13 金縛り

 納棺師になって、僕は頻繁に夢を見るようになった。


 亡くなった祖父の葬儀の夢だったり、その日お会いした故人様の夢だったりした。






 その夜もそうだった。


 今日お会いした故人様が布団に寝ている僕の目の前にいた。


 金縛りだ。


 僕はまったく怖くなかった。

 普段からそうするように心の中で話しかけた。


 ――大丈夫ですよ、心を遺していかなくても。


 僕は全力を尽くして、あなた様をお見送りしましたから。


 あれ以上ないくらい心を込めてご納棺しましたよ。


 未練は、あるのかもしれませんが、あなた様がそれを手放してもきっと誰も責めません。


 安心してこの世を離れてください――。


 ふっ、と体のこわばりが取れた。


 視界には何の変哲もない僕の部屋が映るばかりだ。


 先程現れた故人様は僕の様子を見に来ただけで、僕に負の感情を向けていない気がした。


もしかしたら別れの挨拶をいただいたのかもしれない。






 ともかく目が覚めてしまった。


「げ、朝三時か。……二度寝するか、ネットで映画見るか。究極の二択が僕に突き付けられているぅぅ」


 毎度の如く布団の上でジタバタするのであった。





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