#22 感嘆

 中学生になり、周りの環境は変化した…………とは言い難い。相変わらず変なヤンキーに絡まれてるそこらへんの中学生や小学生を助けたりしているが、みんな怖がるか逃げるかする。

 気合いが足りないっていうだけで襲うヤンキーもヤンキーだが、中々にいじめられている側も挑発を繰り返してしまう始末だ。

 クソな世の中で、クソなことをしている奴らなどこの世界にごまんといる。最悪なところには最悪が潜み込み、純真無垢であるものたちを引き込もうとしているヤクの売人などもいたりした。救世である以上は、そこのところは見過ごせない。

 必ずあの悪人たちを滅してやるしかないんだ。

 俺はそう意気込んで、今日も明日も戦う。





 日本でそんなこと起きないって?

 起きるさ。常に何かは起き続けているものなんだ。超常現象が起ころうとも、俺は気にすることなくそいつらを倒す。黒いモヤがかかっているやつもいたし、アメーバ状のモンスターも出てきた。

 ここは現実だ。仮想世界でもなければ、異世界転生でもない。ただの、日本の俺の日常だった。それしかなかったとも言い換えていい。





 中学生とは、華々しく部活動に励んだりするものだ。俺は全くそんなこともなく、絡まれてる奴らを蹴散らしていく。

 不良のレッテルを貼られ、中学校からは迷惑扱い。他の奴らの俺を見る目は冷ややかなものになっていた。

 そんな奴らばかりだ。施設の人間も俺を見捨てて俺は実質1人でその日暮らしの生活を送っている。

 泥水を啜り喉の渇きを癒して、食う飯は1日一回もザラだ。

 人生のどん底にいるような気がして、気が重くなってくる。でも、自分より他人で、なぜか救ってしまう。

 滑稽に思てくるが、それが俺という人間なのだということを証明する証になってきている。

 一部からは救われた奴らから何か食べ物を持ってきたりしていて感嘆した。





 高校にはいけないだろうな、と思ってきた時に、ある一人の教師が、なんとか中学校側に取り持ってくれた。

 そこでもやはり感嘆して、感激して、号泣した。

 邪原狂恐じゃばら きょうきょうという、嘘みたいな名前の教師は、俺のことを全力で救ってくれた。なんでこんなことをしてくれるのか分からないが「お前は俺に似ている」と言って、何度も飯を奢ってくれた。

 狂恐先生は俺の恩人で、俺の生活の全てだった。

 あの人がいなかったら今頃高校生を志すことをゆうに諦めていただろう。





 俺の半生は先生によって、なんとか荒々しくも、高校生の春を迎えることとなる。

 先生に連絡しようとしたが、先生は忽然と姿を消して、連絡すらも取れない、行き先も分からない。

 なんで、どうして!そんな思いが強く残った。


「卒業式なのに、先生がいないなんて、なんか物悲しいな」


 呟いた声はどこの誰にも聞かれることなどなく、独白という形になってしまう。

 周りはこちらを避けているため、声など聞かれることなどない。

 自分の声は少し女らしく聞こえてきて、声変わりはしていない。訪れなかったのだ。

 見た目も少し女臭くて、俺は自分の容姿が苦手だった。

 誰に見られても女にしか見られなくて、一回レイプされかけた。まぁ撃退したんだが。





 今日から高校生になる真理まこと とわりは少しだけ、ほんの少しだけ大人になったような気がしてきた。

 成長期が止まり身長は152cmしかないけれども、なんだか大人だ。

 あの時は高校生になったら大人だと思っていたから、黒歴史みたいなものになる……。

 高校生は激動とも言えぬ時期であった。何も起きることはなく、不良のレッテルなど貼られていなかった。

 生きやすい世界がここにはあった。あの三年間は本当に何もなくて、ただ日々を謳歌できていた。バイトもなかなかに楽しかったし、生活費を自分で稼げるというのはなんとも素晴らしいものだろうか、感動を忘れられないままでいるのは、悪いことではないだろう。





 そんなこんなで、時間が日々に過ぎていき、大学生になった俺は、臨死体験をする羽目になるのだ。

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