#5 傾国
まずはマ◯ンフォードでも沈めてみよぉかぁぁぁぁああああ!(某髭のテンション)
テンションが上がったから、心の中で叫んだが後悔はしていない。
「あんさん、ほんまもんのバケモンや……!こないな強い人やったらもう一人の守護者のあいつに勝てるかも知れへんで!」
「確かに……。あいつは強大だけど、なんとかなるはず」
なんかポ◯モンのチャンピオンロ◯ドみたいなノリだったから、3人いるのかなぁとか思ってたけど、まさかとは思うがいるんだな……。俺はなんでもいいが、そいつがこの中で一番強いってわけだ……!腕が鳴るぜ(今魔力状態のお前に腕なんかねぇよバーカって思ったやつ、今擬態してるからなバーカ!!)
「ほぉ?さしずめそいつがお前らの中で一番強いと感じていて?さらに国王と密に繋がってるって感じかぁ。俺様は最初は手を出さんぞ?」
「「……!」」
「お前たちの力をまだ充分に見ていないからな。正確にはエドの実力が分からないから知りたいってのもある。自分達の国は自分達で切り開いていく、それが摂理ってモンだが、俺はお節介焼きなんでな……。力を示してくれりゃ、俺様も力を示そう…………これは約束だ。血の誓いさ」
なんてことはない約束ではないが、それもまた悪くはない。こんなことで日常を感じられる日が来るなんて、なんだか不思議だ。俺は体が魔力になっちまったが、別に生活に不便してるわけじゃねぇし。そもそもなんとかなるっていう楽観的な生き方をしてるし、問題はねぇだろ。
「ああ、約束や!あっしの力、存分に見せたるわ!」
その瞬間に大地に衝撃が駆け抜ける。これが国だったら傾くぞ……!!おいおい、いつもこんなタイミングできやがるなぁっ!なんなんだ一体、この世界の住人はこういう登場の仕方をしないと気がすまねぇっていうのか!!
「貴様ら、国王を裏切ったというのか……。恥を知れ、恥を。貴様らは私が力で持って粛清をしようではないか」
やっこが言葉を言い放ち、途切れた瞬間に魔力の膨大が認められる。…………不味い!避けなけ確実に大ダメージは免れない……!
「思い切り伏せろ!!」
高圧の水があたりを切り裂き、まさに傾国の如き力を発揮する。この攻撃があれば、簡単に国などは傾いてしまうだろう。何よりも、あいつの保有している魔力量が桁違いにやばい。ビンビン良くない気配を感じ取ってしまうぜ……!
戦ってみてぇよなぁ!!
「ここはあっしらに任せてくれや……ここまでされたとあっちゃ、マリはんだけにやらすわけにゃいかへんねん。かかってこいや、[水銀の龍]スイリュウ……!」
「ふん、[炎帝]が私に歯向かうというのか……面白い。ならばその力、見せてもらおうではないか」
怒涛の連打が続く。炎の纏った魔力でできた棒を自由自在に操り、叩きつけているエドに対し、余裕綽々といった様子で受け流している。早すぎる、早すぎるぞこいつ……!
まるで動きが流れ出る水のようだ。掴みどころがないというか、掴めるところが一切ない。少なくとも、俺は見てそう感じた。
楽しめそうだ…………!
「くそがぁ!やっぱりあんさんの闘い方は苦手や!いつも水みたいにスイスイスイスイ!でっかい川に立っていたら流れが止まらずにそのまま進み続けるような感覚と一緒で、あっしはただの枯れ木にすらなれずに、あたりを浮かぶ落ち葉のような気分になってくるでぇ……!」
「選手交代だな、エドよ」
意外そうな顔をするエドだが、納得してこの場を譲ってくれるらしい。これが正解かはまだ分からないが、不正解も正解も現実ではない。分岐する方向に向かっていけば不正解が正解になる可能性だってあるし、正解が不正解になる可能性だって大いにあるわけだ。確率的には一緒。どっこいどっこいと言ったところだろう。
「……ほんなら、休憩させてもらいまひょ。お眼鏡には一応かかったんかな」
「あぁ、十分だとも。そして安心するがいい。この俺様、魔力の塊であるマリ様がこの目の前の敵を殲滅するからなぁ!」
不敵な笑みを浮かべる水君。その顔からは余裕がまだ見て取れる。何も気になどしていないと言った様子だろう。しかしなぁ?お前は肝心なことに気づいていない。何回も繰り返して言うことになるが、俺は魔力だぜ?大抵のことはなんとでもなる!
「〈大団炎〉!!」
放った技は大きく広がり、まるで大団円を組んだかのような陣形になる。急なことで回避行動を取ることができなかったのか、水君は顔を負傷する。
「きっ……貴様ぁぁぁぁあああ!許さんぞ!この俺の顔に傷をつけやがったなァァァァアアああ!」
発狂しだしたな。これがやつの本質だったと言うことだ。なんとも愚かしく、浅はかで何も言えない。
「えらく矮小な存在に成り果てたなぁ?えぇ?[水銀]よぉ。国王と癒着している組織のNo.1だもんなぁ?そりゃ本質もそれなりに悪だと思っていたぜ。どうやらビンゴだったようだな。最初から余裕ぶらなければいい線行けたかも知れないのにな……残念だぜ」
もう最早こいつには戦えるだけの胆力など残っていないだろう。顔に傷があり、かなりの汗を流している。あとは魔力を流してやりさえすれば楽に死ぬことができる。それが俺にできる唯一の救い。慈悲の一撃ってやつだ。
「ふん、不甲斐のない部下を持ってしまったようだ。三匹とも処分するほかあるまいよ」
3本の光線が突き抜け、貫いて飛び出るところを確認してしまった。見えてしまった。魔力感知がし易い目が仇となった。三人とも全員心臓を貫かれて息絶えている。さっきまで話していた人間が急に死ぬんだ……!この世界はそうだった、絶望の先には希望なんて残されていない。ただ深い悲しみと失望が胸を渦巻いている。あの女神が笑っている姿が想像できた。「あなたのしてきたことは無駄だったのです。意味などありませんよ」と聞こえてくる。あいつは見ていた。知っていた。こんな結末になるなんてことはとうの昔から知っていた。
…………足掻いてやる、もがいてやる。必死に生き抜いてやる。あいつらの分まで生きないと、あいつらが報われない。
「お前か………………【国王の手】の…………主か」
「いかにも、私が傾国の王と呼ばれた、マーガリン・フォン・デスルーラーだ」
沸々と込み上げてくるものは俺にはなんなのかわからない。分からなかったが、目の前の邪悪を殺さなければならないと思った。初めて能動的に人を殺そうと思った。今この瞬間から、俺は殺戮機械に成り下がる。お前だけはぁぁァァァァアアああ…………………………!!!!
「俺様は…………"私"はぁァァァァアア!…………お前と言う存在を許さない……否定し続けてやる。女神よ、見ているな。お前の存在を否定してやる。最初から気づいておくべきだったんだ。私以外はいらないって。私が関わったら巻き込んでしまうから…………。だから、だからよ。…………覚悟、決めとけよ」
〔注意:side outを確認。早急に対処されたし〕
場の空気が支配される。不穏なものがまとわりつく感覚が周りを包み込み、離れない呪縛となって国王を襲う。
国王はこの目の前の殺戮兵器に肩を震わせた。それは面白いのか、それとも恐怖しているのかは対面しているものにしか分からない。
賽は投げられた。投げられてしまった。もう手元に戻ることはない賽は、いつまで振り続けられば止まることができるのだろうか。それは女神にすらも分からず、恐々とするのみであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます