#41 灼然
それは演劇に等しかった。
何かを名目に踊っているような気がしてならなかった。
手のひらで踊らせられているわけじゃない。自分の意思で踊っているような気がして不思議な感覚だった。
極貧時代の図書館で、昔見たソード……まぁそれに近いものがあった。
あれはマジで最高だったなぁ。自分が自分でないような感覚に落とし込まれるって言うのは小説作品のいいところで、不思議な感覚になったな。
「中々やりおるわい!貴様のその踊っているような動きに魅了されるところじゃ!
これが私の秘技、秘めたるものと書いて秘技。
《
何かとつけて作品の中に作品を落とし込むと言うのも中々乙なもので、作品とは違う動きをしてみると言うのも最高に楽しいものだ。
戦いの中で精神力が磨耗すれば、戦えるものも戦えないだろう。
そう思っての演劇、これこそが剣舞!……私剣じゃ無くて
なんで名前にソードとかつけるかな。欲しくなっちゃうじゃん……武器がね!
魔力で棒を形成すると、動きが一気に加速して、敵の胴体やら顔面やらを撃ち抜いていく。アクセルとは踏まないとエンジンに伝わらないと言うのは当然の権利……いわばニコイチなのである。
「これが私の真骨頂、武器を用いての戦闘は久々だが、その腕は鈍ることはないぞ。魔人の力をとくとごろうじろ!」
思考をやめないまでも、着実に攻撃の回数を増やして打撃の連打。どこぞの震えるハートを醸し出しているかの如くだ。
私の舞は気に入ったか?なら気に入ったままそのまま死ね!
おまえが最後に収める顔が私であることに誇りを持つがいい……そのまま眠ってくれるとありがたいんだけど、そうは問屋が卸さないんだよな。
邪神の耐久力はとてつもないほどにあるから、自分では中々手がつけられなかったが、修行の中で攻略方法なども見つけ出して編み出した。この邪神特化型の攻撃方法はさぞ痛いことだろう。
そのよく分かんないツラも歪みに歪みまくっているじゃないか。
だが、弱音を吐くようなものは邪神の中にはいないだろう。
「では、次の技を見せるとしよう……!《
巨大な岩石が降りかかり、その圧力に圧倒されて岩に押しつぶされそうになる。
岩を押し除けようとするもどんどんめり込んでいく。
動かない岩を一生動かしているような、斉天大聖にでもなった気分だ……!誰か天竺に連れて行ってくれる和尚さんはいないもんか……!
文句を言っても仕方がないのでなんとか押し返そうとするが、筋繊維がぶちぶちと音を立ててキレていく感覚がする。
擦り切れて擦り切れて、やばい……!
筋繊維を超速再生で回復させていき、そのまま脚力を活かして押し返す!
「なんとっ!この岩を押し返そうとするか!最高じゃなぁ!貴様はこの邪神デストロイと肩を並べる強さだといえようぞ!」
押し返した岩をなんと腕で軽々と砕くと、信じられない行動に出た。
《邪岩石》を大量に何回も投げてきやがった!重量に耐えきれずに減り込む足に、悲鳴をあげ始める腕と足の筋繊維に、目が眩む。
これをまともに何回も喰らっていると、こっちが持たなそうだ……!
(《
ここからは私も本気で行かせてもらうぞ!邪神の威を狩るキツネではないと言うことを見せてやる!
額と両手に目が発現し、全ての時空を超越する。
岩を猛烈のラッシュで打ち砕いていく。
止まった時の中で動けるのは大体30秒ぐらいだが、この岩を打ち砕くに十分な秒数だ。
私の本気を喰らうがいい、邪神デストロイ!
本気の本気でこの岩をぶち壊す!
「一瞬時が止まったと思ったら、儂の魔力を込めた岩を物の数秒で破壊するとは……!しかもその目!それはメデューサの邪眼かっ!よりにもよってその邪眼とは!
「私の攻撃はこんなもんじゃあないぜ!うらぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあああああ!!」
防御をしようとするが裏に回り込んで背骨を砕く勢いで猛ラッシュ!
これでくたばってくれるといいが、そうは行かないだろう。
時が止まっている間は静寂だが、時が一度動き出すと強烈な音が鳴り響きバキバキと音を立てて崩れ落ちる。
邪神の核が見え隠れしているが、即回復されて一向に攻略の手立てが掴めないでいる。
膠着している戦闘はこんなにも焦燥させる。
私の攻撃はこんなもんじゃないだろ?
こんなもんで済まないだろ!
邪眼の力をふんだんに使って石にするが、すぐにひび割れて回復をされる…………っ!
回避行動をすると、巨剣を突き出して地面が裂けていく。
「儂にこの剣を抜かせるとは、中々やりおる魔人よの。この邪剣デストロイヤーは存在そのものを破壊させる最強の剣よ……!」
戦いはまだ終わらない。
終われない。
酷い戦いはまだ序曲に過ぎないのだろう。
永久に生きるこの邪神の核を必ず潰してやるからな……!
さぁ……存分に戦おうか。お前の腹を満たす為だけの存在じゃないことをこの舞台で証明してやるからな……!
灼然としない戦いの始まりは演劇の序曲であるのだった。
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