#47 否定

 私が諦めない限りはあのNo.sとか言う狂人が襲ってくることになっている。

 その事実に遺憾とし難いがどうであろうと、目の前にくる敵は叩く。

 そしてあの女神の存在全てを否定する。

 簡単に言えば認めないって意味だ。分かるか?認めないんだ、一切を。例えそれが誉められていないことだとしても認めはしない。納得しない。理解はできるけれど、しないのだ。


「否定するのもいいけど、まずは飯を食うことが先決かなぁ」


 ぼやきながら薪に火を焚べる。

 焚き木から放たれる煙がモクモクと舞い上がってきて、こちらを襲いにかかるが、素早い動きでそれを回避行動を取りつつ辺りにあった川で釣れた魚を焼く。

 なんの味付けもできないが食えないよりマシな筈だ。

 それにちょうどいい頃合いだった様でまんまると太っているこのビジュアルに感動の生唾ものだ。

 官能的なまでの美味を堪能させてもらうこととしよう!

 んんまぁ…………!身がほくほくしてて私の中の日本人としてのDNA……ないけど、それが大喜びしてやがる!米が欲しいところだなぁ。ライスがあればあとは完璧なんだけどな〜。ナーロッパじゃないからそんな高望みしても何もでないけど。

 しかもこの星忘れちゃいないけど、闘争の絶えない世界っていう感じだから、それも相まって絶対食物全般戦争用の干し肉とか、食えたとしてもジャガイモでかさ増しされたもんしか食えるものがないし……戦争末期の国の状況なんか最悪に決まってるから、干し肉とかも高騰してるとなると、食える選択肢が川の幸一択じゃないか?

 山の幸は山破壊とか当然の様に行われてるから、そちらはクソな状況だしで言うことないぐらいには闘争に溢れかえった世界であることが再確認できる。

 早くあの女神ぶっ倒さないとやばいことにしか向かわないんじゃね?

「そうだ、女神倒そう」……そうだ京都行こうみたいな感じでスローガン立てて倒さなければならないな。

 ……目の前から空間を捻じ曲げてやってくるNo.sの一人が見える。

 あっ、そこ焚き木のあるところだけど大丈夫か?


「アチ!アチチ!これ的のトラップカァ!?あつあつあちあちアチアチ!!!くっそ熱いぞオイ!」


 中高年みたいなおっさんが熱いとぼやいている。トラップじゃないけど、トラップになっちゃった。

 絶対空間属性使う奴が悪意持ってやっただけだろ。

 私悪くねぇし。ただ焚き木してただけだし。


「オイオイオイ!邪神っていうのはこんな搦手からめて使うやつもいんのかヨ!冗談きついぜオイ!」


「…………私はここで飯食ってただけなんだけどな。お前んとこの空間属性使うやつのいじめだろ?なんか、お前可哀想だな……」


「おい!あのアマ……わざとここに送る様に仕向けやがったのかヨォ!全くとんだ惨事になるところだったじゃねぇかよオイ!」


 そういうと!目の前の奴は煙草に火をつけて一息つく。

 紫火煙がこちらに漂ってきて、前世の「まーるぼうろ」を思い出させる感じだ。

 私成人してたけどそういう類のもの一切吸ってなかったから新鮮っちゃ新鮮なんだけど。


「悪いね、邪神さんヨ!この一服を決めねぇと戦いに集中できねぇぐらいにはベビースモーカーなんでネェ、この俺は。…………フゥー、じゃ自己紹介させてもらうゼ。No.s fourteenのデススモークってもんダ。見知りおく必要はないゼ……この戦いでどっちかが死ぬんだからナァ!邪神マリさんヨ」


 こちらの情報は筒抜けだろうし、わかってはいたが、煙を操る能力者ってところじゃないか?割とわかりやすい名前をつけるのが好きなんだな?

 まぁ、私は善人ではないが口上の間を待つぐらいには常識人だから、待ってやったけどさ。

 あと、その足についた火どうすんの?


「ふふふ、悪いネ。こんな煙の多い中での戦闘になんかなると思ってなかったからヨォ。秒殺で終わっちまったら惨めなもんだゼ……!」


 だから、その足元についてる火どうにかしないのかって。

 お前の体ジリジリと音立てて燃えてるよ?

 最悪そのままだと体の半分がステロイドになって死んじまうぞ?


「あー……まぁ、あれだ。この体についている火はこのまま使わさせてもらうゼ?どっかの漫画のコックじゃねぇけど、火属性魔法には耐性があってネ……こんな程度の炎じゃ俺は死なないってわけサ」


「なら気兼ねなく殺ってもいいってわけだな?私だって簡単に殺されるほどやわじゃない。さっきうさぎっぽいやつ倒したしな」


 そう言った途端に火属性の魔法がこちらに向かってくる!

 亡霊の様な光と火はジャック・オ・ランタンを連想させるかの様にこちらに向かってくる。


「《魂之火ウィル・オ・ウィップス》って言う技なんだガ……これは特別性でネ。対象者を燃やし尽くすまで燃え散らかス、謂わば愛に近い様な火なのサ。恋焦がれてやまない少年の様に燃え尽くすのサァ」


 成程、対象を燃え上がらせて死滅させるとは理に適ったことをするものだ……!

 当てて仕舞えばそのまま決着、死に至らしめるまでになると、こいつとの戦闘は気が抜けないものだな。とはいえ、私の体はことわりから外れている。

 体を不燃性のものにしてやると……ほらこの通り。火があたっても燃え広がることなく消火されていく。

 しかし、そんな手が通じるほど今回の敵は柔じゃなさそうだな。

 これは苦戦を強いられているものだと直感が告げている。

 さぁ、始めようか……戦闘を!

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