1 納棺師に就職する

 僕が納棺師という職を見つけたのは偶然だ。


 二十歳の夏。


 絶賛就活中に、とあるネット広告に目を引かれた。

「納棺師」という慎ましい明朝体の文字が広告画面に浮かんで消えて、妙に胸がざわついた。


 早速「納棺師」を検索して一番上の葬儀関連の会社のホームページを見た。


「納棺」とか「湯灌」とか「白装束」とか聞いた事はあるがよくは知らない単語が沢山並んでいた。


 何か凄そう、とぼんやり思った。


 そのぼんやりな気持ちが何となく加速して、納棺師の事務所を訪ねて面接を受けたら受かってしまった。


 こんなに行き当たりばったりな事をしたのは人生初だった。






 納棺師とは葬儀の前にご遺体を整え、棺桶かんおけに納める職業だ。


 葬儀社からの依頼を受けて葬儀場等の指定の現場に行き、ご遺体を入浴させ洗浄する湯灌ゆかんの儀、白装束などの最期の衣装を着せお棺に納める納棺のうかんの儀などを行う。


 そんな説明がなされる事は予備知識に入れてきたのだが、肌で感じる現場はやはり想像を優に超えていた。






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