第8話 集会所
村人が多く集まる場所を教えてほしい、そう男に言われたフィオナは、まず最初に街の集会所へと向かった。
フィオナに続いて男も中に入って行くと、造り自体は簡素ではあるものの室内は日陰になるように配慮されており、風通しも良く過ごしやすそうな場所だった。
「この土地は日中日差しが強いから、陽が落ちるまでお年寄りや子供たちがこの集会所に来ていることが多いよ。チーカという陣取りゲームをしたりしてね。
あとはお茶を飲んだりして世間話を楽しんでるよ。
子育て中の母親も息抜きに来たりして村の人たちの憩いの場だね」
「なるほどな。ここなら居心地が良さそうだ」
そう言ってから、男はフィーの頭に顔を近づけ、今度は小声で囁いた。
「ここなら被害を受けた年配の人たちから話が聞けそうだ」
男のその言葉に、フィオナも小さくこくんと頷いた。
フィオナは家から担いできた大きな荷物をテーブルの上にドサッと置き、その大きな袋からごそごそと目当ての物を取り出そうとしながら
「皆さん~!ちょっとお願いしたいことがあります。
お聞きしたいことがあるのですが、お話をしてくれたら、これ!これを差し上げます」
そう言って袋からこの村特有の青い染料で模様付けされた食器類、お皿や水入れ、カップなどをテーブルに並べ始め、さらに見るからに甘そうな・・・多分商売に出た時に仕入れてきたらしいお菓子の袋詰めもいくつも袋から出したのでした。
食器を見ようと集まってくる大人とお菓子に引き寄せられる子供たちを見て
はい、すみません~順番でお聞きしますね~品物はたくさんありますから、
大丈夫ですよ~とすぐに伝えるあたり、フィオナはやはり小さいながらも商売を手伝っているだけあるなと男は思った。
「このお兄さんは村の事件を解決するために私がお願いして一緒に来てもらったので怪しい人ではありませんから、安心してくださいね」
と笑顔でそう続けて言った。
落ち着いて話を聞こうと食器やお菓子が広げられているテーブルの側のイスに腰かけてもらい、フィオナも男もその向かいに座って話を聞くことにした。
ここでの普段の過ごし方や、集会所に来る人同士の付き合いについて、
また村の異変で被害を受けた当事者本人から話を聞いたり、本人から伝え聞いたことを教えてもらった。
そしてお礼にたくさんの食器とお菓子を渡し終えて、大きかった袋は半分くらいにまで小さくなった。二人は集会所から次の場所へと向かうことにした。
「やはりあの集会所に被害を受けた人が多くいたな。
しかし、この集会所自体には特に不自然なところは見当たらないようだ。
怪しい動きをしている者もいなかったようだしな」
「そうだね。他の場所も調べていくうちに何か見つかるかもしれないから」
「それにしても大きな袋の中に何をたくさん入れてきたのかと思ったら、
・・・あの青の模様の食器、あんなにあげてしまってよかったのか?」
「あれは村でも日常的に使うような品質の物で高価なのじゃないから大丈夫。
それにこの異変を無くせるなら安いもんだと父さんがくれたものだから。
お兄さんは村の人から見たらよそ者だもん。
話してくれっていっても絶対に警戒されるでしょ。
だから何か報酬がないと話してもらえないだろうって思ってね」
やはりフィーは大人に負けないくらいに頭が働く子らしい。
「フィーは賢いな」
「そんなことないよ。お兄さんの役に立ってよかった」
フィーは、ふっくらした頬を軽く染めてそう答えた。
「それで、次は?」
「次はこの間も出かけた店が集まっている場所へ行こう。村の中ではあそこが一番人が多い場所だからね」
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