第9話  再び街へ

二人は集会所から歩いて街へと向かった。

集会所と街はどちらも人が集まる地域にあって二つの場所はさほど距離はなく、すぐに辿り着いた。

街についたと思うとすぐに「もう喉カラカラだよ。とりあえず水分補給しよう」とフィーは言った。

集会所で情報収集のために長い時間たくさんの人と話したのと、陽がだんだんと高く昇ってきて気温も上がり、男も喉が渇いていたので、その提案に頷いた。

この間、街に来た時には、出店を中心に歩き回っていたが、今日はひと休みしようかとカフェや食事ができる店の辺りへとやってきた。

その地区には土壁でできた店が並んでいて、その中に香しいお茶の香りが漂ってくるお店があり、フィーはその店の中に入って行った。

男も後から続いて入ると、豊かな髭をたくわえた店主がにこやかに二人を招き入れた。

フィーは壁に貼ってある品書きを指さして、

「私はハーブティーと、あとはちょっとお腹も空いたからスープかな。

お兄さんは何がいいかな~。

コーヒーもいいけど、まだこれから歩くだろうしハーブティーにしておく?」

「ああ」男はそう答えるとフィーは店主に注文を伝え、お茶が来るまでの間、二人はこれからどうしたらよいかと話し合った。


「5種のハーブの特製ブレンドティー二つに、野菜のスープね。お待たせしました」

店主が注文した品を持って来ると、「ありがと」とフィーは、にっこりと店主に応えた。

壺の染料と同じ綺麗な青色に染め上げられた不思議な織り方のテーブルクロスの上にに置かれたハーブティーからは、少しスパイシーな香りがしていて、暑いこの土地で気をはっきりさせておくのにぴったりな少し刺激のある香りが立ち上ってきた。

今まで嗅いだことのない香りだな・・・。それになんだか変な色が見えるような・・・。


「これを飲むとね、元気が出るよ。しばらく旅に出てたからここで飲むのも久しぶりだよ~。私は蜂蜜を入れて飲むのが好きなの」そう言いながらフィーは、そのお茶にテーブルの上にある蜂蜜を木のスプーンですくっていた。


男は初めて飲むこのお茶の味をそのまま味わってみたくて、そのまま口元へとカップを持っていき、少し口に含んでみる。


・・・なんだこれは・・・。


蜂蜜をしっかりかき混ぜ終えたことに満足して、さて飲もうかとカップにちょうど口を付けていたフィーの手を、男は強く掴んで「フィー!待て!!」と普段は出さない大きな声を上げて止めた。


「なに?どうしたの?!」


「飲むな!」


「だっていつもと香りも同じだよ。お茶の成分とかお兄さんが飲み慣れてないから

じゃないの?」


「初めて飲んだから違和感があるのかと思ったが、やはり薬効なんかではなく

なにか良くないものが含まれているようだ」

今度はフィーの前に置かれているスープもスプーンですくって少し舐めてみる。

フィーは心配そうに男をじっと見つめ様子を伺っていると、

「やっぱりこれもおかしい」

そして急に小声になってフィーの耳元で

・・・水か。そうか、水がおかしいのかもしれない。

男は店主に上手くこの事実を伝えて早く店を出ようとささやいた。

フィーはなんとか店主の機嫌を損ねないように、頼んだハーブティーもスープもいつもと味が違うみたいに感じるよ。お水がよくないのかな?

念のため調べてから営業した方がいいと思うけど。

この近辺の他のお店にも一応教えてあげて欲しいんだけど・・・と伝えてみると、

「そうかい?俺はよく分からなかったけど、フィオナちゃんがそういうならきっとそうだろう。他の店にも言っておくから安心しなよ。

今日は店は休みにして調べてみるよ」と店主言い、店から出る二人に手を振って見送った。


「フィー、この村でみんなが使っている水源はどこにある?」

「ここから少し行ったところの地下にあるよ。早く行こう」

フィーは眉を寄せ、両手で男の腕をぎゅっと抱きしめた後、

意を決したように彼の左腕をわしづかみにして、ずいずいと歩き始めたのだった。



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