#29 禍根

 この戦いは、太古の時代で行われていて、色々な生物が生息しながらの戦いになるため、他の生物が戦いに紛れながら来るということの裏返しになる。

 なんてことだ。あの生物たちがこちらに牙を剥き、攻撃を加えてきて、なかなかデスティアに対しての攻撃を続けることができない。

 突破の糸口はないものかと、探して回るが戦闘中につきやはり見つけることなどできないでいた。

 くそっ、このままだとそのまま押し切られてしまうことになるという焦りから、うまく攻撃を出すことができない。

 こんな時には、やはりに限るだろう!


(集いし花の火の精たちよ、遊び回りて大きなキャンバスを飾り散らせ!

花火流星群スターマイン》!!)


 あたりに散らばる花火がまるで遊んでいる子どもたちのように、跳ね回って踊っている。このダンスはいわば火のイリュージョン、幻影とも呼べるものなのだが、本当に触れたら熱く燃えたぎるぐらいの熱で溶かすことになる。

 これが私だけの花火流星群なのである。これで早々と近づけないし、デスティアにも火傷の跡がついてきて、焦げ落ちて部分的に無くなる。


「ふむ、これが魔力の力というやつなんですねっ!おれ、とても興味が湧いてきました♪なので、ここからは少し本気を出すとしましょう!

本気と言っても本気マジと書いて本気の方の本気ではないので、ご注意くださいっ!」


 そういうと一気に加速して迫ってくるデスティア。それを軽々と躱して、踵を返して拳を繰り出す。

 今回は試しに、魔力で作り出した棒を用いて戦闘を行おうと思っているので作り出し、ぐるぐると振り回してマーチングのように規律のしっかりとした出立ちでデスティアの前に立ち塞がる。


「それは……おれを舐めてるのでしょうか?うーん、わかりませんっ!まぁ、そんなのマルッと無視して、消しちゃいましょう!潰して潰して、思わずぶっ壊してしまいそうです。あぁ、早く肉をもぎ取ってもぎ取って、壊しちゃいます!」


 さらに勢いが速くなるデスティアが、こちらに突っ込むと同時に棒を器用に使って、力を別の方向へ流す。

 こちらに向かっても流して、殴りかかったところで流して、魔力でこちらを潰そうが流していくと、だんだんと攻撃のリズムが狂い出してきて、自分でも実力の半分も出せないような感じに陥ってしまっていると言うことができる。

 これは合気道の極意でもあり、相手の力を抜いて自分の力にするという、自分なりの解釈ではあるのだが、そういう武術をオリジンのところで修行を行った。

 必ず使う日が来るというので、試してみたところ思いのほか自分の闘い方にハマってしまったのだ。

 思わぬ伏兵だった。こんなにも自分が合気道を好きだったとは……。こんなにも強いのなら、最初からやっておけばよかったと後悔するが、後悔は先にはできないのだ。


「なんか、むかついてむかついてぶっ壊したくなっちゃいますっ!これはひどい……何かの間違いですっ!」


 自分の攻撃が通じないことがよほどショックだったらしく、自分でもうまく表現することのできない苛立ちを感じているようだ。

 このぐらい全員に効果があればいいのだが、線型を変えてくるやつも当然いるわけで、それがハマるやつも限られてくるだろうが、中々に強い戦法ではあるな。

 これなら実戦でも使えそうだ。そういう確信を持って、相手にかかると更にプレッシャーを与えることができる。

 禍根の残りそうな戦闘スタイリングだが、禍根など残さずに魂を吸収しなきゃいけない使命がある。

 必ず魂は吸収しなければいけないのだ。

 ほら、まずは肩から足にかけて腕!この攻撃は通じただろう。相当に苦痛を滲ませた顔になった。棒術をしていると、あいつを思い出す。

 元気にしているだろうか。ちゃんと真っ当にいるだろうか。天国で見ててくれよ、お前なら見守ってくれてるだろうから。最初の仲間のことを思い出しながら、棒を振るい勢いを増す攻撃が、飛ぶ鳥を落とす勢いで放たれる。


(来たれ、万物の長。今この魔力を使い斬撃を繰り放つ魔人の、魔神の神具を解き放たん!《召喚:神器如意棒サモン:ゴッデスアーティファクト》!)


「これでもくらいな!まともに受けたら消滅するぞ!お前の魂、しっかりといただく。私の糧になって、狂人という重みから解放してやる!」


「重荷になってなっていませんっ!おれは、おれなんですっ!だから、だから勝つのはこのおれなんだよ!」


 本性が出てきて、こちらの勢いを押し返してくる。


「魔力の行使はこうやってするんだよぉ!来な!おれの魂の波動を感じてみやがれ!《魔力解放》!邪神:クトァグアぁぁぁぁぁああああ!

 燃え盛る炎の中で永遠に眠りにつくがいいぜ!

邪神第四元素炎フレイム・プライド》!」


 激しい炎の本流に流され、溶岩よりも熱い炎が私に覆い被さる。

 激しい熱さと共に、苦痛を味わい声を荒げる。痛みを超速再生で癒しても嫌しても燃え終わることのない終焉のような炎は、まさに旧神話の邪神クトァグアそのものの様だ。

 私はこんな狂人を相手にしていたのか。

 相手取って、せってからのこの魔力解放。私も本気マジにならなきゃやってられない強さだと言える。


 戦いの決着はまだついていない。今始まったとすら言っていい。この終わりなき炎をどう攻略するかが、このクトァグアを目覚めさせたデスティアとの戦いの勝利の光になるだろう。

 これは私とデスティアとの戦いだ!

 古代の生物は引っ込んでろ!

 たむろしている生物たちは温度に耐えきれず消滅し、私の花火流星群の火もまた生物たちを焼き尽くす。

 これで、戦いはイーブンだ。

 さぁ、始めようか。本当の戦いってやつを。私との戦いはまだ終わっちゃあいないんだよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る