第七章 長生

#X3 鳥瞰

 我は『ナイルニャルラトラホテップ』またの名を『フィアー・ディサポイート』と云う者だ!

 名前の話などどうでも良いのだ……。

 我の名前は沢山あってキリがないからな!

 デスワールドとの戦いを眺めていることしかできないが、我もマリの応援団長ということで、ここは一つ鳥になった気持ちで辺りを見廻すようにしようではないか!

 …………むっ?来客か。珍しいな。奴が表に出てくるのはもう何千年も前だというのに。

 彼奴きゃつもまたマリという存在を魅入ったものよな。


「やっ!邪神の中の邪神。『ナイルニャルラトラホテップ』。君と直接会って話したかったんだ。あのマリをどんな存在にするかは自由だけど、それでも僕個人としては気になってね」


「…………初めまして、の方が正しいかな?『原初之神トゥルー・オリジン』よ。遠路はるばるご苦労様なのだ」


「遠路はるばるとは……僕たちにとって空間という脆い存在は、最も簡単に通れるだろうに。君のほうこそ、表世界に出るのは久しぶりなんじゃないかな?」


「確かにそうよな。我々は神だ。だから胡座をかいて許される……というわけではあるまい?あの女神をのさばらせておく方が問題という物よ!」


 あの最悪の女神『ワン・オブ・クイーン』をのさばらせておくわけには行かぬ。

 何故ならば、あの存在はこの星を玩具おもちゃ箱として楽しんでいる存在。

 そんなものが台頭してきたら、寝るに寝れないではないか!

 だから我らがこうして一同に介しているわけなのだから。


「そうだねぇ。あの存在をこの世に解き放ってはいけないのは同じ意見かなぁ。あれは世界の害悪だ。そんなものをのさばらせて仕舞えばすぐに世界は崩壊するだろうね。だからこそこうして魔力を使って鳥瞰しているわけだ」


「その通り…………マリよそこだ!行け!邪神流の奥義を見せてやるのだ!」


「ははは!僕も結構俗っぽいけど、君も結構俗っぽいんだねぇ。なんだか親近感が湧くよ」


「それもそうよな!我らは最初に生まれた神と邪神だから、親近感も何も兄弟の様なものよ!今まで関わらなかったのは均衡を崩さぬため……とは言え何も連絡をしないのもあれと思っていたところだ!500年前にな!」


「神のいけないところだよねぇ。ちょっと思い立っただけでも数百年単位でかかるんだから、まぁ時間の流れが人間のそれとは違うから、しょうがないと言えばしょうがないんだけどね」


 トゥルー・オリジンの言う通り、我々神の時間の流れは人間のそれとは違いゆっくりと流れていく。

 妖怪なんかもそうだが、人間とは格の違う生物であると言うのはそれだけ暢気のんきなのだ。まぁそれはしょうがないだろう!はーっはっはっはっは!

 喋ることをやめ、画面を食い入る様に見やる二柱の神。

 ラッシュが決まってやりおったわ!と思ったら邪神デストロイのお出ましか……やつは我とも少しばかり遊ぶことができる稀有な存在だった故に、こんなヒョロっちい狂人の味方につくとは……それでは行かんぞ。そっち側では勝てるものも勝てないと言うものだ。

 しかし状況は劣勢で、あの岩をどうにか攻略せねばいけぬよな。

 あれは少しばかり大変だが、目で見て判断してから動けば簡単に避けることができる。

 ホーミング機能は確か付いていないと思ったが、ここ何千年かで身に付けたのやもしれぬな!

 まぁ、そんなことは沢山あるだろう!


〔魔人マリの意見を聞き届けました。確認します……………………成功しました。邪神・真理マリの誕生です。《死之余興デスカニバル》の始まりと共に、邪神としての格を得てより強力になります〕


 おぉ!邪神として覚醒しおったわ!

 目を離した隙にトゥルー・オリジンがいなくなってすぐに戻ってきおったわ!


「これはこれは素晴らしいな!よもや真理マリが邪神になろうとは!これは素晴らしいぞ!今すぐ宴会でも始めたいぐらいだ!」


「彼女は自分の力でこれを成し得たんだよねぇ。素晴らしいよ、本当に賛美をするに値するね!僕はいずれかはなるんじゃないかなって思ってたけど、君も本当は邪神になるって言う不確かな確信があったんじゃない?」


「ふふふははははは!そうかも知れぬな!確かに我はそう思っておったよ!不確かな確信というのも的を射ている!これで寄せ付けるものは皆粉砕!玉砕!大喝采!というものだ!」


 本当に面白いものだ!

 あの弱々しくて女女おんなおんならしかった男のが、よもやあんな金髪ブロンド碧眼ロリになろうとはな!

 あの女神に少しだけほんの少しだけ感謝をしたい気持ちになったわ!

 転生させなければそこで終わっていたかも知れぬしな!

 我はやはり正しかった様だ!それを証明してくれたのは他でもない『邪神・真理』というわけだな!

 その手で掴み取った力、存分に使うが良いぞ!


「これは彼女の勝利は揺るがないものになっただろうねぇ。この原初の神を納得させたんだ……誇ってもいいよ!」


「まさにそうよな!我もそう言おうと思っておったところよ!先に言われるとは、いけずな奴だ!はーっはっはっはっは!」


「テンションが高いことこの上ないけど、まぁ確かに君の言う通りだね!それだけの偉業を早数ヶ月でやってのけるなんて、他の魔人では到底成し得ないものだったろうね」


 冷静に分析し始める原初の神は中々にドス黒い笑みを浮かべておるわ……!

 我もあの戦いに混じりたい気持ちもあるのだが、そんなことをしてしまっては真理の不況を買うものよなぁ。しょうがないから今日のところは我慢してやるぞ!

 それにしても実に面白い戦いをする。

 理を捻じ曲げてこう言った回答をするとは、逆張り……?と言う精神が強いのだろうな!

 昨今ではそう言ったもののことを逆張りキッズと呼称するものらしい。

 中々に的を射ているではないか!逆張り……うん逆張り!使い勝手の良い言葉であるな!

 自分の道でいい、成し得ることを成せ!我が彼女に送る言葉はそれだ!


「どうやら、決着らしい。彼女の魔力は大覚醒するだろうね。あれだけの邪神の欠片を集めたら、もうそのまま突き進んで仕舞えばいいと思うよ……!本当に面白い存在だよ、彼女は」


「…………むっ?どうやら真打ちの登場らしい。邪神デストロイすら前座であったか!敵ながら天晴あっぱれよな!邪神としての格が優っているマリか、それともあの改造に改造を重ねたデススペルと言う青年か。二人が魔力を交わして分かつ時、どう言った化学反応を見せるのか楽しみでならんぞ!」


 そう、戦いはまだ終わってはいない。

 多分これが山場というやつであろう!

 さぁ、誰にも負けることのない様にな!我が存分に鍛え上げた才覚を見せてもらおうではないか!

 まだまだ観る所はある様だ!

 今度は近くで見てみることにしようではないか!

 原初の神もそう思ったのか、我とトゥルー・オリジンは立ち、そしてより近くで観戦することになるのだ!

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