第四章 前衛に立ちたいモヤシエルフの故郷

第34話 船でエルフの島へ

 翌日、オレたちは港に。


 船は、契約した商人のトマーゾが用意してくれた。貿易用の商船だ。


 メルティの姉ギュレイが、自身の乗ってきた船で同行してくれる。


「ありがとう、ドンギオ。キミのおかげで、ボクはもっと遠くへ行ける」


「いや。オレは何もしていない」


 国王たちも、もうエムが旅へ出ることに反対しない。


 王国から武装船を用意すると言われたが、断った。いつまた魔物が襲ってきかねないからだ。戦力は、王都に残しておいた方がいい。


「ドンギオ、そんなに物資を持っていくのか?」


 エムが、積み荷に注目した。


 オレは船に、トマーゾから買い込んだアイテムやら食糧やらを積んでいる。


「ああ。オレの予感が正しかったら、必要になるはずだ」


「ありがとうございます、ドンギオ」


 メルティから、礼を言われる。


「いいんだ。オレがやりたいだけだから」


「でも、目的地からは、遠回りになります」


「色々、見て回りたいんだ。お前の故郷が、どんなところなのかも」


 今後、エルフとも交流があるかもしれないからな。どう接すればいいか、今から知っておきたい。


「トマーゾ、出してくれ」


「あいよダンナ!」


 船が出港した。


「ボクが、魔物よけの結界を張っておいた。また、海賊などが出てきたらわかるように、センサー用の使い魔も飛ばしておくよ」


「すまない、エム」


 船内で、オレは仮眠をとることに。


「やはり、疲れていますか?」


「連戦だったからな」


 一晩眠っても、体調は万全とはいかない。


「ボクのネコの力を持ってしても、辛いか?」


 エムが、ゾウほどに大きいネコを召喚した。エムが使役している、回復系召喚獣である。


「ああ。かなりよくはなったんだけどな」


 ネコの腹に、オレは寝かせてもらった。ネコを枕にして寝るもの、先日含めてこれで二度目である。なのに、ロクに回復しない。


 ここまで、自分にスタミナがないと思わなかった。


「魔力不足が、響くな」


「ドンギオは、出力なら誰にも負けません。おそらく、歴史上の魔法少女の中でもトップクラスでしょう。だから、ダークドラゴンも逃げたんだと思います」


 プラス腕力のおかげで、さらに攻撃力は上がっているという。


「じゃあ、この疲労は何が原因だ?」


「まさかとは思いますが、容量不足です」


 魔力の総量が、足りないのか。


「とはいえ、わたしがいれば、エネルギーの問題は解決できます」


「お前が疲労してしまうじゃないか」


「わたしは、出力が低い代わりに、無尽蔵なんですよ。だから、巫女に選ばれたくらいで」


 ああ、ギュレイも同じことを言っていたな。


 だから、連発してもフルパワーを維持できたのか。メルティから、魔力を借りていたわけだ。


「パワーには期待しないでください」


「そうするよ。助かっている」


 ネコに頭をあずけながら、眠りにつく。


「速度をあげますね」


 メルティが船に力を込めた。これで、三日かかる船旅が、まる一日で完了するらしい。


 島が見えてきたところで、懸念している話をする。


「ダークドラゴンは、もう島に着いているのか?」


 あのヨランダという女は、ドラゴンに乗ってメルティの故郷に向かった。メルティがそう話したのである。


「いいえ。邪悪な存在が入り込めない結界を、島は張っていますから」


 メルティは、首を振った。


「なら、当分は安心なわけだな?」


「おそらくは。島の長たちが健在なら」


 長寿といえど、魔力は衰えている。強引な手段に出られると、結界が危ういらしい。


「魔王を封じているんだよな?」


「厳密には、魔王の身体の一部ですね」


 なんでも魔王は、複数のパーツに切断されて封じられているのだとか。


「今のところ、何も起きていません」


 先行して帰っていたギュレイが、船に戻ってきた。


「あのヨランダとかいう女は、そのパーツを集めて回っていたようなんだ。エルフの島には出向いたが、パーツの強奪はできなかったに違いない」


 それだけ、エルフの結界は強いらしい。

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