2 君に会いに行く
君に会いに行く
「初めまして。相葉幹と言います。よろしくお願いします」
と緑葉が幹さんになれない敬語の挨拶をすると、幹さんは丁寧にお辞儀をして緑葉に言った。
静かな和風の部屋の中には、緑葉と幹さんの二人きり。きっちりとした高そうな落ち着いた紺色のスーツ姿の幹さんの正面に座っている緑葉は、着慣れない胡蝶の模様が入った黄色の着物姿をして、さっきからちょくちょくとふかふかの紫色の座布団の上で足の位置をずらすようにしながら、緊張した顔をしていた。
そんな緑葉のことを見て、幹さんはにっこりと、緑葉のことを安心させるようにして、笑った。
緑葉はそんな幹さんに、ぎこちない笑顔をして、ぎこちなく笑って、それから視線を移して部屋の外に広がっている美しい日本庭園の風景を見た。
松と石の灯篭と、鯉の泳いでいる池と、ときどき透き通るような音を立てるししおどしがそのよく手入れをなされた庭にはあった。
「緑葉さんがあまりにも若いのでびっくりしました。青葉さんは二十歳の人だと聞いていたのですが、緑葉さんはまだ十八歳なんだそうですね。現役の高校生なんだとか」と幹さんは言った。
「はい。そうです。今、高校三年生です」と幹さんを見て、やっぱりぎこちない笑顔のままで、緑葉は言った。
「僕は今年で二十六歳になります。だから緑葉さんとは八歳違いになりますね。結構年が離れています」
「そうですね」と当たり前のことを緑葉は言った。
かぽーん、と聞きなれないししおどしの音が鳴った。(それから二人は、沈黙した)
なんでこんなことになってしまったんだろう?
どうして私は、お見合いをする、なんてお母さんとお姉ちゃんにそう言ってしまったのだろう?
と、今になって、緑葉はすごく後悔していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます