第35話 蛙と蛇⑱

 デカブツの話と牧場主の話をまとめることにする。


 フロッガーの群れが縄張りにしていた池に突然、マッド・スネークがやってきたらしい。そこで両者の争いに発展し、フロッガー側が敗走することになった。


 以前から時々小競り合いをしていたが、実力は拮抗していて明確に勝敗が付いたことは無かったという。


 しかし、その日はマッド・スネークのいいようにされ、住処を追い出されることになってしまった。


 デカブツいわく、いつもよりはるかにマッド・スネークの数が多かった。物量に押され、フロッガーは為すすべもなかったと。


 フロッガー、マッド・スネークは共に水場でないと生活することが出来ず、生息域は被ってしまう。それで小競り合いが多いのだろう。


 ただ、両者には大きな違いが一つ。それはマッド・スネークの特性だ。


 マッド・スネークは住処の水場を自身の魔法で泥まみれにする習性がある。泥沼に変わってしまえばフロッガーは適応することが出来ないのだ。


 そこでデカブツは群れを率いて新たな住処を探さざるを得なくなった。その際に見つけたのが、ルーロー牧場の人口湖だったというわけだ。


 ルーロー牧場は東部の中でも規模が大きく、メメーを筆頭に様々な動物たちが飼育されている。


 人口湖は動物たちの生活用水としての役割を担っていた。その分、規模も大きいものとなる。


 デカブツは人口湖に目を付け、牧場主を脅迫して住み着いた。


 それからは良い生活だったらしい。牧場としてある程度の守りがあり安全、餌も献上されるものを食べればいい。


 争いの際に減ってしまった群れの総数も少しづつ回復していった。そこで余裕が生まれ、またマッド・スネークの群れと戦うようになった。


 殺したマッド・スネークを持って帰って牧場主に売らせることも思いつき、そのお金でさらに武器を買わせ、マッド・スネークとの戦いを有利に進めよう――と動いていたさなか、私たちがやってきた。


 ということらしい。


「つまり問題は……」


「マッド・スネーク」

 私の言葉をエリンが引き継いだ。未だワクワクした心が顔に駄々洩れではあるが、流石に貴族。楽観的ではいられないと分かっているらしい。


「マッド・スネークの大量発生は面倒くさいね……」

 

 エリンに言葉に首肯を返す。


 そもそもどの生き物にも関わらず、大量発生は生態系のバランスを崩す要因だ。しかし、マッド・スネークの大量発生は水質悪化の問題が伴う。


 セレジーが水の都と呼ばれる所以は、町の北にそびえる山脈からもたらされる清流にある。


 清流は血管のように張り巡らされた河川、水路としてセレジーに流れ込み、様々な恩恵を与えてくれているのだ。


 北の山脈から始まり、セレジーに散って、さらにロベリア王国中に広がっていく。王国の心臓とも言えるこの都で水質が悪化すれば、国中に多大な影響を及ぼしてしまうだろう。


 マッド・スネークの大量発生は看過できない問題だ。


「――お父様と王研に報告しよう」

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