第5話
★ツカサ
もうすぐ決闘が始まろうとしている中、僕は緊張している時の対処法を思い出していた。これは誰かが教えてくれたことだ。
『一撃だ。先制で一撃を与えろ。全力でだ』
誰かが教えてくれた記憶をふと思い出していた。
これが正しいことなのかは今の僕には関係なかった。
今必要なことは結果なのだから。今、頼れるものは自分だけという環境に身を置いている。だから、この直観を信じ、僕は。
「それでは始める。決闘開始!」
「
全力で一撃を与えた。
★フレイ
この戦いは楽しめると聞いた。俺は今まで同年代の中ではトップクラスの実力を持っていると自負をしている。親父の命令で魔物をソロで狩ることやダンジョンに潜ることだってやってきた。それもこれも俺の家は実力主義だからだ。そんな中で過ごしてきた俺だが、同年代に敵はいないと考えていたら親父からある話が上がってきた。
「フレイ、お前に初仕事を与える。イカルス家の子息にあたるツカサを倒してこい」
ツカサ?それは俺でも聞いたことのある名前だ。
曰く、魔法の使えない出来損ない。貴族であるのに魔法が使えないのは欠陥品といわれてもおかしくない存在だ。だが、あの家は違った。大事に育てられているゆえに貴族の本分を忘れ当代で終えるのかと、そんなことで有名になっている存在だ。だとしたら、なぜ今になってツカサを倒せと言ってくるのか。
「親父、それは構わないが何で今なんだ。あいつはいつでもやれる雑魚だろ」
「あの家から決闘を申し込まれたからだ。あと、奴はコダイ魔法なるものを習得したらしい」
「コダイ魔法?聞いたことがないな」
魔法というからにはそれなりのものなのだろう。
一つ分かることがあるとすれば戦う力を得たということだ。それなら、油断をすると命取りになりかねない。俺の初戦闘の相手がそうだったように。
俺はどんな相手でも油断なんかせずに必ず倒す。
そう考えていたのになんだこの状況は。
開始の合図同時に俺は吹っ飛んで壁に衝突していた。
顔面に一撃をくらい鼻が折れていること目が見えなくなっていることを把握し、今までで味わってきた痛みで一位と二位を争うほどの激痛が走っていた。
口に広がる鉄臭い味が気になり唾を吐きだした。
一撃でこれか。これは決闘を申し込んできてもおかしくはない力だ。
俺は右手で顔を覆い魔力を右手に集中した。そうすることで顔は魔力からなる炎で覆われた。
俺が使う炎属性の魔法は本来、回復をすることが出来ない。だが、俺の魔力は再生の力が宿っている。そのことを応用して回復する炎を作ることが出来る。これを使い俺は回復を行った。
どんな状況においても冷静さを忘れないそれが俺の戦い方だ。眼も回復し周りを見れるようになってきたためこの状況を作り出した相手の方見た。そうして、目にしたのは笑顔だった。
★ツカサ
僕が勇逸いつ使える魔法、
この魔法は全部で三段階存在し、全部を解放することは困難を極めると話を先生から聞かされている。そんな中で一段階目を戦闘え使用できるレベルに持ち込めたのは先生のおかげだった。毎日の特訓に付き合ってもらい、くじけそうになりながらも頑張ってきた。そんな成果が今、発揮されたのだ。そのせいか、今の僕は自然と笑みが出てきていた。勝ったと思っていたら、相手は服は汚れている様子だが殴った顔面には傷が一つもなかった。それが不思議と楽しいと思えてきた。
僕は相手が何をしてくるのかわからないためとりあえず構えた。それが合図となったのか相手は魔法を使い僕を攻撃してきた。
「ファイアアロー」
無詠唱魔法だ。詠唱を破棄することで魔法をすぐに使うことが出来るメリットがある反面、威力が下がると聞いたことがある。それを僕に使ってきたということは近づけさせたくないということだろうか。それとも様子見か?そんなことを考えているともう目の前に迫ってきていた。とりあえず防御をしようと考え、両腕で顔面を守るように×字に腕をクロスさせて防御した。
ドンッ
鈍い音が響いたが僕にはダメージというダメージがなかった。あったとしてもかすり傷みたいなものだった。これで少し余裕が出てきたのか僕は相手の距離を詰めるために前に出ようとしたその時だった。目の前に広がるのは数多にある魔法陣の数々だった。
「えっ。そんなことあるの」
小さな声で相手の声が聞こえてきた。
「俺は相手が誰であろうと容赦はしねぇ」
その言葉に僕は相手が魔法を放つことを理解した。急いで先ほどのように守りを固めて魔法が来るのに対処しようと考えた。あれほどの量だ。数十じゃ収まらないもしかしたら百近く魔法陣が展開していたと思うほどの量だ。あれをすべてよけきれるとは思えなかった。なら、そのすべてを
「
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