古代魔法の担い手

ニクス

序章

プロローグ

俺は不摂生が原因で死んでしまったのだろう。


なんでそんなことが言えるのかだって今目の前に広がる場所が原因だよ。


僕が生きていた場所ではありえないようなところだったのだから。



俺の名前は魔法まほう つかさ

生まれてきてからこの苗字のやつは家族以外にあったことはない。

俺が自己紹介の時に使える鉄板のネタだ。


この苗字のおかげで今の俺がある。

そうだ。魔法の研究だ。

現代日本において魔法なんてものを大真面目に研究している俺は家族からも世間からも疎外されるようになってしまった。


そんなことは些細な出来事だ。いや、些細な出来事と言っても寂しい気持ちがあるのは確かなことなのだがな。そんなことを言ってる暇はないのだったな。


俺が魔法を研究しようとした経緯が実は存在する。簡潔に言うと魔法を使うものによって命を助けられたからだ。ありきたりな経緯だが俺にとっては実に大きな出来事でこの経験は10歳の時には大きすぎるイベントだった。それからだった、魔法というものに興味を抱いたのは。


それから45年。55歳となった俺は定年まであと10年という年齢までやってきた。

いままで良く生きてこれたと思えるよ。

こんな研究で食っていけるようになるとは思わなかった。


そして、今回は魔法について大きなことが分かってしまった。現代日本において魔法の立ち位置が現実のそれとは違うことが分かったからだ。もっと正しく言うならばこの地球において魔法とはなくてはならないものだったのだ。このことを学会に発表するべく俺は情報を整理している最中だ。


ぶるぶるぶるぶる


俺の携帯に着信があったようだ。

いや、この音は緊急事態になる音だ。何かがこの施設に起きたということか。

こんなこともあろうかと、魔法で施設を監視していた俺は驚愕した。この施設を襲っているのは軍隊と呼ぶにふさわしいような恰好の者たちだったからだ。


「どういうことだ。なんで軍のものが」

驚いて口調で俺が言うと助手が急いだ口調で話しかけてきた。

「博士、急いで避難してください。魔法の防衛機能が次々とあの者たちによって解除されていきます」


解除だと。解除するには魔法の知識が必要となる。

つまり、私は知りすぎたということか。

この結果から言うと違うな。

魔法を世に公表しようとしたことが間違いだったのかもしれない。

よく考えればすぐにわかることだった。

魔法の存在が莫大な金を生み続けている現実を理解すべきだった。


「俺はもう逃げれまい。君だけでも逃げなさい。これを使ってくれてかまわない」

俺が助手に渡したのは転移装置を使うためのカギだ。

「博士はどうするのですか」


「俺は時間を稼ぐとするよ。君は早く逃げなさい」

「すみません」

そういうと助手は俺の目の前からいなくなった。


俺は殺されるのだろう。だが、ただで死んでやる必要はない。

俺が開発して実験をしたことがない装置が一つ存在する。

理論上は転生を行える装置だ。俺の計算では成功率は100%だ。

なぜ実験をしなかったかというと証明が出来ないからだ。

観測者である俺が観測できないものを証明するなんてできない。

ゆえに実験は行わなかった。


だが、今は違う。

俺がこの装置を使うことで俺が観測者としてこの装置の証明が出来る。

なおかつこの装置にはある設定を施しておいた。俺が使い終わると爆発するようにしておいた。これで襲撃者の手に渡ることはなくなった。


そして、装置を起動した。

「次の人生は、平和に暮らしたいものだ」

これが俺の人生最後の言葉だった。



「おめでとうございます。あなたが初めて自力での転生者となります」


急に話しかけられて僕は混乱していた。

うん、ぼく?

自分の体を見ると若返っていた。

「ど、どういうこと?なんで若返っているの」

辺りを見渡すと見たことのない光景だった。

白く何もない空間だったからだ。


「落ち着いてください。我々は偉業を成し遂げたあなたを一目見たかっただけです」


少し落ち着いてきた。落ち着いてきたからかこの空間の違和感に気が付いた。魔力に似た力を感じたことだ。


魔力とは別の力であって魔力と近いもの。

ここは一体何なんだ。

そういえば不思議な声をした方向を見ようとした。正しくは姿を確認したかっただ。

だが、それはできなかった。なぜなら、認識しようとすれば頭に激痛が走ったからだ。


「我々は目的を果たした。他に要件はあるか?」


魔力とは別に2つの違和感に気がついた。

1つは気配がひとつなのに複数人の声がしたことだ。

今までに声がしたのは4人だ。1人は僕のもの。2人は綺麗な声の女性。最後の一人は威厳のある男性の声だ。


「ない。転生を始めよう」


落ち着いた男性の声のようだ。

この場には僕を除いたら4人いるはずなのに1人の気配しかない。一瞬確認できたその容姿はノイズがかかっているようですよく確認できなかった。まあ、頭に激痛が走って見れなかっただけだけど。


そして、もう一つの違和感はまるで僕を認識していないような感覚ということだ。

考え事をしていると辺りは急に暗くなってきた。それと同時に僕の意識は遠のいてきた。

一体これは何だったんだ。


目を覚ますと僕はいつも寝ているベットの上にいた。いや、ベットで寝ていたんだ。

つまりさっきのは

「夢?」

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