#28 太古

 道を普通に歩いていると、どこかで力と力の衝突があり、ワープゲートがこの地上にできてしまった。

 ワープゲートは人を飲み込み、別の事態へタイムスリップさせるほどの吸引力を誇る。

 そのため、いくら踏ん張ったところで、オリジン保有者とて無事であることはないのである。

 あやふやなルートは自分を太古の時代までタイムスリップさせられる。

 この世界の太鼓とはなんなのか、まるで予想もつかないが、どうなところだってどんな環境だって適応してみせる。決意の固い私の目は光っているぞ!……鏡見てないからわかんないけど。


「どっひゃぁぁぁぁああああ!」


 金髪ブロンド碧眼ロリが間抜けな声を出して地面と熱いキッスを交わす。

 土の味がしたべろから感じ取られて、なんともいえない音を奏でている。例えるなら、初心者のバイオリンを生の音でカラオケボックスで直接聞いているような音がする。

 ……まったく酷い味だった。だれだ、こんなところに不親切にもワープゲートを開いたおバカちゃんは!

 私はお陰で地面とキッスを交わしたというのに、納得いかん……納得いかんぞ!

 こんなことが罷り通っていいのだろうかと憤慨していると、生物を発見する。

 ……すごいでかいゴキブリに、カマキリやハエ…………マリ女の子だから怖い(金髪ブロンド碧眼ロリ)なぁ。

 こちらを食ってこようとするので、撃退していく。

 拳拳うわ汚ね脚脚脚拳拳汚ね拳脚脚拳。色々な技を出すわけでもなく、淡々と狩っていると遠くの方から音がする。

 火山が噴火するようなしないようなそんな音。地響きにも似た何かが起きて襲い掛かろうとしてきた。これは絶体絶命のピンチってやつか……?私魔力させられてるから、わりとなんでもできるんだけど、宇宙空間はどうだろうなぁ。なんとかできる気がするけど、なんとかしたくないような気もするし、火山をいっちょ止めに入るとしますかねぇ。

 自身の脚力を活かしてドリルのようにして、地中に潜って火山の原因であるマグマ溜まりを見つける。

 そうさ、私は魔力だ。魔力という存在だからこその超回復で超再生がある。それこそが私の強みなんだ!

 ぶっ壊してやるよ、このマグマ溜まりを!


(安らぎの歌、癒しの恵み、いざ溢れ出せ水の奔流に全てを洗い流せ!《水龍歌ウォッシャー・オリンポス》!!)


 マグマ溜まりはみるみると固まっていき、黒曜石になる。黒曜石を砕いて砕いて砕きまくり、また溢れ出てきたマグマ溜まりを水龍歌で固まらせることを何度も何百回もやり、火山の噴火を黙らせる。うねるマグマはこちらを攻撃してくるが、焼けこげて落ちた腕を超回復してさらに固まらせていく。

 これが私の、魔力の力だ!


「困るんですよね、こいういうの。暑苦しいったらありゃしない。おれにとっては退屈しのぎなんですけど、ここまで抵抗されたら困ります。困ってしまって困ってしまって、ぶっ壊したくなりますよねぇ」


 いきなりの登場に戸惑いこそすれど、驚きはしない。こうなることはわかっていたかのようにその女に向かって水龍歌を放つ。

 素早い動きとモーションで華麗に避けられて、攻撃は不圧する。


「お前は狂人だな?」


「人のことを狂った人呼ばわりなんて、酷いものです。酷すぎて酷すぎてぶっ壊してしまいたくなりそうですが、辞めときます。ここで攻撃したら私までいい迷惑を被るんですから」


 全ての地表が登っていき、天変地異の前触れかの如く登っていく。某有名ゲームも思わせるかのこの激しい攻撃の中、超再生を繰り返して、なんとか凌いでいく。


「ぐっぁぁぁあああああ!」


「はっははははは!なんだ、狂人たちを四匹も倒したというのに、そんなに言う程大したことないんですね?おれはただ普通に地面を上げてるだけなのに」


 これが普通に地面を上げてるだけの行為だと?おかしいだろ、この破壊力にこの強さ。相当力を増してきたと見える。


「狂人にもランクがあって、デスジョーカーは下から数えたぐらいの方が早いというのに根を上げてしまったら、そこでおしまいですよ?貴方の大いなる旅とやらもここで潰えてしまうのです。呆れて呆れて、ぶっ壊したいぐらいですね」


 呆れてしまってものも言えないという顔して、こちらを見つめてくるこの女は狂人のランクでいったらどれぐらいなのだろうか。

 そして、あのデススペルとはどれ程までに強いのか、その事実に気がついて思わず楽しくて震える。

 武者震いというやつだ。これはこいつと戦って解消するしかないし、どっちこっち戦う道なのならば、戦ってこの疼きを抑えるとしよう。


「交戦的で好戦的で、迷わずぶっ壊し甲斐がありそうですね。貴方、名前は?おれは敵のデータベースを貰わないたちなのでわからないんですよね」


「いいだろう、私の名前はオリジン保有者のマリ・イグジットだ!私の全霊を持ってお前を倒す!たとえ倒せなくとも倒して倒すだけだ……!」


「はっはははは!いい顔ですね。食べちゃいたくて食べちゃいたくて、思わずぶっ壊してしまいそうです!大切な大切なおもちゃなので、大事に大事にとっておきたいのですが、どうしましょう?そういう実力でもないようなので、思わず殺してしまったらごめんなさい」


 テヘっと舌ベロを出してこちらを挑発してくるが、それは無意味だ。

 私は私で、私が私足る限りその挑発は無意味なんだよ。


「さぁ、始めてしまいましょうか。戦闘を……あ、名乗るのを忘れちゃってました!おれの名前はデスティア、嘆きの申し子と言われていますっ。さぁ、狂って狂ってしまって、ぶっ壊してあげるとしましょう……!」


 太古の世界での戦闘の幕開けの合図になるのはどちらの攻撃なのか、一触即発の中太古の生物たちが前を過ぎってその戦闘の開始を告げた。

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