さて、どうしよう?

 慣れない正座のため、薄紫色の座布団の上で、足の指をもじもじと動かしながら、緑葉は思う。

「緑葉さんのご趣味はなんですか?」

 にっこりと笑って悠さんはいう。

「は、はい。えっと、……料理、ですかね?」

 作り笑いをしながら緑葉はいう。

 緑葉は料理が大好きだった。

 朝早くにキッチンに立って、みんなのお弁当を作るのがいつもの朝の緑葉の日課だった。

 姉の青葉は料理がまったくできなくて(というか家事全般が苦手だった)いつも朝遅く、時間ぎりぎりの時間に起きていて、寝ぼけた顔をして、「おはよう、緑葉」とにっこりと笑って緑葉に言った。

 緑葉は、そんな姉のことが大好きだった。

「緑葉さんはとても家庭的な女性なんですね」幹さんはいう。

「別にそんなことありません」緑葉は言う。

 そこで二人の会話は止まる。

 緑葉は幹さんのことを見る。

 幹さんは笑顔のままで緑葉を見ている。どうやら幹さんは緑葉の言葉を待っているようだった。(自分が質問をしたから次は私の番ってことなのかな?)

 作り笑顔をしながら、緑葉は次の言葉を探している。

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