唇のソレ

ゆらゆら共和国

プロローグ

 昨晩のサンマの塩焼きは確かに罪の味がした。


 でも、今朝食べたトーストとハムエッグは、もうトーストと、ハムと、エッグの味しかしなかったよ。私、ハムエッグはハムとエッグを分けてから食べるんだ。だって、ハムには醤油かけたいし、エッグにはソースかけたいじゃん。

 お母さんはそんなの変って言う。お父さんは黙って眉間にシワ寄せるだけ。

 まあ、私は分かってるんだ、私がちょっと変な奴だってことくらい。


 でもそれはあくまでちょっとってだけでさ。


 例えばガソリンのにおいが好きだとか、エレベーターでひとりになったらドアが開くギリギリまでボックスステップ踏んでみるだとか、ストレス発散のために部屋でAC/DCかけながらぬいぐるみ相手にプロレスごっこやる(最後は必ず私がパワーボムで勝つ)だとか、精々そんなレベルの変なんだ。思春期の女子高生だもん、当然だよね。


 ただ、あの時。そう、昨日の夕方、多分五時頃。

 殊勝にも学校の自習室で期末試験の勉強に励んでいた私は、なんというか……。


 かなり、かーなーり、変だった。

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