第28話 マタンゴ戦

 デカいキノコの胴体に顔が出現し、手足が生えてくる。


 マタンゴは、一体だけではない。そこらじゅうから集まってきた。


「こんな数のマタンゴ、知らないよ! いつもは、いても数匹くらいだし。こんなに大きくない!」


 遺跡探索に慣れているティツィでも、イレギュラーな状態らしい。


 たいていのマタンゴは、人間の子どもくらいの背丈だ。毒に気をつければ、初心者でも狩れる。しかしコイツらは、メルティよりでかいかも。


「火炎で一掃したいが、近くにソースの素材もあるんだよな?」


「燃やすとキノコも一緒に枯れるので、なるべく使わないで欲しいかな」


 素材に燃え移ったら、なんのために遺跡に入ったのかわからなくなる。


「焼きキノコ状態で、お持ち帰りというのは?」


 メルティが提案したが、ティツィは首を振った。


「生で持ち帰る必要があるんだよ。日持ちしないから」


「よし。キノコ採りは任せる。ボクたちは敵を排除しよう。ドンギオ!」


「どうした?」


「切るなよ。切ると……」


 エムが注意する前に、メルティがマタンゴの胴体を薙ぎ払う。


「とおー! とおー!」


 二体のマタンゴを倒した、と思われた。しかし、マタンゴは分裂して数を増やしていく。


「ああなる」


「わかった」


 切るのがダメなら、叩き潰すか。


「っそおれ!」


 メルティが増やしてしまったマタンゴの群れを、ハンマーで一気に殴り飛ばした。


「ひええ。切ると分裂します!」


 いつも火炎魔法で倒していたので、メルティはマタンゴの生態を知らなかったようである。


「さっき見た。武器に魔法をエンチャントしろ」


「マタンゴは寒さに強いです。氷ではなく雷でいきましょう」


 メルティが、雷撃の魔法を唱えた。


 ショートソードが、雷を帯びる。


 吹っ飛ばされたマタンゴが、起き上がった。やはり肉体が柔らかすぎて、殴打のダメージは通らないらしい。


「切ってダメなら、突いてみろ」


「はい。それ!」


 マタンゴを、メルティはソードで一突きした。


 大きくビクンと跳ねて、マタンゴは黒い煙を上げる。


「まず一体!」


 オレも、負けてはいられない。ハンマーに魔力を込めて、先端をハート型にした。雷が、ハートの周りで弾ける。


「必殺、【あばれ雷神太鼓】!」


 ハンマーをマタンゴの腹に叩き込み、魔法で撃ち抜く。ドラのバチのように、マタンゴたちの腹へハンマーを食らわせ続けた。


 雷撃が、マタンゴの腹を突き抜ける。


【あばれ太鼓】は、バーバリアンのスキルである。打ち抜くのではなく、楽器を弾くように衝撃を与える。衝撃波によって、内蔵を破壊するのだ。装甲が硬すぎる敵や、スライムのような軟体生命体効果がある。


 オレはその技に、雷撃の魔法をミックスした。武器に魔法をエンチャントをして、雷を打撃技として繰り出したのである。


「いいぞ。【チェイス・ライトニング】!」


 エムの手から、黄色い雷の糸が伸びてきた。オレとメルティの雷魔法を、糸で繋げる。


「ふん!」


 糸の先を、固まっていたマタンゴの集団に放出し、縛り上げる。


 マタンゴが、一気に雷の餌食となった。黒焦げになり、起き上がる気配はない。


「すごいです。エムさん!」


「威力は、キミらの方が上だ。あと、ボスは倒せていない!」


 マタンゴの親玉が、ムクリと起き上がる。コイツだけ、頭部の傘が紫色だ。他の個体と比べて、より毒々しい。起き上がるのも面倒なのか、はあ、と溜息をついている。


「でかい」


 あんなマタンゴ、見たことがない。


「魔輝石で強化されていると見て、間違いないな」


 よく見ると、魔輝石が背中に刺さっている。


「あそこに、ソースの材料が!」


 大量のキノコが、ボスマタンゴの後ろに生えていた。


「あのキノコを守っているのでしょうか」


「違うな。おそらくあの壁の先に、魔法少女の力が眠っている」


 だったら、倒さないとな。


「メルティは、ティツィを守っていてくれ。ここは、オレがやる!」

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