第6話 帰り道
フィオナと男は帰り道の間、この村に起きた異変と先ほど会った祈祷師の話をしながら歩いていた。
「あの祈祷師だが、村人の治療をしたのだったな。
治療の前とその後でどう変わったのか詳しく教えてくれないか」
「いいよ。村で不思議な現象が起き始めたのは三か月ほど前のことで、
普段の生活で気にならない程ではあるものの、そのうち手や足などの動きが悪くなる人が出てきてね。最初の数人はお年寄りだったから年のせいだろうと気が付かれずにいたんだけど、そのうちに若い人も年齢に関係なく同じような状態になって、最後には村人の10人に1人くらいは同じような訴えをするようになってきて。
これは呪いか何かか、伝染病なのじゃないかと皆が怖がるようになって、
あの祈祷師に相談しに行ったんだ。
村では一番知識があって力のある人だからね。
それで身体の神経の弱りを楽にする薬やまじないをしてもらったら、
ほとんどの人は回復していったので皆喜んでいるんだ」
「なるほどな。あの祈祷師はなかなかの腕らしいな。
それでその異変の原因については、何か分かっていることはあるのか?」
「それがね、村長たちが調べているんだけど、未だにはっきりした原因が分からないらしい。人によっては治った後もまた不調になる人もいたみたいだけど、後遺症も軽く済んでいるらしいよ。」
「そうか。しかし原因が分からなければまた繰り返して被害者を生むのだから、解決にはならんだろう?」
「そうなんだよね。私もそれが気になっていて・・・。
この村の人には誰も嫌な目にあってほしくないしね。
お兄さんならその原因を突き止めて解決できるのかな?」
「これから調べてみるが、私の能力が使えるかもしれないからやってみよう。
解決できるまでこの村に滞在しようと決めたから安心してくれ」
「お兄さんの能力って、あの時に私が見た綺麗な光と関係ある?
とっても綺麗で・・・あの光のおかげで倒れているあなたを見つけることができたんだよ」
「そうか。フィーにも私の光が見えたのか。
あんなもの大して役にも立たないと思ったが、今回はあれのおかげで命拾いしたのか。能力者はな、その能力に応じて色んな光を発しているんだ。
ただ普段はあまり見えないことが多いらしい。
私の場合は命に係わる非常時だったからだろうな」
「そうなんだ。私、今まで光ってる人間なんて見たことなかったから、
ちょっと驚いたよ」
「それでよく助けてくれたな」
「うん、光が綺麗だったしね。それならお兄さんも悪い人じゃないだろうって。
それにあんな風に倒れていたら悪いことだってできやしないもの」
そう言って、フフッとフィーは楽しそうに笑った。
「あの時は、何をされても抵抗できないくらいに腹が減っていたからな。
水も肉もぐいぐい口に押し込んでくれたしな」
「それはお兄さんの為だからだよ~。
口に物を入れたら気も失わずに済むし、自然と食べたり飲んだりするものでしょ。
人間って」
と悪びれた様子もなくフィーは答えた。
(光といえば・・・あの祈祷師もわずかながら赤い光を発しているように見えたが、
フィーにはあの光は分からなかったのか。普段は見えないように力を抑えているのかもしれないな)
「明日は早く出かけたいので今日はもう休む。おやすみ、フィー」
「もうちょっとお兄さんの能力のこと教えてほしかったのになあ。
でも今日は大分歩いて疲れたでしょ?明日のためにぐっすり眠ってね。
おやすみなさい、お兄さん」
二人はそれぞれ自分のベッドに向かい、男は祈祷師のことを思い返して、
フィーは明日の外出先での食事を何にしようかを考えながら眠りについたのだった。
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