最終章 脳筋マッチョが魔法少女になって、何が悪い?

第41話 すべての始まりの地

 北西にある魔法少女の洞窟には、瞬時にたどり着いた。


 近くの草原に、巨人を着陸させる。


 そこから巨人は膝をついたまま、ピクリとも動かなくなった。


「今までありがとうな」


 巨人に別れを告げて、ダンジョンまで歩く。


 森に入っていき、記憶を頼りに進んだ。


 夜が近づいてきたところで、ようやく目的地にたどり着いた。


「ここが、ドンギオが魔法少女の力を得た場所なのですね?」


 メルティが、洞窟の入り口を眺めている。


「ああ。すっかり寂れてしまっているが」


 洞窟の外壁は、見る影もない。ダンジョンかどうかさえ、見分けがつかなかった。こんなに湿気たダンジョンだっただろうか? もしや、これも偽装なのでは。


「今ならエムがいなくても、オレだけでダンジョンを開けるって言っていたな」


 半信半疑で、オレはダンジョンに手をかざす。


 やはりだ。壁がひとりでに動き、洞窟が真の姿を現した。


 しばらくすると、ファンシーな外観に。まさしく、魔法少女の住んでいそうな場所だ。


「ここの正式名称は、【クリスタル・パレス】だってよ」


 竜人族から渡された資料に、オレは目を通す。


「元々は魔法少女の本拠地で、竜人族をお供にして魔王たちと戦っていたそうですね」


 昔は城だったようだが、今は小屋に近い。魔王との戦争が激化し、場所を維持する魔力がなくなったのだろう。


「入ろう、メルティ」


「はい」


 オレたちは、パレスの内部へと入った。


「どうしてドンギオは、この洞窟に入ったので?」


「領地調査のためだ。この地が、ティアーニ家の親族が納めるにふさわしい場所かどうかを調べに来ていた」


 だが、オレが魔法少女の力を得たときに「この土地は呪われている」とティアーニの一族は判断した。土地を手放し、この場所は荒れ果ててしまったのだ。


「元々、ドワーフが収めようとしていたのですね?」


「そうなんだ。故郷の国王が、オレたち騎士に領地を提供するといわれてな。どんな場所でもいいと言われて、緑の深いココを選んだんだ」


 しかし、ここが呪いのある土地だとわかると、この場所から最も遠くの領土をいただいた。なるべく、ここから離れたかったのである。


 今、オレはこの地に再び降り立った。ダークドラゴンを倒すため。


『おかえりなさいませ。ドンギオ・ティアーニ』


 久々に、モグラが姿を見せた。魔法少女になったオレの、使い魔だ。


『もうすぐ、最奥部へと到着します』


「おう」


『なにがあったも、何を見ても驚かぬよう』


 やたらと、モグラが念を押す。なにがあるってんだ?


 奥へと到着した。


「ああ。ここだここだ。オレが呪われた場所は」


 この場所には、見覚えがある。


 たしか、この台座にオレは肩をぶつけて、肩の部分に紋章が乗り移ったのだ。以来、オレはドワーフとしての筋力をほとんど失って、魔法を使う力を得た。


『その力は本来、あの少女のものでした』


「どの少女だ?」


『あちらに』


 オレによく似た少女が、最奥部の中央に立っている。


 以前も、魔法少女の幻と戦ったことがあった。おそらく、同じような試練だろう。


 それにしても、見れば見るほどオレに顔が近い。


「なんだあれは? オレとそっくりじゃないか」


「かわいいですね」


「別にかわいくなんてないっ」


 だが、ミニスカートを履き、短い髪をピッグテールにまとめていた。顔も女性らしい。


「腹筋も割れてないぞ。美しくない!」


「どういう美的センスなんですかドンギオは!?」


 腹の割れていないドワーフなんて!


「太ももも細すぎる! まるで筋肉がついていないじゃないか!」


「ですから、女の子ならあれくらいですってば!」


 やけに、メルティが噛みついてきた。


「何者だ!」


 オレは武器を構える。


 返答はない。


 代わりに、モグラが答えた。


『あれは、魔法少女になりきったあなたです』


「つまり?」


『ドンギオ・ティアーニ。あなたが負けたら、あの物体があなたに取って代わります』


 それは、知っている。魂が乗り移られるんだったっけ。


 しかしさっきのモグラの言葉は、それとはニュアンスが変わっていた。


「……ってことは?」


『負けたら、あなたは女体化します』

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