第45話 怪獣大決戦

 銀と黒のブレスが、ぶつかり合う。


「ヨランダ! 魔王を取り込んだところで、お前に勝ち目はないよ!」


「黙れ! 半人前のくせに! ダークドラゴンこそ、世界を制するにふさわしい!」


 エムとヨランダは、互いに譲らない。


「もういいエム。オレが決着をつける!」


「ドンギオ!?」


 ブレスをやめ、エムがオレの方へ顔を向けた。


「竜人族どうしでケリをつけたいのはわかる。だが、これはオレの戦いでもあるんだ」


「おれたちの、です!」


 ヨランダの放ったブレスを、メルティが防ぐ。


「わああああ! これはヤバいです!」


 さすがのメルティも、押され気味だ。


「なにっ!?」


 そこへ、巨大な手がブレスを遮った。


「巨人さん!」


 なんと、動かないと思っていた巨人が、メルティを守ってくれたのである。


「あなたも、戦ってくださるんですね?」


 なにも答えない代わりに、巨人はメルティを自分の中へ取り込んだ。


「おそらく、メルティの気持ちに応えたんだ」


 エムが、巨人の考えを代弁する。


「ドンギオ、わたしはこの巨人さんと一緒に、あなたをサポートします!」


 メルティが声を上げると、オレがメルティに上げた装備一式をタマネギ頭の巨人が装着した。


「仕方ないね。ボクの力をあげよう!」


「いいのか?」


「本来、ボクの力は魔法少女に必要なのだ。覚醒した魔法少女の力を、乗り物であるボクが支えるのだ」


 エムは、魔法少女のお供だったのか。


「さあ乗れ、ドンギオッ!」


「わかった! ヨランダ、最後の戦いだ!」


 オレはエムの頭に乗って、ハンマーを携える。


「でやあああ!」


 ハンマーで、ヨランダへ殴りかかった。


「ちいい!」


 防ごうとしたが、ヨランダの腕はオレのハンマーに弾かれる。


「もういっちょう!」


 更にオレは回転を加えて、横っ面にハンマーを繰り出す。


 だが、黒いドラゴンが代わりに、腹でダメージを引き受ける。


「いつの間に、分離しやがった!?」


「まあいい。利いている!」


 とはいえ、まだ隠し玉がありそうだ。魔王を取り込んでいるからな。


「こしゃくな、半人前の有象無象が何匹いようが、私には勝てん!」


 ヨランダが、さらに変身を遂げた。


 美しい魔法少女然とした姿が、異形の怪物へと変わる。魔王の力を完全に、自分のものとしたのか。茨の冠をかぶった、女の巨人となる。ウロコがレオタード状に、その巨体を覆っていた。背中の羽根は、カラスを思わせる。


「これこそ、ダークドラゴンの真の姿! 闇の衣だ!」


「うるせえ。ハートオブファイヤー!」


 ハンマーで、ハート型の火球を形成した。ヨランダの身体に叩き込む。


「なっ!」


 ヨランダの腕が、ハートを破壊した。


 魔法少女同士の戦いが、怪獣大決戦めいてきたぜ。


「もやはヨランダは、人としての活動をやめてしまった」


「なにが、アイツをそうさせたんだ?」


「アヤツは、魔法少女が倒した、魔王の娘だ」

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