#42 演劇

 序曲は灼然とせず、演劇の舞台となるのは今からだったというのは驚きだ。

 自分ですらびっくりする。

 あの邪剣をまともに喰らったら本当に死ぬのだと思い、避けていて良かったと改めて思う。

 危機察知能力に長けていて本当に良かった……心臓がバクバクいってるわ。

 あの岩は何度も受けると体に負荷がかかる仕組みになっていて、最悪に目覚めの悪い攻撃だというのが第二撃目にして分かったというのがやはり釈然としないというのが私の感想なんだけど、どうしようかなぁ。


「岩の次は隕石なんてどうじゃ?

隕石流星落下メテオシャワードラグーン》!」


 ……あれはやばい!

 魔力の塊じゃなくて、本物の隕石だ!大気圏に突入した隕石は火を纏ってこちらに降り注いでくるのだ……!

 素早く回避行動に出ると、二撃三撃を交わしていく。

 軌道を変えて彼方此方あちらこちらに降ってくるシャワーを掻い潜って、抜け出そうとするも、射程圏内なのかずっとこちらを標的にしてきて中々抜け出すに抜け出せない。

 プールの中に沈んで息継ぎができないぐらいの状態になると、むず痒くして仕方がない。

 自分では抜け出せないのかというぐらいに強烈な攻撃だが、ことわりを少し破壊して次々に隕石を避けていくものだから、デストロイも楽しくなって、ついついこちらを標的に隕石を落としてくる!

 熱いねぇ……!

 悔しいけど、今のままだとこれを避け切るのは難しいかもしれないな……だったら理を越えればいい。


(世界の声に願わん。今からいうのは世迷言よまいごとなどではなく、真に願うものからの進言だ。

邪神生誕デス・レイ》)


〔魔人マリの意見を聞き届けました。確認します……………………成功しました。邪神・真理マリの誕生です。《死之余興デスカニバル》の始まりと共に、邪神としての格を得てより強力になります〕


 祝福を受けて、私としての邪神の格が上がり全ての攻撃をさっきの倍ほどの勢いで避けていく。

 瞬く間に進化していく私に驚きを隠せないのか、隕石の降る量はさっきよりもより多いものになっていたが、邪神の力で全てを打ち砕いて着弾させる前に消し飛ばす。

 ぎゅっとして……っと、これこれ。私の思いのままに魔力を操ることができるな。

 最高にハイってやつだぜ!

 素晴らしきかな魔力!

 これこそが邪神真理ってもんよ!名前もなんか前世の名前だし、マリだしで結構気に入ってる。

 いい名前つけてくれてありがとう、トゥルー・オリジン!


「なんじゃ、この魔力の高鳴りはぁ!こんな生まれたての邪神にできるわけがなかろう!この邪神は強烈な真理に届きうる…………!」


「さてさて、よくもやってくれたなぁ!邪神デストロイに引導を渡してやるよ!(定理・摂理・真理・心理を超越せしめん。暗闇の荒野への道標を光らせて見せよう!《真理斬滅マリ・スラッシュ》)


 真理を壊しながら定理を破壊する。

 定理を壊して摂理を覆すこの技は、空間の属性を司る斬撃。

 滅裂な言葉を繋ぎ合わせた世界を超える情理の破壊。

 デストロイはこれを喰らってタダでは済まないだろう。

 邪神デストロイの腹をぶち破って、再生などさせない。この摂理を破壊する剣戟は最高の一撃とも呼べるものだ。


「この、儂ガァ!なぜこんな木端こっぱ邪神に負けるなどとはぁ…………!嘘だ、嘘ダァ!!!!」


 斬滅すべし邪神よ。

 静かに眠れ。

 私が貴様の邪神の欠片を貰い受けよう。

 破壊を司りつつも、この世の真理を覆して見せよう。

 じゃあな。楽しかったよ、お前との戦い。

 全てひっくるめて、私は私だから心配するなよ。

 悲痛そうな顔して逝くな。最後は晴れやかにだろ?

 静けさの中に、拍手が鳴り響く。


「素晴らしいですね、邪神真理。まさかこれほどとは思っていませんでした。ようやくわたくしとの戦いの挑戦権を得たことになります!さぁ、戦いましょうか。戦闘を!競争を!」


 まだ私の戦いは終わっていない。

 この男を倒さない限りはまだ終わらないだろう。

 さぁ、もう一踏ん張りだ。

 敵に塩を送るつもりはない。

 お前を殲滅する。

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