2-7
「むぅ……ついにきおったか!!」
全宇宙ヒーロー協会・地球支部の指令室の巨大スクリーンの前で腕を組んでうなっているレナード。
そして巨大スクリーンには、青空に浮かぶUFOの姿が映し出されていた。
「まさか、こうも早く侵攻を開始してくるとは……!!」
忌々しげにスクリーンのUFOを睨みつけながら吐き捨てるレナード。そう、UFOに乗っているのは、地球への侵攻を開始したジナビア星人たちだったのだ。
「状況はどうなっているかっ?!」
レナードがそう叫んでも、想定外のジナビア星人の急な侵攻に、指令室内は、右から左への大騒動となっており、誰もレナードの言葉に答えれるものはいなかった。
「ええいっ!! なんと情けないっ!!」
大きく舌打ちをするレナード。仕方ない、まずはこちらが動かせる戦力を把握せなば。
レナードは、あっちゃこっちゃに動き回っている職員の一人をとっつかまえ、
「今すぐにオペレータールームに連絡し、すぐに動かせるヒーローがいるかどうか確認をとれい!!」
と言い渡した。職員は敬礼をし、慌てて近くの内線電話を手に取りオペレータールームへと連絡をとりはじめた。
その結果を待っているレナードのそばに、別な職員が近づいてきて、
「支部長。報告がございます」
「なんだ?」
「その……申し上げにくいことなのですが……地球に向かっていたアーシェルの反応が、突如として消失し、追跡ができなくなりまして……」
アーシェルの反応が消失しただと? この間抜けが。消失どころか、この建物の中におるわい。
「それはもういい! 今はジナビア星人が先決である!」
大目玉をくらうかと覚悟していたのだが、予想外のレナードの言葉を受け、呆気にとられた表情を見せる職員。
「ボケっとしておる暇があったら、さっさと対応策のひとつでも考えてこいっ!!」
はっ、はいっ!! と敬礼し、慌てて立ち去る職員。その職員と入れ替わるように、オペレータールームへと連絡を取っていた職員がもどってきた。
「報告します!!」
「うむ。して、どうだったか?」
「その……今、ヒーローは全て出張っているそうです」
「ならばさっさと呼び戻せ!!」
「そうしてはいるそうなのですが、出張っているヒーローの中でも、一番近い場所にいるヒーローが火星付近にいるそうで……戻ってくるのには、最速でも半日かかるそうで……」
「ええい!! なんということか!!」
やはり、ここはワシがいくしか――――。決意を固めかけるレナードに、
「支部長殿っ!!」
という、モニター係の職員の切羽詰まった声が飛んだ。
「なにごとだ?!」
「ジナビア星人のUFOに何かが向かっております!!」
「なに?! すぐにモニターに映せ!!」
レナードの命により、巨大スクリーンの映像が切り替えられる。そして、切り替えられた映像を見てレナードを含むすべての職員が驚嘆の声をあげた。
ほけぇ~☆ とした気の抜けた笑みを浮かべた少女が、きゃぁきゃぁ暴れているミクをその手に吊り下げてジナビア星人のUFOへと向かっているではないか。
「みっ! ミク?!」
あの小娘っ!! いったい何をするつもりだっ!!
ざわざわとざわめく職員たちがざわめく中、その中の一人が、
「あ……? あぁっ!! あっ、あの少女!! エルミタージュの娘であるアーシェルじゃないかっ?!」
と指摘すると、指令室内のざわめきは最高潮へと達した。
「そ、そうだ!! 間違いない!! アーシェルだ!!」
「なぜアーシェルがミクを?!」
「いや、そもそもアーシェルはジナビア星人のもとへと向かって何をするつもりだ?!」
職員たちは当然の疑問を口に出しあい、ますます指令室内の混乱に拍車がかかる。
「静まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~い!!!!」
突如として響くレナードの一喝。静寂する室内。
「諸君――ここに至っては、議論の余地はない。これより、このレナード=アレクサンドラ=クラスノヴァ、ジナビア星人のもとへとむかい、我が娘であり、全宇宙ヒーロー協会・地球支部・広報PR部長であるミク=アレクサンドラ=クラスノヴァの救助の任につく!! 異論はあるかっ?!」
職員は静寂をもってレナードの問いかけへの答えとした。現状では、最早そうするしか方法がない。
「それでは――後は頼んだぞ、若人たちよ!!」
ばぁん!! と指令室から勢いよく飛び出すレナード。
待っておれよ、ミク――!! すぐに、お父さんが助けてやるからな――!!
レナードは疾風が如き勢いで全宇宙ヒーロー協会・地球支部のビルの屋上へと出て、そしてすぐさま青空の中に浮かぶジナビア星人のUFOへと向かって飛行していくのであった。
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