第46話 魔法少女、ラストバトル

 はるか昔に起きた最終決戦当時、ヨランダは魔王が負ける様子を見ていたらしい。


 竜人族の手により、魔王は世界各地に封じられた。


 母であるダークドラゴンの力を、ヨランダはわずかながら引き継いでいる。


 何年もかけて世界中を渡り、ヨランダは魔王の封印を解いて回ったという。


「なんという執念」


「実の両親が殺されたからね」


 エムが、複雑な表情で語る。


「ではエム、あれこそヨランダの真の姿ってわけか」


「そのとおり。あれが擬態していない、本当のヨランダだよ」


 だからといって、同情はできない。


「世界を滅ぼそうと言うなら、止めなければいけません。ドンギオ」


 メルティが、巨大ヨランダを抑え込む。


「ぬう、我が覇道を邪魔するものは、死ね!」


 ヨランダが、メルティの腕を振り払った。


 メルティの乗っている巨人が、地面を転がる。


 立ち上がろうとしたが、巨人はもう動けない。パワー切れなのだ。


「けえい!」


 ヨランダの爪が、メルティのいる操縦席に迫った。


「させるか!」


 ドラゴン状態のエムが、ブレスを吐く。


 ヨランダの鋭い爪が、エムのブレスで火花をちらしながら弾け飛んだ。


「おのれ!」


 敵の照準が、エムへと移る。ドラゴンの腹に、ヨランダのパンチがめり込んだ。


 エムの身体がくの字に曲がる。


「がふうう!? まだまだ!」


 至近距離から、エムがブレスを吐いた。


「ちいいい!」


 顔のウロコが剥がれて、ヨランダの人間形態があらわに。額の水晶体に、ヨランダの姿があった。


 オレは、エムの頭から飛び出しハンマーを構える。


「そこだ。ドンギオ! やれ!」


 地面へ落下しながら、エムが人間形態へと戻っていく。


「おおお、ハート・オブ・ファイアーッ!」


 ハート型の火球を込めて、オレはハンマーをヨランダ人間態へ振り下ろした。


「バカな!? この私が、たった三人の亜人に負けるとは……」


 ヨランダの身体が、爆発を起こす。


「おおおおお!」


 オレは、爆風で吹っ飛んでしまった。掴むところがどこにもなく、このままでは、地面へ真っ逆さまだ。


「ドンギオ!」


 何か大きな物体が、オレを包み込む。


 メルティの操る、巨人だ。巨人が、手でオレを落下から防いでくれたのか。


「やったな、ドンギオ」


 エムも、巨人に助けられたらしい。ローブで身体を隠していた。まだ魔力が戻っていないのか、着替えの魔法さえ使えなくなっているようだ。手で直接、服に袖を通している。


「やりましたね、ドンギオ!」


 巨人から降りて、メルティがオレに飛びついてきた。


 その直後、巨人は急激にサビつき始める。接合面が壊れていき、バラバラになった。


「役目を終えたんですね。ありがとうございました、巨人さん」


 崩れ行く巨人に対して、メルティが敬意を払う。


「ん? 魔法が解ける?」


 オレの身体から、魔法少女の力が失われていくのがわかった。


「魔王を封印ではなく、消滅させたからな」


 つまり、オレはもう魔法を使えなくなるわけか。

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