第15話 土属性のドラゴン=モグラ?

 いつも潜りに行っている遺跡系ダンジョンに、エムも連れて行った。


 オレが持っている、魔法少女の力を見てもらうために。


 拠点でもよかったが、誰が見ているかわからない。魔法を使って倒す敵もいないため、この遺跡に来たわけだ。


 エムも、メルティと同じように【認識阻害】の秘術を施している。まあ、竜人族はめったに表舞台には出ないから、エムを見ても誰もドラゴンと思わないのだが。


「ここが建てられたのは、三〇〇〇年くらい前だね。これだけ古いのは、掘り出し物だよ。魔法少女のヒントがあるかも」


 壁をなでながら、エムは興味深そうに語る。


「普通の遺跡に見えるんですが?」


「たしかに、小さいほこらだよ。ここに眠っている財宝などに、価値はない。でも、ドラゴンを祀っていたのは確かだ。本当に小型の個体だったろうけど」


 時代とともに、その存在も忘れられていったと。


「で、魔法少女についてなんだが」


「魔法少女って言っても、ドラゴンの力を少し分けてもらっているんだ。キミにも備わっているじゃんか」


「ドラゴン?」


「ドンギオ、キミの肩に乗っている小動物は、飾りかい?」


 エムが、オレの肩を指差す。


『てっきり忘れられているのかと思いました』


 モグラ型の使い魔が、オレに声をかけてきた。


「そうだった。お前がいたんだな」


 オレには、可視化できるシステムボイスがいたんだっけ。


 だからエムは、オレを魔法少女と看破したのか。使い魔が、見えていたんだな。


「何を言っているんだい? 土竜モグラは文字通り、土属性のドラゴンと言われているんだよ? ドワーフであるキミに、ピッタリじゃないか」


 このほこらも、土属性ドラゴンを祀っていたのではとのこと。


「キミが魔法少女の力を呪いと感じているのは、ドラゴン族ではないからだ」


「エムに力を移すこととか、できないのか?」


「できないよ。ドラゴンではなくても、キミは選ばれたからね」


 オレが、ドラゴンに選ばれた? 


「信じられないな。どうしてオレを?」


「それは、ここの竜と対話してみたらわかるかも……お、あったぞ」


 突き出た壁の仕掛けを、エムがグッと押す。


 ズズズ、と壁が開いていった。中には道が、さらに奥へと続いているようだ。


「すごいですね。どんな冒険者も、見つけ出せなかったのに」


「当然だよ。ドラゴン族にしか反応しない仕掛けだからね。ささ、中へどうぞ」


 暗がりを照明魔法で照らしながら、エムを先頭に奥へと歩いていく。


「ここは、祭壇?」


 ゴールは、広い空間だった。中央に突き出たオブジェクトがあって、あちこちに燭台がある。


「なるほど。やはり、いい場所じゃないか。ドンギオ、ここは【試練の間】だよ」


 エムとメルティが、燭台に火をともしていく。


「どういう場所なんだ?」


「魔法少女の力を、パワーアップする場所だよ」


 試練を受けて、魔法少女は能力を上げることができるらしい。


「なるほど。では攻撃力などのステータスアップには、試練を通過する必要があるのですね?」


「そのとおりだよ。メルティ。さすがエルフだね。頭の回転が速い」


 どおりで、ステータス振りなどで魔法の攻撃力が上がらないわけだ。別の方法があったとは。


 エムがいなかったら、詰んでいたな。


「ありがとう、エム。キミのおかげだ」


「違うよ。システムボイス、キミの使い魔のお導きさ」


 モグラ使い魔は、自然な形でオレとエムを引き合わせ、この遺跡に案内したわけか。


「お前自体に、記憶があったなら、そう教えてくれてもよかったのでは?」


『ワタシはあなたに、力を与えるのみ。試練の場所には、ご自身でたどり着く必要があるのです』


 魔法少女の素質を、確かめるためでもあるという。


『では魔法少女ドンギオ、力を授ける儀式を行います』


「待った。どうしてオレだったんだ? 魔法『少女』なのに」


 オレは男なのだが。


「性別なんて、関係ないよ」


「たしかに。昔は、男性の魔法使いも、『魔女』と呼ばれていたんでしたよね?」


「ああ。魔法少女という呼び名も、その名残だと思えばいいのさ」


 なるほど……納得できねえ。

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