第5話

★フレイ

 ツカサを闘技場に送った後、俺は観客席の方に移動した。そうしたら、闘技場の方にはツカサと対戦相手のデブが相対していた。どうやら、ツカサは相手に煽られているようだった。確かにツカサは気弱な性格に見られがちだがそんな奴ではない。俺とまともに戦える同年代はツカサくらいだろうと思っている。そんな奴が気弱な性格の持ち主であるわけがない。普段は戦いに興味がないようにふるまっているがあいつは俺と同じように戦いを楽しめる奴だ。だからきっとあいつはこの戦いを少しは楽しみにしているのだろう。初めて俺と親父以外と戦えるのだから。


「ツカサ~。あまりやりすぎるなよ~」

俺はツカサのことを思って応援してやると想像通りにデブは怒ったみたいだ。その光景はまさに噴火したと言えるように顔を真っ赤にして怒っていた。それを視たらつい独り言をつぶやいていた。

「ピンクの豚じゃん」

それがどうやら聞こえたのだろう周りの人間はくすくすと笑っていた。


そうこうしていると学園長が来て、試合が始まろうとしていた。興味深く観察をしようとしていたら話しかけられた。

「あの~。あの細い子の知り合い?」

「そうだけど」

どうやらツカサのことを聞いたいようだった。

「あの子大丈夫?あの子の相手はあんななりだけど魔法の腕はすごい子よ」

どうやらあのデブは少し名の知れた人物のようだ。それでツカサを心配して俺に話しかけてきたみたいだ。

「大丈夫だ。あいつはそんなやわな奴ではないからな」

その言葉が合図になったかのように試合は始まった。


★ツカサ

 闘技場についてから何か豚がしゃべっているようだがそんなことをすべて無視し審判が来るのを待っていた。そうしたら審判が来たみたいだと思って振り返るとそこには学園長がいた。決闘を言い出した学園長が審判をすることになったみたいだ。そこで簡単に決闘のルールを告げられた。


・相手を殺さない

・闘技場のことを気にしなくてもいい(壊れないように防御魔法をかけているらしい)

・試合の決着は審判の判断か対戦相手の降参によって着く


以上の3つがルールとなっているらしい。どうやらこの3つを守りさえすれば何をしてもいいということだった。たとえ部位欠損をするような技を放ってしまっても問題ないようだ。恐ろしいと思う反面、そんなことをしでかす存在が学園に在籍していたということに驚きだ。


 僕たちは試合開始の合図で始まることを聞かされそれぞれの立ち居ちについた。そうしたら、あのデブは僕に気付かれないように魔法の構築を行っていた。そのことを審判である学園長に告げようとすると学園長も気付いている様子だった。なんでもありというのはこういうことを言うのだろうと気付かされた。確かにルールには試合前に魔法の構築を禁止にすると言われていないので大丈夫なのだろう。だが、このようなわかりやすい不意打ちを僕にして簡単に勝てると思っているデブに腹が立ってきた。なので小細工なしに真正面から叩き潰すことにした。


 審判が両者を観察し、いつでも試合が出来ることを確認したら開始の合図をした。

「はじめ」

はじめの合図で予想通りのデブは僕にファイアーボールの魔法を放ってきた。

僕は右手を前に出しファイアーボールを受けた。そうするとファイアーボールは爆発しあたりに煙が上がっていた。

「ははは、俺様にたてついたのにあっけなく終わったな。ははははははは」

その光景を見てどうやらまともに僕が食らって勝ったと勘違いしたようだった。


右手を一振りし煙をどかした。そうすると驚いた様子で僕をデブが見ていた。

「はははっは?何で無傷なんだ。おかしいだろう。何かイカサマをしてるんだ」

あのデブは何か良くわからないことを言っているが僕は気にすることなく告げた。

「あの程度の攻撃で終わりか。なら話にならないな。出直してこい」

そう告げるとあのデブは顔を真っ赤にして

「ふざけるな!もう怒ったぞ。これが俺様の最大魔法だ」

『フレイムカノン』

ファイアーボールの上位魔法であるフレイムカノンを放ってきた。それはファイアーボールとは桁違いの熱量を含む魔法で食らえば一般人は一たまりもないだろう。この魔法を見て学園長は満足そうな顔をしていた。そして、僕の方を一瞥して君は何をするのかねというような視線を向けてきていた。


 僕は魔法を扱うことが出来ない。それは、僕の特殊体質が原因だ。魔力が体にとどまらずに放出されてしまうからだ。それを逆手に取ったのが僕のこの戦法だ。

吸収する右手ドレインハンドそれこそが僕が新しく手に入れた力だ。それはその名の通りに右手で魔力や魔法を吸収する力だ。この力は案外すぐに手に入れることが出来る。だが、その評価は微妙なものだ。なぜなら、人間には魔力許容量という魔力を体内に持てる限界というものが存在するからだ。限界を超えて魔力を吸収することは出来ない。それゆえに戦いには不向きな性質をしている。だが、僕にとっては実に扱いやすい力だ。魔力が放出するという体質を持つ僕にとっては理論上無限に吸収することが出来る魔法殺しである。それゆえに魔法使いは僕にとって狩る獲物にしかならない。あのデブはとっておきの魔法をいとも簡単に防いでしまったせいであろう。気が動転してめちゃくちゃに魔法を僕に放ってきていた。その姿を僕は見てもう終わらせようと考えた。真正面からデブに向かって走り、自分の体に当たる魔法だけを右手で防ぎ、あのデブの顔面に助走を込めた一撃を与えた。その結果、あのデブは気絶してしまった。それを察したのであろう学園長は

「この試合、ツカサの勝利!」

こうして僕は学園生活初めての決闘に勝利した。

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