第1話
僕は不思議な夢を見た。
僕が魔法のない世界の研究者として生きていたという夢だ。
そのあとは不思議な空間にいた、そんな夢だった。
「夢?それに魔法か」
落ち込んだような口調で言葉が出た。
それもそのはず、僕は魔法が使えないという欠点がある。
だが、自慢できる点もある。魔力が人よりも多くあることだ。
この魔力が多いことが魔法を使えないことにつながっているのだから皮肉なことだと僕は考えている。
「ツカサ、起きたのか」
この声は、
「お父様。いらしたのですか」
「息子が倒れたと聞いたからな。様子を見に来た。
その様子なら大丈夫のようだな。今日は安静にして休んでいなさい」
「わかりました。すみません、お父様」
僕の名前はツカサ・イカルス
イカルス家の長男だ。この国 でも魔法の名門として有名だ。
それゆえに魔法の使えない長男は問題視されている。
だが、お父様やお母様は僕のことを大切に育ててくれている。
貴族である前に一人の息子として愛してもらえているから心苦しい。
自分の力では家族の迷惑になってしまうことが。
「何、謝ることはないだろう。大事な息子が倒れたと聞いたのだからな
それに一つ話したいこともあったからのだからな」
「はなし、ですか。何ですか話したいことというのは」
「お前には魔法の家庭教師をつけることにした」
魔法の家庭教師!僕は魔法が使えないことを知っていているのに何で。
これまでにも何人もの人が家庭教師として僕に教えてきたけど僕は使うことが出来なかった。だから、僕も魔法を使うことをあきらめていたのに。
「無理ですよ。いつもと同じで使えないままですよ」
「いや、今回は普通の魔法を教えてもらうのではないんだ。
古代魔法について教えてもらう人を呼んだ」
「古代魔法?なんですかそれは」
「愛する息子が魔法のことで悩んでいるのは知っていたからな。私の方でもいろいろと調べてたんだ。そうしたら、お前が使えるものではないかと思って古代魔法の家庭教師を頼んだ。詳しいことは先生の授業を聞きなさい。私でも専門分野外でよくわからないんだ」
お父様でも知らない?それってどれだけ前の魔法なのだろうか。
人から聞いた話では、魔法の知識に関しては賢者と呼ばれてもおかしくないと言われていると聞いた。そのお父様が知らないとは、どんなものなのだろう。
その人は僕が倒れてから一週間後に来た。
「君がツカサ君かな?僕の顔に何かついているかな?」
その人の容姿は極めて異様だった。貴族の家に来ているというのに仮面をつけているのだ。まるで、顔を見られてはいけないと言っているようなものだ。
「何で仮面をつけているのですか?」
びっくりとしたような感じで仮面の男は僕に話しかけた。
「これは驚いた。僕の素顔が見れるのかい。
この依頼は適当に流そうと思っていたけど面白くなりそうじゃないか」
「僕の質問に答えてください。衛兵を呼びますよ」
この男は何かおかしいと僕の勘が告げている。
それにこの余裕は何なんだ。
「無駄だよ。この辺りは特殊な魔法で認識をゆがめているからね。
君がどんなに叫んでも外には聞こえないよ」
僕は恐怖した。ここでこの人がその気になればいつでも僕を殺せるということだからだ。それに僕の勘が告げていた違和感の正体はこの空間だったのか。
「僕をどうするつもりですか」
「最初は何もしないつもりだったけどねぇ。気が変わったよ。
君には古代魔法について学んでもらうよ」
えっ。どういうこと
「不思議そうだね。古代魔法はね、才能がないと使えないものなんだよ。
だから、君のお父さんにも言わしてもらったけど才能がなかったら教えれないよって。でも、君はその才能を披露した。いや、僕が考えてもみないほどの才能があった。これは実に教えがいのある生徒だ。いや~実に楽しみだよ。ふふふふ。あ~はっはっはっはっは」
なにこの人急に早口になって僕のことをほめた?のか才能があるとか言っていたが。
うん?僕に古代魔法の才能がある。つまり、魔法が使えるかもしれないということ!
家族に恩返しが出来るということでもあるのか。
「あ、あの僕には本当に才能があるのですか?魔法が使えない僕が才能があるのですか」
「えっ、あ~あるよ。僕に言わせれば今世の中ではやっている弱小魔法なんかよりも君が今から学ぶ古代魔法の方が遥かに強力で便利なものが使えるようになるほどの才能がね」
この日から僕はこの人の元で古代魔法を学ぶことになった。それが僕の運命の分かれ道なっているなんてこの時の僕には考えもしないことだった。
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