第47話 最終話 マッチョドワーフと魔法
オレは、魔法を授かった洞窟に、足を運ぶ。
ちゃんと正式に、魔法を返すためだ。
「過ぎた力は、また災いを呼ぶ。天に返すのが道理だ」
「ああ。未練はないよ」
エムからのアドバイスに、オレはうなずく。
これまでオレは、何度も魔法によって助けられた。魔法少女という、理想とはぜんぜん違う力だったが。
精神を操られるときもあったが、どうにか使いこなせた。
「ドンギオ、あれだけ魔法使いに憧れていたのに」
「魔法を使うことができただけでも、オレにとってはすごいことなんだ」
脳筋と呼ばれたドワーフだって、その気になれば魔法を操れる。それを証明できただけでも、オレにとっては財産だ。
「でもドンギオなら、また魔法が使える気がします」
「そうかな?」
「きっとです。そのときは、またわたしが前衛についてあげますね」
「助かる」
洞窟の最奥部に。
オレはそこへしゃがみ、天に祈った。
「さあ、魔法を返そう。今までありがとうな」
オレの全身が光り、魔力が洞窟の中へ吸い込まれていく。
「魔力の流れを閉じるよ」
エムが杖で、地面をコンと突いた。
杖に魔力が伝い、洞窟と魔力をつなぎとめる。
「これで、魔法少女の力は天へと昇っていった。魔王の力も、連れて行ってくれたよ」
すべてが終わり、オレはふう、とため息をついた。
「これから、エムはどうするんだ?」
「学校に通うよ。また、今のような災いが起きるかもしれない。そのときのために力をつけて、後世も育成しないと」
魔王との戦いは、竜人族が一人でどうにかできる問題ではない。
そのことを、エムは学んだ。
最初こそ、自分だけで解決しようと意気込んでいたが。
その後、オレたちはエムを魔法学校へ送った。
「ちゃんと勉強するんだぞ」
「まあ、再開した頃にはボクが教鞭をとっているさ」
「よく言うぜ。じゃあな」
エムと別れて、メルティと王都へ。
「ただいま。トマーゾ、ティツィ、カーラ。今戻ったよ」
「ダンナ!」
トマーゾの商店に顔を出す。
「魔王との戦いだって言うから、ずっとお祈りしていたのよ」
「ホント、商売の邪魔しかしないよ。この人は」
ティツィとカーラから、トマーゾがからかわれる。
「また世話になる。質のいい武器やアイテムを作成するから、売ってもらえるか?」
「お安い御用でさあ」
あいさつを終えて、オレたちは自分の家に入った。
「もう何年も使ってない気がする」
「エムさんのお部屋は、どうしましょう?」
こうなることを見越してなのか、エムは部屋に何も残していない。
もう、パーティは組まないかも。そんな気がする。
「あいつはおそらく、オレたちの手の届かないところに行く。そんな気がするなあ」
オレたちを陰ながらサポートはしてくれるだろう。しかし、もう直接的なパートナーにはなりそうにもない。
「では、子ども部屋にしましょう」
「そうだな」
魔王戦の前に、オレたちは結婚を約束した。将来的に、子どもだってできるだろう。
「じゃあ、素材を狩りに行こうか」
「ですね!」
メルティが、ヨロイを着る。
「もう正体を隠す必要もないので、頭も軽装でいいんじゃないか?」
「このクマヘルメット、気に入っちゃって」
「あはは……そうだ、魔法って使えるのか?」
ハンマーに、わずかながら火が付く。
もう魔力を失ったと思っていたが、エンチャントなら使いこなせそうだ。爆発力はなくなっている。だが、それは筋肉でカバーすればいい。
「ここから、魔法使いとして再出発だ」
脳筋でも、魔法を使えるんだ。
(終わり)
魔法を使いたいと願ったマッチョドワーフ少年は、魔法少女の力を得てしまった 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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