第31話 武人をフルボッコ

 オレは、ハンマーで獅子王に殴りかかる。


 さすがにただの力任せな攻撃は、大剣で受け流された。


 カウンターの斬撃を、キックで弾き飛ばす。そのまま一回転をして、オレはハンマーの尻をカカトで蹴った。その勢いのまま、獅子王の脳天にハンマーを叩き込もうとする。


 しかし、その攻撃も読まれた。ハンマーを剣で受け止め、オレを突きにかかる。異常なまでに、頑丈な大型剣だ。


「くっ」


 オレは、後ろに下がった。頬を、わずかに切られている。


「見事なり。さすが武器の扱いに慣れたドワーフだけある! しかも、騎士の心得まであるとは!」


 自称武人は伊達ではない。獅子王の戦闘力はかなり高かった。


「テメエも、ダークドラゴンの手先か?」


「我々獅子族などの獣人は、もともとダークドラゴンのしもべよ。ダークドラゴンは、我々虐げられてきた獣人族に力を与えて、ここまで強くしてくれたのだ!」


 剣を振り回しながら、獅子王の武器がさらに巨大化する。


「その代わり、手足となって働くことを余儀なくされているが」


「ドレイじゃねえか」


「それでも、かつての差別からは解放された! 人々は我々を恐れ、畏怖するようになった!」


「ダークドラゴンの影に怯えているだけだ」


「黙れ!」


 獅子王が、オレに剣を振り下ろす。


 オレは、カウンターで打ち上げた。


 威力は、ほぼ互角である。


 しかし……。


「よいのかな? こうしている間にも、マタンゴの大群が街に向かっていったぞ」


 勝ち誇ったように、獅子王が王都側に剣を向けた。


 そういえば、獅子王が連れていた大型のマタンゴがいない。


 巨大マタンゴの大群が、街に向かって押し寄せている。先頭は、獅子王が連れていたマタンゴだ。


「フン。あの程度で勝ったつもりかよ」


 絶望的な光景なれど、オレは意に介さない。


「なにを、負け惜しみを。あれだけの群れが襲いかかれば、いかに王都が堅牢と言えど」


「王都の兵隊なんざ、出る幕はない。オレだけで十分だ」


 オレは、ハンマーに魔法少女の力を全開にした。


「おおおおお! ハート・オブ・ファイアーッ!」


 ハンマーを振り回し、マタンゴの群れに炎のハートを投げつける。


 特大のハートが、マタンゴの群れを押しつぶす。


「フハハハ! ムダだ。王都の守護には間に合わぬ!」


 なおも、獅子王はこの戦に勝ったと思いこんでいた。


 事実、ハート型の炎を浴びても、マタンゴはピンピンとしている。


「へん。もうあのデカいマタンゴなんざ、オレの敵じゃない。ついでに、お前もな」


「バカな! あれだけのマタンゴを蹴散らすな……どおおおおおおぉ!?」


 獅子王が、言葉を失う。


「らぶらぶりいいいいいい!」


 なんと、マタンゴたちが奇声を発しながらすべて破裂したのだ。


 砕け散ったマタンゴの破片が、獅子王の手に落ちてくる。


「食ってみろ」


「なあ? なにを。マタンゴは毒性が強く……うまい!」


 キノコをかじり、獅子王は驚愕した。


「貴様なにをした!? なぜマタンゴの毒性が、抜けている!」


「別に。治癒能力を必殺技に付与しただけだ」


 メルティの作った解毒ポーションの成分を分析して、オレなりに退マタンゴ用の技を開発したに過ぎない。


「今頃王都は、キノコパーティとシャレ込んでいるだろうぜ」


「ぬう、貴様!」


「さて、ここから先はフルボッコタイムだ! 手加減はしねえから覚悟しろよ!」


 オレは、ハンマーを振り回す。


「なにをバカな! 我は知っておるぞ! 貴様は魔法少女の力を使えば、動けなくなると!」


「それはどうかな?」


 切りかかってきた獅子王の剣を、オレはハンマーで弾き飛ばした。


「なあ!?」


「だから、お前はオレの敵じゃないんだよ」


 オレはハンマーで、獅子王の足を砕く。


「があああ!」


 転倒した獅子王が、足をかばう。


「お前は剣を、足の動きでさばいている。その足を破壊した。もう自慢の大剣は振り回せまい」


「くう! なれど我が牙は衰えぬ!」


 なおも獅子王は、大剣を振り落としてきた。


「勢いをなくした剣に、恐怖などしない!」


 獅子王の顔面に、オレはハンマーを打ち込む。


「これは、ギュレイの分だ!」


 コイツは、浄化などしてやらん。徹底的に潰す。


「人の痛みを知らんものに、武人を語る資格はねえ!」


 肉塊になるまで、獅子王にハンマーを打ち込み続けた。




「ドンギオ、無事ですか?」


「ああ。問題ない」


 街に戻ると、焼けたキノコで宴が始まっている。


「でもメルティはいいのか? 家族に正体がバレたぞ」


 メルティが、少しさみしげな顔をした。

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