#44 残像
残像を残してこちらにズンズン近づいてくるデススペルの動きは見事な物だった。
こちらを殺そうときていると言うことが丸わかりでなんとも言い難いものがある。
花園はいまだに消えることはない。
幻痛を通して吐き気とともに血も吐き出していく。
くそっ!こうなったら、結界を決壊させるしかないだろう。
(洗練されたる魔法の極み。魔力を極めしこの邪神に知恵と勇気と策謀を与えたまえ。
《
《破壊朧月》を放った途端に花園そのものを、結界を破壊して全てを打ち砕く。
最高の技を最強の技でぶち壊していく。
流石に驚いたのか、デススペルの顔に動揺が現れる。
自分の中ではこれが最大の結界に対する対処方法だ。決定的に敵にダメージを与えるのではなく、結界そのものをぶち壊していく。
神の御技とも呼べるべき代物だ。
「成程、これを残していたと言うことは、わたくしの結界を確実に破壊するためのものでしたか……!流石に生まれたての邪神にそこまでされるとは思いませんでした……やりますねぇ!」
「これで終わりだと思うなよ?《破壊朧月》は結界を破壊するだけには止まらない……精神を内側から見てみろ。それで答えは出る」
そう言われた途端にデススペルの内面、
血が噴き出て噴き出て止まらない。
何が起きたのかわからないと言うような表情だ。
ネタを明かすことはしない。結界とともに精神を攻撃したまでのことだ。
これは最高の技で最強の技……素晴らしいだろう?
スマートに攻撃すると言うのはこう言うことだ。
これぞ完全無欠の必勝技であるとも言える。
「ふ、ふふふっ。まさかこれほどまでとは思いませんでした。知覚できない攻撃とは恐れ入ります。少々血を失ってしまいましたが、戦闘は続行可能であります!さぁ、ダンスを一緒に踊りましょう……!」
格段に早くなったデススペルが、最初の残像を残す行動よりも、もっと残像が増えてどれが本物か見つけにくくなる。
何故これほどまでに強いのか、甚だ疑問になるが、それでも自分はこの残像を打ち破るしかないのだ。
狂人のトップを張る男というのは、孤高の存在であるとは思っていたが、何か妙な違和感がつきまとうのも事実だ。
ははは!楽しいなぁ!このまま戦闘に溺れてしまいそうになるぐらいに二人の闘気が高まる。神殺しをなせるものなら成してみろ!
私はお前の高い壁として目の前に存在してやるから。
もうラッシュを互いに喰らわせる。ボコボコにされてボコボコにして、互いの顔が変形するが、すぐに二人とも完治してパンチの横行が始まる。
消しとばしてやると思いながら、両方がパンチを繰り出しているので、衝撃波で岸壁が抉れていく。
プリンをスプーンで掬うように簡単に崩れ去っていく。あの岸壁は
プリンを崩していくかのように木々や岩を粉々に、あたりの惨状はとても酷いものだろう。
なんだ、この戦いは……面白くて面白くてにやけが止まらない!
「貴方もまた戦闘狂なのですねぇ!わたくしも本気で相手にできる人間がこの地に存在していようとは思いませんでした!最高に胸の高鳴りを感じさせます!!ははははははははは!」
「お前は強いよ……果てしなく強い。しかし私とてこの戦いに勝ってあの駄女神に一撃をお見舞いしてやるんだ…………!どちらが死ぬまで終わらない戦いをここに!決着をつけてやるよ!」
「終わりませんとも!最高の戦いは長く続けたいと思うのは私のエゴですが、
そんな軽口を叩きながら、私たちは戦いの手を止めることはない。
終わらない闘争というのはただただ疲れるが、しかしながらこの戦いには終わりがあるんだ。終わりがあると思うことこそが、私の戦いの軸にある。
戦闘というのは決着してこその戦闘だ!
戦闘の中で生まれるのは憎しみだけではない。友情を育むことでもある。その友情はすぐには消えない……しかし相手が死ねば友情なんてものはない。
殺すのが惜しいと思ってしまう。
私は邪神だ。
邪神が真正面から狂人に戦い勝つ余地など、ないに等しいだろう。
児戯をしている幼児と悪戯を鮮烈に行う大人とでは違いがありすぎる。そうだろう?それは自明の
その女神を守護するのであれば殺すしかないだろう。
デススペルはもうボロボロ。自己治癒が働かなくなってきたのか、満身創痍となっている。
「ふふ……ふふふ。私は女神に使えて良かったと思っております。こんな胸踊る戦闘をさせていただいたのですから……思い残すことはもうありません。さあ、人想いにやってください」
残念だ。
戦いは必ず終わる。
お前の憂いの表情はなんなのかわからないけれど、それすらも断ち切るよ。
バイバイ、戦ってくれてありがとう。
《
…………!?なんだと?お前は……お前はこの戦いを邪魔するのか…………女神ぃぃいぃいいいい!!
「相間見えるのは久しぶりですね、邪神真理…………ぷぷっ!貴方は可愛らしい様相に変わって……本当に私を楽しませてくれますねぇ(笑)面白い存在であるということは見てわかります……金髪ブロンド碧眼ロリになってしまって、御愁傷様です……ぷぷ」
最悪の邂逅は、始まったばかりだ。
初めて嘲笑われた時のように、不快感をばら撒きながら。
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