エピローグ ~『祝勝会』~


 屋敷に帰ったアリアたちは祝勝会を開催していた。食堂に関係者が集まり、庭師のおじいさんや、バージルたちまでが参加していた。


 机の上には食べきれないほどのご馳走が並べられている。和食中心だが、洋食も含まれており、王国出身のアリアへの配慮が感じられた。


(ふふ、皆さん、楽しんでいますね♪)


 祝勝会が始まってから数十分が経過すると、清酒で酔った男たちが呂律の回らない舌で騒いでいた。


 いつもは真面目な彼らだが、長い闘いを勝ち抜き、ストレスから解放されたからこその破目の外し方だ。今日くらいは許してやるかと、規律に厳しいカイトも大目に見ている。


「アリア、このお寿司美味しいわよ」


 リンがイカのお寿司を運んでくる。雪のように白い身と挟まれた大葉が鮮やかである。


「わぁ、美味しそうですね。では一つだけ頂きます」


 醤油を付けて口の中に放り込むと、イカの甘さが口の中に広がる。大葉のおかげで、鼻を抜ける香りも爽やかだ。


「アリアさん、私のオススメのデザートも試してください」


 甘党のカイトもチョコレートケーキを運んできてくれる。以前、食べ損ねた品だ。彼はそのことを覚えていてくれたのだ。


「では、頂きますね」


 口の中に含むと、濃厚なカカオの苦味と甘味が舌の上に広がる。絶品の一言に尽きる味だった。


「アリア、こっちのお寿司も!」

「アリアさん、こちらのケーキも!」


 二人はたくさんの食事を運んできてくれるが、既にアリアの胃袋は満腹だった。逃げるように彼女は立ち上がると、縁側に出て、人の熱気から逃れる。


(夜の庭も風情がありますね)


 縁側から広がる内庭の景色に心を奪われる。闇夜に浮かんだ月の灯りが、庭の魅力をさらに引き立てていたからだ。


「今夜は良い月だね」

「シン様!」


 彼は縁側で月を見ながら清酒を楽しんでいた。呪いも完全に解除されたことで顔色も優れている。


「今回は師匠に助けられてばかりだった。本当にありがとう」

「ふふ、救われたのは私の方です。長時間労働から逃げてきた私を客人として迎えてくれました。あの時のこと、今でも感謝しているんですよ♪」


 見知らぬ土地で充実した毎日を過ごせているのは、シンがいてくれたおかげだ。改めて感謝を伝えると、彼は正座してアリアの方に向き直る。


「師匠、頼みがあるんだ」

「聞きましょう」

「これから先、できるなら永遠に私の傍にいて欲しい」

「それは家臣としてですか?」

「いいや、家族としてだ」


 シンは真剣な眼差しを向けてくれる。頬が赤く染まっているが、酔いのせいではないと、月灯りに映しだされた表情から分かる。


「もちろん、これからもずっとシン様と一緒です♪」


 アリアは笑顔でシンの求めに応える。彼女は王宮を追放された時に決意したように、これからも他国でスローライフを満喫しながら幸せに過ごしていくのだった。


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ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

第一幕、完結です!!


これから第二幕をスタートしますので楽しみにしていてください!


またもし面白ければで構わないので、

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