緑葉の結婚
雨世界
1 ねえ、私と結婚しようよ。
緑葉の結婚
結婚する人 結婚しない人 巻き込まれた人
ねえ、私と結婚しようよ。
「いやだよ。絶対に結婚なんてしたくない」と緑葉は言った。
「どうしても?」
緑葉を見ながら、緑葉のお姉ちゃんである青葉は言う。
「どうしても。そもそも、結婚の話はお姉ちゃんにきた話でしょ? どうして私がその男の人にあって、お姉ちゃんの代わりに、お見合いをしなくちゃいけないのよ?」
頬を膨らませながら、緑葉は言う。
「だって、まだ結婚したくないんだもん」青葉は言う。
「私だっていやだよ。私、まだ高校生だよ?」そんな正論をおせんべいを食べながら、緑葉は言う。
森山緑葉と森山青葉。
今年十八歳と二十歳になる、高校生と大学生の仲の良い(近所でも有名な)美人姉妹。
そんな二人の姉妹は、今、実家の森山家のキッチンでお茶を飲みながら、そんなお見合い話をしていた。
「そもそもさ、結婚する気がないのに、どうしてお姉ちゃんのところに、お見合い話なんてくるのよ?」緑葉は言う。
「知らないよ。そんなの。まあ、叔母さんの話をお母さんが断りきれなかったんでしょ? たぶん」青葉は言う。
「そうかな? 本当はお姉ちゃんに本当に結婚してほしんじゃないのかな? お母さん。きっと、そんなこと考えているような気がする。なんだか最近、すごく悪いことを考えているような顔をしてたもん」くくくっと、まるで魔女みたいに笑っているお母さんの顔を思い出して、緑葉は言う。
「うーん。まあ、そうかもしれない」否定をしないで、青葉は言う。
森山家のお母さんはシングルマザーであり、たった一人で(もちろん、いろんな人たちに助けられながらだけど)二人の姉妹を育てたすごいお母さんだった。
そんなお母さんが今、一番心配していることが二人の姉妹の結婚のことだった。(姉妹は二人とも、結婚にあまり興味がなかった)姉妹のお母さんなら、そんな二人を結婚させるために、あらゆる強引な手段を使っても不思議ではないと思う。(もちろん、最後には二人の意思を尊重してくれるのだけど……)
「でも、私はお母さんにはもちろん、感謝をしているけど、まだ結婚する気はないから」お茶を飲みながら青葉は言う。
「お見合いの話。断っちゃうの?」心配そうな顔をして、緑葉は言う。(お見合い話を断るというのは、いろいろと大変なことなのだ)
「それができないから、こうして緑葉にお願いをしているんじゃない? どう、私の代わりにお見合いしてみない? すごくかっこいい男の人だよ。緑葉ならきっと好きになるよ。私はあんまりタイプじゃなかったけどさ」緑葉の顔を覗き込むようにして、わくわくした顔をしながら青葉は言う。(綺麗なお姉ちゃんの顔が近くに来て、緑葉は少しどきどきする。妹ながら、姉の青葉は本当に美人だと思った)
「……だから、しないって。結婚なんて。えっと、……でも、かっこいいんだ。その男の人。……一応、一応だけどさ、今、写真とかあるなら、一度だけ、見せてもらってもいいかな?」とお姉ちゃんを見て、緑葉は言う。
「あ、ちょっと興味あるんだ。緑葉」すごく楽しそうな顔をして、青葉は言う。
「違うよ! そうじゃないよ! ……でも、私の高校は女子校(というか、お姉ちゃんも同じ女子高に通っていたんだけど……)だし、なんていうか、まあ、ちょっと恋愛に興味があるというか、ただそれだけだよ」と少し照れた顔をしながら緑葉は言った。(恋に興味があるのは本当だった。女子校ばかりに通ってきた緑葉は、まだ男の人と正式にお付き合いをしたことが一度もなかったのだ。周りの友達も、だいたいがそうだけど)
「もちろんあるよ。いいよ、いいよ。ちょっと待ってて、今、写真持ってくるから。豪華で素敵なお見合い写真!」と言って、とても楽しそうな顔(お母さんそっくりの魔女みたいな)をしながら、青葉はとんとんと軽快なリズムで移動をして、キッチンを出ると、そのまま自分の部屋に向かって早歩きで移動をした。
姉の青葉がキッチンに戻ってくるまでの間、妹の緑葉は、お茶を飲みながら、……お見合い。結婚。……すごくかっこいい男の人か。何歳くらいの人なんだろう? 仕事はなにをしているのかな? とか、そんなことをぼんやりと頭の中で考えていた。
「ただいま〜。もう、すっごく疲れたー」
そんな仕事帰りのお母さん(騒動の仕掛け人)の声が玄関から聞こえてきたのは、ちょうどそんなときだった。
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