氷上の殺人

@Eto_Shinkuro

第1話

 氷の上での殺人。場所は、真冬の北海道の湖で起こった。殺されたのは、サラリーマン。湖の上に、死体と、凍った血の赤色が、広がっている。氷の上で殺されたと推察されるのは、もう一人の、血痕も、べったりと残っているから。包丁が、二つあるから。警察は、犯人を捕まえないといけない。血も、凶器も残っているのだから、犯人の特定はすぐだろうと皆思っていた。


 「この人は、存在しません。2人共。」


 鑑定の結果から導き出された答えはこうだった。戸籍にない人間同士の殺し合い。


 「戸籍にないってことは、税金も払ってないってことだろ。」


 そうだけど、その話は始めに出てくる視点ではない。でも、確かに、警察が関与し、何らかを解決すべき問題なのか。

これを端緒に意外な事実が浮かび上がってくるかもしれない。


 でも、放っておくには問題がある。葬儀もできない。


 「だれがこれの後始末するんだよ。」


 確かにそうだ。こうゆうときは、こういうのを担当する課がある。県警察捜査5課。面倒ごとの後始末をする課だ。この事件ごと、その課の担当となった。ここからは、5課の人間にバトンタッチだ。



 「そもそも、この事件解決する必要あるんですかね。死体も適当に燃やして、インドでは燃やしてガンジス川に流してますし。それこそ、共同墓地にでも放り込んで終わりでいんじゃないですか?」

 「一応、捜査だけしておけばいいんだよ。報告書書いといて、それで終わりだ。」

 「やっぱりそうですよね。だれか、迷惑かかったわけでもないですし。ただ、犯人が今回だけの犯行じゃないなら、話はかわってきますけどね。」

 「戸籍がないんじゃ、どうしようもない。」


 我々は一応、事件現場に行くことにした。真冬の北海道。クソ寒い。

「あぁあぁ、これは、春になって氷が溶けて、わからなくなって終わりですねー。現場周辺に特筆した別の痕跡等もなし。あたり一面雪景色。犯人の血痕は・・・途中でなくなってますね。服を脱ぎ捨てて。頑張って止血したんだな。現場調査終わりー。」


 ずいぶんと、適当な調査だ。


 「一応真面目に、調査はするんだ。」

 「そうはいっても・・・」


 その時だった、ドカンと音がした。


 うそでしょ。氷が割れる。足元の氷にヒビが入り、ショックで足は動かない。凍り付いた視界の中で、氷が割れていく。

 「死ぬ」


 そう頭によぎった。はっとして、周りを見渡す。陸地まではおよそ10m。なんとか、泳ぐしかない。少しでも走ろうにも、下は氷だ。滑ってそれどころではない。ぼちゃんと湖に起きた。腐っても警察官。着衣水泳など余裕だ。陸地までなんとか、たどり着く。冷たさでちぎれそうな指でなんとか岩を掴み、上によじ登る。


 ほっと一息つき、周りを見渡す。そうだ、上司は・・・。


 上司も、陸地によじ登ろうとしていた。10mほど先である。だが、その陸の上にもう一人、人間がいた。肩に包帯を巻いている。大きな、槍を持っていた。上司の表情は、上を向きながら、固まっている。男は、槍を上司の額に一刺しにした。


 「うそでしょ。」


 上司は、湖に沈んでいく。タイタニックのジャックのように。当然、私の存在もばれている。私も殺される。そう思った。無我夢中で走った。さっきは体が固まったけど、今は、死を目前とすると体が動く。いくらでも。雪の中、自分でもどう動いているのかわからなかったが、走った。逃げ切った。車は、現場においたまま。警察署に戻る。


 「上司が、殺されました。おそらく同じ犯人に。」


 これは、もううやむやにしていいことではなくなった。捜査が、本格的に行われる。

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