第四章 再生

#24 原初

 私のオリジンはそこからだった。

 そこから這い上がってきた。のし上がってきた。這いつくばってきた。

 取り戻した私の原初の思いを。あの感覚こそが私である証明なんだと気づかせてくれた。毎回気絶するのは勘弁して欲しいが、おかげで大事な何かを取り返せた気がする。

 景色は移ろい変わり、あの女神がいたような虚無の空間に誘われる。

 今度はなんだ、一体何が始まるんだ。


「やぁ、初めまして。私は原初の神トゥルー・オリジンというものだ。まずはこの神界に招かれておめでとう。オリジンを本当に手に入れたものにしか踏み込むことは許されない世界なんだ、ここは」


「本当の…………オリジン」


「あっ、急に喋りすぎてしまったね。リラックスをしよう。腕を伸ばして息を吸って吐いてを繰り返すんだ」


「いや、だいじょぶ。私は私だから問題ないよ」


「おっ、このトゥルー・オリジンに向かってそのセリフを吐けるとは、流石のオリジン保有者だね!」


 色々な単語が飛び交いわけがわからなくなってしまうが、なんとなく理解はできることもあった。しっかりと分かり合ってこの神界にやってきたのだと、気づくことができた。さすがは私、こんなことまで理解できているなんて、なんて素敵な人なんでしょう!…………自画自賛するのは早いか。


「邪神に魅入られているオリジン保有者なんてなかなか存在するものじゃないよ!だって、大体は邪神の力に取り込まれてしまうからさ。邪神にとっても賭けだったんだろうね。君という存在がキーアイテムになることを信じてたみたいにさ」


 なるほど、試されていたともいうべき……と言うことになるな。

 私だって最初は死ぬかと思って、魂を引っ張られて自分が自分じゃなくなる力を体験した身だ。そんなこともあれば、珍しいと言うのは納得のできる判断材料だろう。


「さて、オリジン保有者になったら説明するんだけどね、まず得点があります!」


「おぉ」


「怪しい勧誘じゃないから安心してね!「うん」よしよし!じゃ、まずは権能から説明していくとしよう!魔力の力が最大限に発揮されて、神と同格となるところから。差一向に強くなれる君だけの力さ!一世紀に1人しかオリジン所有者は現れないんだけどねぇ」


 オリジン保有者と所有者の違いはなんだろうか。

 保有と所有では意味合いが違ってくるものになるだろう。

 仮、それとも真に持っているものなのだろうか?それがわからないとお話にならないことは間違いないだろう。


「基本的に所有と保有は変わらないよ。キミは保有者。ずっと永遠に持っていられるっているお墨付きさ!所有者は一時的に所持しているものだから、ずっとではないと言う違いぐらいじゃないかな。まっ、大きくは違わないよ!」


 だいぶ変わるじゃないか!それで所持していた無くなったら元の力になるんだから、弱くなって負けてしまう……考えただけで恐ろしい。

 クトゥルフ的神話体系を経験したかのような感覚は私を震えさせるには十分な恐怖感であった。


「まずはキミにぴったりのステータス表を作ってあげないとだね!キミの実力は今どのくらいなのかって言う指標にもなるし、敵が現れたとしても、それを見て冷静な対処を取れるくらいには判断力と観察眼にも優れているしね?いやぁ、これでもオリジン保有者のことは高く評価しなければいけない立場なのですよ!このトゥルー・オリジンに不可能はない!」


 とのことだったので、天性の定番とも呼べる定番の水晶に手を触れて色々な測定を図ることにした。

 自分では満足のいく結果だとも思ったが、トゥルー・オリジンはそう思っていないらしく、私に対して修行を課してきた。

 こんなことになってしまったのは予想外だが、しかし自分の力を越えるには自分では限度があると言うことも知っていたため、提案を飲むことにした。

 今の敵よりも強い奴がいるなどと悪い夢を見ているかのようだが、やり遂げる以外の道はもう残されていなかった。

 俺はやるんだ。なんとしてもこのトゥルー・オリジンを納得させるだけの力を得て、この世界を救ってやるんだ。これが私の原初の思いなのだから。

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