七話 地底人の世界へようこそ 花緖嶺サイド 前編

 ここは……どこかしら……?

 さっきまで衣智瑞いちず君の姿を網膜に焼き付けていたはずなのに。

花緖嶺かおね、だいじょーぶ?」

 下から声が……五美かしら?

「大丈夫よ」

 どこにいるか分からない五美いつみに言葉を返す。

「あたしのクッション性能凄いでしょ?」

 ということは私は五美の上に乗っているということね。

「凄いわ」

 よくわからないけれど、五美がそう言うのならそうなんでしょう。

「それよりもここはどこなの? 衣智瑞君は? あと香峯子かねこもいないわよね?」

 五美から降りて辺りを見回すと、ここはどうやらトンネルのような場所だった。普通のトンネルではなく、地面をくり抜いたかのような、上下左右全てが土だった。

「お嬢さまと愛斗君は別の場所みたい。あたしお嬢さまの護衛なんだけどなあ」

「急いで合流しないといけないわよね?」

「いやあ、見たところ危険は無い場所だし、地底だから外から干渉はされないっぽいからだいじょーぶ」

 でも早く衣智瑞君と会いたいわ。私の気持ちは多分五美なら伝わるでしょう。

「花緖嶺が好きそうな物いっぱいあるよ。ほら、この壁から石みたいなの出てるでしょ?」

 なるほどそういうことね勿論衣智瑞君に会いたいわよ一刻も早く抱きしめられたいわねそんなことしてもらう度胸はないけどだけどこの壁から出ているのまさか古代超文明の『三つ数えてさんハイ文明』の遺跡ではないかしらああいい香り煎じて飲めば古代の味を感じることができるわねこれは削っていいのかしら。

「あ、削ってあげるね」

「いいの⁉」

「うん、許可とってるから」

 流石五美ね最高だわ。

 煎じた古代遺跡汁を飲みながら私は舞い上がったテンションのまま、五美とこの後そうしようかと話をする。一応話をしただけで、やりたいことは決まっている。

 地底世界の道を歩きながら私は確固たる意志を持って五美に離す。

「私は地底人の謎を暴いてからツチノコ探しをするわ」

「りょーかい。一応お嬢さま達の安否確認込みで連絡しないとだねー」

 五美がそう言うと、タイミングよくスマホから着信音が流れる。多分香峯子が連絡してくれたに違いないわね。

『五美、なにしてますの?』

 よかった。無事だと分かっていたけど、やっぱり声を聞くと安心するわね。

「おー、お嬢さま無事だったんですねー。あたしらは探検してますね」

『花緖嶺さんに替わってくださる?』

『あー、りょーかいです。花緖嶺ー、愛斗君も無事だって』

 五美が私を呼ぶ。探検したい私の気持ちが衣智瑞君に会いたいという気持ちに浸食されてしまう。これも悪くないわね。でも駄目よ花緖嶺!

「こんにちは、ごめんなさい衣智瑞君。私は五美と地底人の謎を暴きに行くわ。ついでにツチノコ探しも」

 そしてすぐに通話を終了する。危なかったわ、もし衣智瑞君の声を聞いてしまうと私は合流を優先してしまうところだったわ。

 でも私がやることは伝えたわ、もし衣智瑞君と合流して、衣智瑞君と地底人の謎を暴いてツチノコ探しもすることができたのなら、私はもうダメかもしれないわ。

「探検再開よ!」

「じゃーまずは聞き込み調査だね、すぐそこに地底人の街があるよ」

 なんですって⁉

「それは急いで行くしかないわね」

 地底人の謎を暴いてみせるわ、絶対に。

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