第12話 紅の拳

 INUW-1 荷電粒子加速投射砲〝ハルバードバスター〟。

 ボレアリスが持つ荷電粒子砲は、轟音と共に砲撃を繰り返し、回避行動を取るアルデバランを追い詰めていく。

(四秒……ってところか)

 優樹は回避を繰り返しながら、ハルバードバスターの発射間隔を計測していた。

 どうせこのまま逃げていたところで推進剤が枯渇するか稼動電源切れによって行動不能、直後に撃破。この方程式しかない。攻勢に出なければならない。

 ハルバードバスターの一撃をやり過ごすと、瞬時に方向転換し、ボレアリスの正面に向かい、加速する。牽制に、三連機関銃を発射しながらの突撃だった。

 それに対し、靖也は背腰部から大きな拳銃を取り出した。INUW-3 レーザーハンドガン〝ダガーレイ〟である。これは荷電粒子砲ではなく、高出力のレーザーだった。

(だけど…!)

 優樹は構わず突進する。いかに高出力のレーザーとはいえ、あんな小型レーザー照射装置ではほんの数秒でアルデバランの装甲を貫くことはできない。

「懐に飛び込めば、俺の勝ちだ!」

 アルデバランには切り札たる武装が複数存在する。右腕に装備された電磁破城槌エルナトは装甲車両を貫通できる威力を持っているし、両肩の近距離殲滅用爆砕兵装プレアデスは無数の榴弾型ベアリング弾を射出し、対象を駆逐できる。どれも格闘戦闘距離クロスレンジでの武装であり、遠くからでは意味がない。しかし、近づけさえすれば、絶大な威力を発揮する武装なのである。

 それを察したのか、靖也はさらに手を打ち出した。

「クサナギ!」

 ボレアリスの両肩に装備された鏃のような、計六つのパーツが飛び出した。それぞれが不規則な機動を取り、突撃してくる赤い標的に牙を剥く。

 INUW-4H 独立高機動射斬兵装〝クサナギ〟。MAZ-3XジャンパーのHRNシステムを用いている武装であることは、その運用方法を見れば明白だ。

 鏃は前半分が二つに割れ、中から輝きを放とうとしている。

(射撃兵器!なら――)

 アルデバランの両肩部ハッチが開放され、タングステン弾が顔を覗かせる。

「いけっ!」

 タイミングを計り、肩部搭載の制圧兵器プレアデスを使用した。

 射出されたタングステン弾は、その広い射角を活かし、放射状にばら撒かれた。クサナギは、金属の雨に打たれるが如く、逃げ場を失い、撃ち落されていく。ただでさえ弾数が多い上に、それぞれの重金属弾は榴弾――内部に火薬が仕込まれているのだ。そのままでも破壊力は抜群であるのに、射出された弾同士が衝突し、爆散することで新たな無数の破片が生まれる。これでは回避のしようがない。

 次々と撃墜されるクサナギとタングステン弾による爆発の煙の中、アルデバランは遂にボレアリスへと肉薄した。

「獲った!」

 優樹は右腕のエルナトを引き絞る。コンデンサーカートリッジ連結。あとは電磁気力により弾き出される重金属杭を打ちつけるのみだ。

「このぉ!」

 靖也はダガーレイを捨て、ハルバードバスターを持ち替える。そして、開口している粒子加速板を閉じ、金属杭—―エルナトをアルデバランの腕ごと挟みこんだ。

「ちっ、だが――!」

 今度は三砲身のガトリングガンが、ボレアリスの顔面に向けられる。この至近で撃たれれば、只では済まないはずだ。

「まだだ!」

 それを、靖也は右腕で、アルデバランの左腕を押さえ、上に向けた。バララララ、と空しくも銃弾が天井を穿つ。

「それでも!」

 両腕を押さえられた状態で、アルデバランは肩部ハッチを開く。中からは、二層式に装填されていた、第二陣のタングステン弾が顔を見せていた。この至近では、回避など不可能だ。いかに装甲に守られていようとも、白い装甲ごと装着者を爆砕することだろう。

(これで、出し切ったな!)

 だというのに、靖也は仮面の下で笑っていた。ハルバードバスターは機構上、射出フィールドの形成ができないため、使用不能。ダガーレイはすでに捨ててしまい、クサナギは全基射出済み。

 その状態で、勝利を確信していた。

 アルデバランの真上に、滞空する影が二つあった。

 プレアデスの強襲を、直上に逃れることで回避できた、二基の浮遊砲台が。

 二基の銃口から、加速粒子が放たれ、ベアリング弾の射出体勢に入っていた肩装甲に命中する。回避しようにも、両腕を固定された状況では不可能だ。

 粒子砲が赤い装甲を焼く。しかし、貫通までは至らない。そもそも、ここで貫通してしまっては、ハッチが空いた状態で逃げ場を得た爆発と破片がボレアリスへと降り注いでしまう。

 本命は次だ。

 射撃後も、クサナギは動きを止めず、急降下を開始した。そして、胸部装甲と肩部装甲の間に突き刺さった。

「ぐぅっ!」

 さらに、そこからゼロ距離射撃が行われ、密着状態で荷電粒子が幾度も衝突し――

「がっ、あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ―――――――――――っっっっっ!!!!」

 小さな爆発が起こった。遅れて、金属が地面に落ちる重い音がした。

 クサナギは大破したものの、ベアリング弾の暴発は奇跡的に起こらなかった。

 靖也は掴んでいた赤い両腕を、爆煙と血煙の中で、勝利に酔いしれた。


 起死回生の手になるかもしれない『Schlag』のカード。しかし、それを掴もうとは思えなかった。散々利用された挙句、自分の無力さを痛感させられ、会社に屈して助けを請う。自分の、いや、榛名の命を奪った一因を作っている連中に頭を下げるような真似は、絶対にしたくなかった。

 和也はそんな意地を張りながら、海斗を睨み上げた。

「どうしたんですか松井さん。もう終わりですか?」

 海斗は、和也が先ほどから視線を注いでいたカードに気づき、仄かに笑みを零した。

「それ、使えばいいじゃないですか。役に立つかどうかは別にして、試してみる価値はあるんじゃないんですかね?」

 狭路での戦闘に向いている形態は今のところない。このカードがそうである保障はないが、確かめずに捨て置くのは確かに愚策といえるだろう。

「俺は、あいつらには頼らない……。これ以上、利用されて、たまるか……!」

 思いのうちを、吐き出した。

 それを、海斗は鼻で笑う。

「なんか、難しいこと考えてるみたいですねぇ」

 頭を掻きながら、海斗は続ける。

「そんなの、自分次第でしょうに。要は、考え方ですよ。あっちが自分を利用しようとするなら、自分もあっちを利用すればいい」

「そんなこと……」

「会社はこんな危ない力を個人に預けてるんだ。だったら、そんな力を持たせた責任ってのがある。なら、この力をどう使おうが、こっちの勝手でしょう?」

 その勝手ができないから困っているんだ。和也はそう言いたかった。香奈が人質になっている以上、意向に沿わないことをすれば、妹の身が危なくなってしまう。だが、従いたくもない。人の命を簡単に捨て去るあんな奴らになんて。

「あ、もしかして、人質とられてるクチですか?」

「そうだよ!」

 まるで考えを見透かしたような海斗の言い方に、和也は声を張り上げた。

「俺は、たった一人の家族の、妹のために、俺は……!」

「考え方を変えましょう。あなたを縛っているのは、妹さん一人なんでしょう?」

「だったら、一体何だって――」

「妹さんが死んだら、松井さんを縛れるものは何もなくなっちゃうじゃないですか」

「なっ…!?」

「松井さん、MESもね、危ない橋を渡ってるんですよ。もしその妹さん以外に尊い人がいなければ、もし妹さんに何かあったとき、どうやって松井さんを従わせるんでしょうかね」

 変な博愛主義に目覚めてなければですけどね、と海斗は付け加える。

 会話の内容はともかく、考える時間、人と話す時間を得られたことで、少し冷静になれた気がする。今の和也には、少なくとも意地やプライドに支配されていたことを自覚できるくらいの冷静さを取り戻しつつあった。

 単純な話だった。和也がここで死ねば、香奈の存在意義がなくなってしまう。香奈を助けるためには、和也は生きていなければならない。そのためには、このカードを使うしかない。誰に頼るだとか、引け目を感じるとか、気に喰わないとか、そんな小さなプライドのために、妹の命を秤にかけていたのかと思うと、自分が情けなくなってくる。

(もう、この手にある以上、これは俺の力だ)

 和也はゆっくりと、『Schlag』のカードを掴み、立ち上がった。

「そんなにベラベラと話していたこと、後悔させてあげますよ」

 戦意に満ちた顔と声で告げると、海斗は釣られて笑い出す。

「いいですね。死んだ魚を捌くより、生け作りの方が、断然いい!」

 グルミウムの両腕に、再び白い光が点る。

 和也はカードをバックルに滑らせ、

『Schlag form open.』

 赤い装甲を身に纏った。

 今回は武器らしい武器は装備されていない。ただし、指先には三角柱の鋭利な突起が付き、手はナックルガードに覆われている。肘と膝には鋭利な突起があり、腕と脛には耐久性の高そうな追加装甲、爪先にはスパイクまで装備されている。

『シュラークフォルム』は完全格闘型の形態だ。そのための補助機構が各所に施され、突き出す拳や蹴り上げる足こそが、絶大な威力を発する凶器となるのである。

 グルミウムが肉薄する。同時に繰り出される光る拳。

 それを、和也は半身になって迎撃する。

 突き出された右拳を、身体を捻りながらギリギリまで誘い込み、肘を基点にした左手の裏拳で弾く。そして、カウンター。弾かれてややバランスを崩した白い装甲、その頭部に、右肘による一撃を繰り出した。

「ぬぅおっ!」

 海斗はそれをかわそうとして首を振るが、特徴的な額のV字パーツの半分がへし折れて飛んでいった。

 和也はまだ止まらない。

 海斗が一歩左足を退いたことを確認し、海斗の正面に向かって左足を一歩踏み込む。そこから右足を大きく振り上げ、ハイキックを見舞わせる。丁度顔面を捉える位置だった。

 海斗は咄嗟に身を低くして回避に成功する。

 が、それは和也も想定済みだ。むしろ、そうさせるために、わざわざ蹴り入れたのだから。

 嘗て頭があった部分、そこを通り過ぎた赤い足が、最高点で小さな円を描いて軌道を修正し、海斗の真上に足が移動する。

「はぁっ――!」

 そのまま直下に振り下ろされた。ハイキックから繋げた踵落としである。

 海斗はまたも、回避のために足を退いた。それだけでは足りず、上体を逸らす。

 ゼロの強化された踵落としは脳天を直撃することはなかったが、グルミウムの額V字ブレード基部と表面の装甲をこそぎ落した。装甲欠損により、海斗の顔の左半分が露になった。

 これではたまったものではない。大きく後方に跳び退り、海斗は一度距離を取った。

「すげぇな、マジで」

 言葉とは裏腹に、焦燥が増していた。海斗は、今まさにゼロに、松井和也に恐怖している。

「確かに、そいつはすごい機体ですよ」

 和也は半身のまま、静かに語る。

「でも、動きが大雑把過ぎる。確かに一撃の威力は大きいけど、そんな挙動じゃ当たってはあげらんないですよ」

 和也の言うとおり、グルミウムの設計思想において、『打撃で撃破する』ことが最優先されている。内蔵されたコンピュータによって、素人でもある程度の動きができるよう、補正がかけられる。海斗は格闘技の素人だ。だから機械がその動きを補正し、機械的に強化された拳や足を繰り出すのである。

 しかし、それにも限界がある。破壊力第一で考えられている上で、尚且つ装着者の動きの補正まで行うのは、演算負荷も大きいし、装着者にも大きな負担がかかる。機械が動きを補正するというのは、極端な話、装着者が動かそうと思っても別の動きをしてしまうということだ。それは装着者の精神衛生に悪影響を生み、機械と人間の負荷を下げようとすれば、動きの単純さを生み出してしまう。

 本来なら、これらは無視していい程度の齟齬しか生まない。しかし、相手が松井和也であることがまずかった。和也が長い間、幼少時より続けてきた格闘技に関するセンスに対し、グルミウムの動きは単純すぎた。

 そんなグルミウムに対し、『シュラークフォルム』のゼロは、そういった機械的補正を行っていない。あくまで和也の意思で全てを動かしている。その分、滑らかで効率的な動きを実現していたのである。

 しかし、海斗は退けない。ここまで来てしまったのならば、進む以外に道などない。

 グルミウムの足に、赤い光が纏われた。

「ロートシュパッツ…!」

 一気に飛び込み、右足によるミドルキックを繰り出す。

 その足を、和也は左脚を上げ、左肘を曲げる体勢で待ち受け、

「ぐぅあぁぁぁ!」

 海斗の悲鳴があがった。

 ゼロの肘と膝にグルミウムの足首が挟まり、装甲を砕いていた。普通ならば実現困難な、タイミングを読み切った、防御と攻撃を兼ねた技であった。

 諦めず、海斗は捕獲された右足を軸に、左足を振り上げた。

 和也は捕獲していた足を開放し、それでも尚迫る左足による衝撃を、回避を諦めてバックステップにより軽減した。ニメートルほど後退し、腕がジンと痺れた。

(軽減させてもこれだけの……)

 グルミウムの攻撃力に感心しながら、改めてその威力に警戒する。

 海斗は本来ならば砕けて動けなくなってもおかしくない右足首を、スーツ内にある鎮静剤投与機構によって無理に動かし、歩み寄る。

「でぇぇぇぇいっ!」

 左足で踏み込みながら、拳を白色に輝かせての正拳を繰り出してきた。

 和也は左足首を外へ向け、やや身を低くしながら、踏み込んだことで体重の乗った左脚を狙い、ローキックを繰り出す。

 すると、海斗の全身がグラリと揺れた。

(決める!)

 和也は足を退き、軸足を中心に一回転。中段回し蹴りが、グルミウムの腹部装甲に激突し、大きく罅(ひび)を入れた。

「ぐぅっ――」

 続いて、今度は逆回転。今度の軌道は高く、上腕を狙ったミドルハイキックを繰り出す。

「あ゛ぁぁぁぁぁ――!!」

 上腕は、銃弾を弾く下腕と違い、充分な装甲を持っていないようだった。装甲が粉々に砕け、上腕骨の骨折に至らしめた。

 最後に、渾身の掌底を胸に叩き込む。

「ごふぉぁっ――」

 爪のような指先を装甲に食い込ませながら放った一撃は、海斗を跳ね上げ、決して小さくないグルミウムの機体を三メートル近く吹っ飛ばした。

 床を滑る白と水色の装甲は、動かない。

「これで……、終わったか……?」

 ふぅ、と息を吐き、和也は改めて『シュラークフォルム』について考えた。

 戦闘スタイルとしては、これが一番馴染める形態だ。そこは間違いない。ただし、どっと疲れが押し寄せてくるのは、ただ緊張していたから、ではないはずだ。

 HMDにプロパティを表示させると、補助機構として、身体に微弱な電流を流して筋肉の伸縮をアシストしている、とある。これは、局所的にシュベルトやランツェ各フォルムでも行われていることだが、シュラークのそれは電圧・電流共に幾分か高いそうだ。それが体の疲れに加えて、精神的なストレスに繋がるという。

(長時間の戦闘には向かないな)

 それに、相手が得物を持っていた場合、リーチの差も出てくる。格闘技に精通しているものの、和也は達人ではない。これまで通り、各フォルムの特性を考えた運用をしなければならないだろう。今回のことで、手札が一枚増えた。ただ、それだけのことだ。

 ちらりと海斗を見る。

 やはり、動かない。しかし、死ぬほどの怪我でもないはずだ。

 和也は自分が入ってきた扉へ向かい、上層へと向かうべく歩みを進めていった。

 と、ドンドンドンという、無遠慮な足音が聞こえてきた。どうやら海斗が立ち上がり、迫ってきたようだ。

(大人しく寝ててくれよ…!)

 和也は首だけを振り向け、後ろを窺う。

(俺に、無闇に殺させないでくれ!―――え!?)

 振り向き、海斗の眼を見た瞬間、言葉を失った。

 白目をむき、意識があるのかどうかも怪しい海斗が、猛烈な勢いで駆けていたのである。そこに海斗の意思がるのかどうか疑わしい。

(まさか……)

 潜在的深層反射行動。

 嘗て榛名が自分の意思とは関係なく、和也を殺そうとした、潜在意識に働きかけるSFTの技術。まさか、海斗もそれを受けているのだろうか?

 可能性はある。里平が奴らと繋がっている以上、(本人たちが知らないうちに)処置を受けさせられたのかもしれない。

 考えている間も、海斗は近づいてきている。

「くそっ!」

 海斗が和也の真後ろに着き、拳を振り上げた。

 その挙動よりも速く、和也は身体を回転させ、後ろ回し蹴りで足を高く上げた。

 神速の一蹴と呼んでも差し支えないほどの一閃が、海斗の側頭部に命中し、

 衝撃に耐えられなくなった首が、頭部を手放し、

 頭部は彼方、暗闇の中へと消え、

 頸部から噴水の如く紅を吐き出す体はゆらゆらと揺れ、やがて、ばたりと通路に臥した。

「くっ……そぉ……」

 和也は奥歯を噛み締めながら、改めて上階へ通じる扉へと歩み出した。


「あー、細谷さん死んじゃいましたね」

 VIP用の特別室内のソファーにもたれかかる男が、手にした携帯端末を見て呟いた。端末の画面には『HS-8 ALL SIGNAL LOST』の表示が赤く瞬いていた。

 永山忠嗣。元TDD所属の装着者であり、現在の里平の直衛でもある。

 当の里平はといえば、

「本当に大丈夫なんだろうな」

 本日これで五度目となる問いを口にした。

 里平は一人掛けソファーに座り、前屈みになって頬杖をつきながら、額に汗を滲ませている。この五度目の台詞は、以前の四度目までとは違い、声に明らかな不安が乗っていた。真後ろの大型チェストの上には妻子と写っている写真が飾られているが、それと比較すれば、彼がどれだけ動揺しているかが見て取れる。

「大丈夫ですよ。心配性だなぁ」

 携帯端末を弄りながら、忠嗣は面倒くさそうに呟いた。

 今船内にいるMES戦力はTelF三機。それぞれが一対一で戦闘を行っているが、つい先ほどグルミウムの『全信号途絶』が確認された。それは、グルミウム大破は元より、細谷海斗の死亡が確認されたことも示している。

(この分じゃ、ヤッスーとバジメも落ちるかね)

 残る二人の装着者の脱落も、忠嗣は予見する。元々旧世代機の再利用計画に便乗して造った機体だ。あまり期待もできない。せいぜい敵の損耗を促してくれればいいだろう、くらいにしか思っていない。

 忠嗣は懐から一枚のカードを取り出す。

『Nuadha』

銀色のカード、その表面には禍々しい書体で文字が刻まれていた。

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