第8話

★ツカサ

「飯も食べたことだしさっきの続きをしようぜ。ツカサはどこまで覚えているんだ。」

そういわれて僕は思い出したことを話してみた。

「そうか、つまり、俺と殴り合ったところまでは思い出したんだな」

その言葉はどこか確信めいたような声音だった。

「親父、やっぱりあそこからは覚えていないんじゃないか」

「ふ~む。そうみたいだな。何か手がかりになると期待したが駄目なようだな」

その言葉はまるで僕が何か事件を起こしたかのような言い草だった。

「僕が何かしたんですか?」

「いや、君は被害者で間違いないよ。そう、相手に利用されただけだ。だが、それでこのまま終わらすわけにはいかない。君には今回何が起こったのかを知る権利がある。いやなら、聞かなくても構わないし君の記憶が戻る可能性もある。どうする?」


その質問はすべてを僕に任せると言っている。僕は何があったのかを知りたかった。どうして僕は彼と戦ったのか。どうして、記憶をなくしてしまったのかを。

「教えてください。僕に何があったのかを」


「そうだね。まずは僕たちが知った時系列順に話をしようか。最初にフレイと戦って途切れている記憶からだ」


★フレイ

ツカサの体から黒い靄があふれているのが見える。あの靄は魔力だということを俺は理解した。いや、理解せざるを得なかった。それほど濃密な魔力だったからだ。

「う…嘘だろ。あれが魔力なのか。魔力は普通目に見えないだろ」


 魔力は目に見えない。これは世界の常識だ。だが、魔力を視る方法は少なからず存在している。例えば、魔眼の持ち主だ。この者たちは基本の能力として魔力を目でとらえることが出来る。こういう特殊な者たちだけが見えるのかと聞かれれば違うといいえる。なぜなら、フレイは魔眼の持ち主ではないからだ。では、なぜフレイは魔力が見えると言ったのか?それは、魔力濃度の高さが原因だ。魔力の濃度が高ければ高いほど魔力は可視化する性質を持っている。つまり、濃密な魔力を感知したフレイは黒い靄が魔力であると理解したと言える。


 では、魔力は可視化すると黒い靄となって見えるのかそれは違うともいえるしそうだともいえる。属性によって色が変化するためである。魔法使いは魔力を消費して魔法を使う。この時の魔力は自分から出している。そして、魔力には属性が存在し、その属性魔法を使う時には少量の魔力で使うことが出来る。つまり、魔力には人それぞれ得意属性があるということである。では、黒い靄というのを考えてみる。靄が魔力であるとするならば、黒が魔力の属性となる。黒の魔力は深淵といわれている。闇属性ではないのかと勘違いではないかといわれれば違うと断言できる。なぜなら、闇属性は紫色だからだ。紫と黒を見間違えることはそうそうないだろう。ゆえにツカサはここでは深淵の力を持っていることが分かった。だが、この時のフレイはそのことに気が付かなかった。そのことをまだ学んでいなかったからだ。だが、一つ理解していることもある。自分よりもはるかに多い魔力の持ち主が目の前にいるということだ。


「俺よりもはるかに多い魔力量だ。どうすれば」

俺はツカサが魔力を放出すると同時に距離を取っていた。あのままでは何をされるかわかったものではないからだ。だが、今はこの距離感が大切になってくると考えている。戦いが始まって射撃魔法でツカサに攻撃した時は防戦一方だった。このことから、魔力が目に見えることになっても戦い方は変化しないと考えた俺は射撃魔法で攻撃することにした。あの魔力を込めた拳を食らうなんて今の俺には自殺行為にしか見えないからだ。とりあえず、俺はファイアアローを使い権勢をすることにした。


「ファイアアロー」

ボンッ

その一つの音によって俺のファイアアローは消滅していた。

「き…きえた」

消えた、消された、消滅した

俺の頭の中では疑問で一杯になっていた。どうやって、何が起きた。

そんなことを考えていても何もわからない。なら、手を止めて相手が何かをするのを待つのは不利だ。この状況で何が起きているのかわからないのに相手に主導権を渡すのは自殺行為だと思い、俺は自身で打てる最大の技を放つことにした。


魔法全弾照射フルバースト

これなら、少なくともツカサにダメージを与えれるはずだ。そう思っていたらツカサはダメージを受けているようには見えなかった。先ほどのファイアアローと同じ力で消されているみたいだった。


『それで終わりか。なら私の番だな』

ツカサがしゃべったと思ったら別人のような声が聞こえてきた。その声は俺が恐怖するのに十分な覇気をもっていた。まるで、ツカサではない別人のようなものだった。

『私も貴様と同じ魔法を使うとするか』

その言葉に俺は恐怖した。俺の魔法を見ただけで真似をすることが出来るというのか。

魔法全弾照射フルバースト

それは俺の魔法そのものいや、それ以上のものだった。


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