるとは」

その言葉は明らかに俺を下に見る発言だが押されている状況を考えるに仕方がないだろう。これは様子見は止めたほうが良さそうだな。このまま相手に好きにさせていたらこちらは何もできずに負けてしまうだろう。俺はツカサの方をチラッと見ると俺と同じ考えなのか頷いていた。どうやら全力を出して構わないと言うことみたいだ。

「よそ見するとは余裕ですね」

「余裕じゃあないさ。だから、確認を取ったの

さ。全力を出してもいいのかってな」

その言葉に副会長は顔を歪ませていた。舐められていると思ったのだろう。

「それは面白いことを言いますね。かつ方法があるのですかこの状況を理解できていないあなたに」


「あるぜ。この状況を覆す方法がな」

俺はそう言うと魔力を放出を始めた。魔法の発動は普通は体に魔力を貯めて発動する。今やっているのはその逆だ。それゆえに副会長は理解ができないという顔をしていた。普通に考えればこんなことをするのは自殺行為だろう。それがわかるのか観客の方も負けを認めたのかと言うようにざわざわとしていた。



だが、その中にツカサ以外に何をするのか理解した人間がいた。学園長だ。学園長は面白そうな顔になっていた。

「その年でこれが使えますか。将来有望ですね」

呟いた言葉はフレイがただ調子になった人間ではないこと、それと高い才能を所持していることを理解した声だった。



「いくぜ、俺の全力。『顕現せよ、フェニックス』」

俺の詠唱と同時に空に魔法陣が展開し名前を呼ぶと空から火の鳥が降り立った。これは世界で数少ない権限術の使い手が発動する魔法だ。それで呼び出されるのは聖獣と呼ばれる生物だ。その中でも炎を扱う聖獣フェニックスが呼び出された。その光景に流石の副会長も冷や汗を流していた。

「これは流石に予想外ですね」

その言葉に返すかのようにフェニックスは鳴き声を上げた。

「ギェーーーーーー」

俺の戦いは今ここに幕を上げた。

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