第44話 変身 悪の魔法少女
オレの放つ魔力に、さすがのダークドラゴン首領・ヨランダも圧倒されていた。
「魔法少女。我が野望を阻む不届き者め。今度こそ、貴様に引導を渡してくれる!」
ヨランダが、お供のドラゴンと一体化する。
漆黒のドラゴンが、ヨランダを隠すように周りをグルグルと回りはじめた。
変身をする気なのか?
「望むところだわ。行くわよ!」
「ドンギオ口調!」
「やだぁ!」
メルティに指摘されなかったら、ずっと侵食されたままだったな。
「随分と余裕を。許せぬ!」
ダークドラゴンと同化したヨランダが、変化を完了した。ドラゴンの黒いウロコを散りばめた、ドレスアーマーである。肉体も侵食しており、手などは竜の爪が。
「お前さんも、魔法少女のような出で立ちだな。因縁があるのか?」
「魔法少女はこの世界に、二人もいらぬ! 魔女は、世界に一人いればいい!」
月をイメージした杖を手に、ヨランダが切りかかった。杖から、三日月状の衝撃刃を放つ。
「にぎい!?」
ハート型の火球をとっさに放って、オレは衝撃刃を相殺した。
強くなっているんだろうが、実感がわかない。敵が強すぎる。
「魔王の力を取り込んだ私に、もはや敵なし」
オレたちが魔法少女として覚醒している間に、ヨランダも魔王の力を取り込んでいたらしい。
力の差が、縮まっていないわけだぜ。
「ドンギオ、わたしが盾になります。ドンギオは、ダークドラゴンに攻撃を続けてください」
メルティが、シールドを構えた。
「いいのか? 相手は相当ヤバいぜ」
「そのための重戦士! ここでドンギオを守らずして、いつ守ります?」
「わかった。頼んだぜ」
今のオレでは、力を手に入れたとしても使いこなせていない。
「エンチャント!」
オレは、メルティにエンチャントの魔法を付与する。これで、メルティの武器も強化されるはずだ。
「こしゃくな!」
「えいや!」
ヨランダの鋭い爪を、メルティの盾が弾く。
いける。メルティは戦えていた。
「ムダな足掻きを!」
「とっ、はっ、やっ」
次々と繰り出される攻撃を、メルティは受け流す。
「どうして、あんな細いエルフに我が攻撃が通らぬ!?」
それは多分、オレが防御系の魔法少女だからだろう。オレには、圧倒的な攻撃力なんてない。そっちは、筋肉に振っている。
代わりに、魔法は防御に回していた。死ににくい身体を作るために。また、メルティを守る必要性も出たためだ。
「今だ。ハート・オブ・ファイア……ストームーッ!」
オレは、ハート型の爆炎をヨランダに叩き込む。
爆炎はヨランダを包み込んで、岩山すら溶かす。
「やりましたか?」
「くっ。まだだ」
だが、ヨランダには傷一つ付けられない。新技だってのに!
「ドラゴンのウロコは、この程度の熱なんぞ通さぬ!」
「魔法がダメなら……肉弾戦だ!」
オレは武器にエンチャントを施して、殴りかかった。
ヨランダも、杖を曲刀に変化させて斬りかかる。
「ムダだ。単純な筋力では私を止めることは……なに!?」
杖による剣戟を、オレは弾き飛ばした。
「ぬう!」
だが、ボディへのハンマー一閃は、ドラゴンの剛腕に阻まれる。
「筋力だけは、ダークドラゴンに届くか。これが、魔法少女に選ばれた輩とは。なんたる野蛮!」
ハンマーごと、ヨランダはオレを投げ飛ばす。
「わがブレスの前に、果てるがいい! 魔法少女!」
宙に浮いたままのオレに向けて、ヨランダが杖をかざした。杖を伝ってドラゴンの幻影が現れて、ブレスを吐く状態に。
「塵も残さず消えろ!」
ヨランダが杖から、ブレスを吐く。
「消えるのは、お前だよ!」
オレのはるか上空から、懐かしい声がする。
「エム!」
「待たせたね。魔法少女とドラゴンは表裏一体! ピンチになったら、必ず駆けつけると言ったよ!」
ドラゴンとなったエムが、ヨランダにブレスを放出した。
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