第五章 ~『状況の整理』~
シャムニアの探索を続けていると、いつの間にか夕暮れ時になっていた。夜の帳が落ちれば、発見はより困難になる。
(捜索するチャンスはこれからいくらでもありますし、ひとまず休憩にしますか)
焦っても結果に繋がるわけではないし、不慣れな森を歩いたせいで、疲労で足が重い。疲れを癒すためにも、アリアは温泉へと向かう。
(まだ誰にも知られていないようですね♪)
以前訪れた時から変化はない。唯一の利用者だったフェアリードラゴンも、今はもうアリアの召喚獣だ。つまりは彼女の貸し切り状態である。
服を脱ぎ、恐る恐る湯に浸かる。硫黄の匂いを嗅ぎながら、体の緊張を溶かしていく。
(折角ですし、ドラ様とギン様も呼んであげましょう)
パートナーを召喚すると、ドラは頭から温泉へ飛び込む。温泉好きなのは融合前と変わらないのか、ゆらゆらと尻尾を揺らしていた。
一方、ギンは温泉が嫌いなのか、距離を取りながら、森の中へと消えていった。
その行動から主人のためにシャムニアの探索へと出かけてくれたのだと察する。ギンに感謝し、後で美味しい食事をご馳走してあげようと決める。
(それにしてもランクBのギン様に、ランクAのドラ様と豪華なパーティになりましたね)
ギンの固有魔術は魔力不足で扱えず、ドラはまだ子供でランクAに相当する力を発揮できるわけではないが、ポテンシャルだけなら世界でもトップクラスの戦力だ。
(共有の魔術のおかげで、闘いの幅も増えましたし、現状使える魔術を整理するべきかもしれませんね)
アリアは使用可能な魔術を頭の中で整理する。
――――――――――――
『回復魔術』
アリアが生まれ持った魔術。魔力を癒しの力に変換する。魔物や人の蘇生も可能。世界で使い手は二人しかいない。
『共有魔術』
軍隊蟻の女王から会得。パッシブスキルで、仲間内で魔術や魔力を共有することができる。
『炎魔術』
サラマンダーから会得。魔力を炎に変換できる。また炎を自由自在に操ることもできる。
『水魔術』
オルカから会得。魔力を水に変換できる。また水を自由自在に操ることもできる。
『土魔術』
ロックジャイアントから取得。魔力を土や岩に変換できる。また土や岩を自由自在に操ることもできる。
『加速魔術』
アイアンスライムから会得。魔力を消費することでスピードを速めることができる。自分の肉体だけでなく、投擲などでも有効。
『遠視魔術』
グリフォンから会得。魔力を消費することで遠くを視認できる。消費魔力が多ければ多いほど視認距離が延びる。
『念動力魔術』
フェアリードラゴンが生まれ持った魔術。魔力を消費することで視界に入った物体を動かすことができる。重量に比例して、魔力の消費量が増加する。
――――――――――――
(これだけの魔術があれば、工夫次第でシャムニアを倒せますよね)
瞬間移動できる力は厄介だが、対応できるだけの手札は揃っている。アイデアを練るべく、肩まで温泉に浸かる。その心地良さを実感すればするほど、転移魔術を手に入れたいとの欲が高まってきた。
(やっぱり温泉は最高ですね~あ、ギン様が戻ってきたようですね♪)
森の向こうから帰ってきたギンは神妙な面持ちをしていた。長い付き合いだからこそ、その意図を察する。
「どうやら成果を得たようですね」
シャムニア討伐を喜ぶ表情ではない。だが面白いものを発見したのは間違いないだろう。相棒を信じ、温泉から上がる。アリアの口元には不敵な笑みが浮かぶのだった。
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