第4話 街へ

フィオナの家に滞在して数日もすると、男はベッドから出て家の中を歩くことができるほどに回復していた。

忙しい仕事の合間に甲斐甲斐しく世話をしたフィオナのおかげであった。

フィオナは男との会話を楽しみにしているらしく、昼間の食事やお茶の時間だけでなく、夕食後にもまた部屋にやってきて話をしに来ていた。

そのうち男も彼女のことを愛称のフィーと呼ぶくらいまでには親しくなっていた。


動けるようになってからも、しばらくはフィーに大人しくしているように言われていたが、じっとしているのも退屈になってきたので少しだけ、と約束して、今日は彼女と一緒に散歩に出かけることにした。


外に出てあたりの様子を見ていると、

やはり村の中も地面は砂で覆われたところが多く、一見すると不毛の土地といった雰囲気だったが、実はこの下にこの村に豊かさをもたらしている壺や皿を作るための粘土層や色付けに使われる青い石があり、砂地に立っていられるのが不思議に感じた家の柱も地下の粘土層が支えているのか・・・そうと分かると、様々な地層にこれまでの自然の変遷が表れているんだなと壮大な自然の流れを感じるのだった。


しばらく歩いて村の入口の店が立ち並んでいる辺りまで来ると、今日も人々が集まって賑わいをみせていた。

フィーは楽しそうにいつもの行きつけの店や特別な店のことを男に教えた。

「ここの果物はすごく新鮮なんだよ。ここに届くまでがとっても早いからね。

ほら、うちに来てから出したのもこの店で買ったんだ。美味しかったでしょ?」


「ここの店は外からやってくる客向けに高級なものしか扱わない壺の店だよ。

壺に村特有の紋様を入れているのも村で一番の腕といわれている職人がしていて特に美しいものだけ出してるんだ。

うちも同じ職人の品物をいくつか扱ってるけど、この店の物はとにかく貴重なものが多いんで他では手に入りにくいから外からやってくる客が多いんだよ」


フィオナの話を聞きながらも、男の意識は他のことが気になり始めていた。

ここにいる村人たちの様子を見ているうちに村に来た日と同じ様にやはりどこかおかしいとはっきりと感じるようになっていたからだった。

そうして注意深く見ていくと、道行く人の中にごく数人ではあるが動き方の辛そうな者や表情がこわばった者たちがいることに気が付いた。


店を一回りして、そろそろ帰ろうかとフィオナは言い、それからしばらくぼんやりと

している様子だったので、男がどうした?と尋ねると、

「店も賑わっているし平和で暮らしやすい村なんだけどね・・・」とだけ言って黙り込んでしまった。


「もしかしてこの村で何か最近おかしなことでも起きていたりするのか?」


「お兄さんここ来たばかりなのによく気が付いたね」


「ああ、村に来た日に何かしら違和感を感じてな。やはりなにかあったんだな」


「うん。実は一か月ほど前から村人が不思議な病気にかかることがあってね。

祈祷や薬で軽くなったり殆どは良くはなるんだけど、今でも時々病気にかかる人がいてさ。未だに原因がよく分からないから流行り病だろうってことなんだけど、理由が分からないから落ち着かないんだよ」


「そうだったのか。私がその原因を探ってこよう。

フィーに助けてもらったのに対価としてなにも持っていないからな」


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