第14話 ダークドラゴン族
王都からウーラダンに来た竜人族の目的は、エムを学校に通わせるだけじゃない。モンスターを凶暴化させる、魔輝石を調べるためでもあった。
「こんな芸当ができるのは、ボクも一つしか知らない。ダークドラゴン族だ」
エムは、断言する。
「ダークドラゴン族だって!?」
「ああ。ドンギオのいた、ティアーニの家系でも知っているはずだよ。世界を破滅寸前まで追い込んだ、魔王よりヤバイ存在のことを」
「おとぎ話の世界だと思っていた」
まさか、伝記クラスの怪物が実在していたとは。
「はるか昔、魔王という存在がいたが、それを影で操っていたのが、ダークドラゴンだ。彼らは竜と人間との交配を嫌って、人類を死滅させるために動いていた」
竜人でありながら、ダークドラゴン族は人類を見下しているという。
そのせいで、魔王どころか同じ竜族とも対立し、滅ぼされたのだ。
「しかも、彼らを退治した存在というのが」
「……魔法少女」
メルティが、話に入ってきた。
魔法少女はダークドラゴン族を浄化できる、唯一の存在らしい。
オレに、そんな力が宿っていたのか。
だからオレの魔力は、魔輝石を持つドラゴンに効果的なのだろう。力が力なだけに、扱いに苦労しそうだが。
「ボクは魔法少女の研究をして、あわよくばその力を手に入れようとしていたわけだ」
「ウーラダンの魔法学校に通わせようと思ったのも、魔法少女に関する文献があるか期待してのことだった。しかし、コヤツの体たらくのせいで」
「学者にはなりたいさ。でも、学校というシステムには疑問を感じている。あんな狭い空間に、大勢の人間を閉じ込めなくてもさぁ」
情報を集めることさえも、難しいだろうとのこと。
「だが、ダークドラゴンらしき存在の確認はできた」
「例のケンタウロスだな?」
「左様。あのケンタウロスは、ダークドラゴンから力をもらっている」
パレードのときに、また現れるはずだという。
「身を隠さなくてもいいのか?」
「民を心配させたくない。かえって、パニックになる。それに、守ってくれるのだろう?」
「もちろん」
でも、敵がどこから現れるのか確かめられないなら、動きようがない。
「心配はないよ。ボクなら、あいつを見つけられるさ。竜人族同士は、探知されやすいからね。魔法少女も、隣にいるみたいだし」
「わかるのか?」
「ああ。キミからバンバン伝わってくるよ。ドンギオ・ティアーニ」
エムは、オレに視線を合わせた。
「キミの中に眠る魔法少女の力は、本来ボクたちのウチ誰かが受け継ぐはずだったんだろう。しかし、ダークドラゴン族に先を越されてしまった」
「後継者を、始末した?」
「おそらくはね」と、エムは付け加える。
とはいえ、ダークドラゴンでさえ魔法少女の力までは殺しきれなかった。地下深くに眠っていた力を、オレが受け継いでしまったと。
「まさかドワーフの、それも男の子の身体に宿るなんて思ってなかったんだろう。ノーマークだった。しかし、魔法少女の力は微量ながら生きている」
「オレが狙われる可能性が高いと?」
「狙われはするだろうね。相手も、攻めあぐねているみたいだけど」
どう戦っていいものか判断しかねているのでは、と、彼らは言う。
「キミたちの力は、想像を絶する。キミたちが戦ってきた敵ってのは、本来なら、一個代たちが立ち向かってやっと倒せるくらいなんだ。もしくは竜人族が大勢でやっつけられるかなってくらいの」
そこまで強い相手だったのか。
「なのに、ほぼ単騎で倒しちゃうんだもん。強すぎ」
相手にとっても、予想外だったろうとのことだ。
「だから、竜人族と接触したことも、相手にとってはピンチだと思うよ」
だといいのだが。
「パレードまでどうする? あと三日くらいだけど?」
「やれることをやる。当面はレベル上げとスキルの見直しだ」
「ボクも連れてってよ」とエムはにじり寄ってきた。
だが、国王からダメを食らう。
「お主は、魔法少女の研究をしろ。その方が、後々彼らに有益になる」
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